そして、それも退屈な日々

なんでもない日、
どこでもない場所で、
昨日と同じ今日、今日と同じ明日

エストックとスティレット

2016年10月11日 08時03分22秒 | 日々の果実の搾り滓
「これは・・・」

その光景は、私から言葉を奪った。


広い。

岩盤が剥き出しの、円錐状の空間だった。

床と壁に縦横無尽に溝が刻まれ、奇怪な文様を浮かび上がらせている。

溝には赤い粘液が満たされ、ぼんやりと燐光を放ちながらゆっくりと流れていた。

中央の台座には銀色の鳥かごのようなものが置かれ、そのうえには。



そこに、それがいた。



なんと形容すれば、それを伝えることが出来るだろうか。

ちょっとした城砦ほどもある、なんの支えもなく空中に浮かぶ、脈動する虹色の球の集合体。

手も足もないそれは、紫色の粘液をしたたらせながら一時も止まることなく蠢き続けている。

外見だけでは、生き物とはとても思えない。

なにか不可思議なカラクリか、巨大なシャボン玉のようにも見えるが、それが発している気配は気味が悪いほどに肉感的だった。

ぬらぬらと粘液を纏い、音もなく沼の泡のようにおぞましくうねるそれを見ているだけで、強烈な吐き気とめまいが襲ってくる。


平衡感覚を失い、私は膝をついてしまった。

足に伝わる赤い粘液の感触。

それは紛れもなく、血の感触だった。
ジャンル:
小説
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