極楽のぶ

~酔生夢想~
中途失明を越えて

極楽のぶと『詩仙堂』(4)

2017年05月13日 | アート
 幕府重臣石川家に生まれ、文武に秀で、家康のおぼえも愛(め)でたく! 黙っていても将来は約束されていた。32歳にもなった丈山(当時、重之しげゆき)が、どうしてあえて禁を犯す必要があったのか?

 既に「若気の至り」ではない、この時代30代は立派な中年である。
 
 禁を破った現場が、加賀前田家の陣、司令官が本多正信の次男、本多政重(前田家筆頭家老)、ということまでは前回触れた。このとき政重と丈山は1年違いのほぼ同年。 丈山にとって親類筋、馬鹿なことは止めておけ、と諌めるべきだったろう。が、していない。
 と、いうことは、見逃せ、という指示があった、でいいだろう。 まさか、加賀藩が丈山をハメたところで、何の得もない。

 歴史に興味ないみなさん、ここで離れて行ってはいけません、丈山がここで禁を犯さないと、京都にあの美しい「詩仙堂」は生まれないのです! だから、ここは注目してついてきていただかないといけません。

 妙なのは、丈山のその後、禁を犯してまでの、勇ましい出奔ならまだしも、中年男が病弱の母を背負っての介護行となった。これでは、無名時代の明智光秀に似てしまう(光秀、病弱の妻を背負っての仕官探し~真偽は不明だが・・)

 しかも、その丈山の母は、本多正信の姪なのだ。どうみても恰好悪いではないか、いや正信の姪という前に、天下の石川家の奥方なんである。どうして息子の犯に連座せねばならぬ? ありえない。ここは、かあちゃんが、出張ったに違いない、黙っておれば出世するはずの我が子を、如何(いかん)とす?!! 叔父正信への怒りが、丈山ミッションの妨害へと奮い立たせたのではないか? わざわざ息子の足手まといになる作戦である。 
 確かに、大胆な憶測だが・・ 

 さて、時間軸が大事である。丈山の出奔が大阪夏の陣のとき(1615)、翌年、庇護者家康(72歳)、大叔父正信(77歳)ともに、次々と世を去ってしまうことだ。が、当時日本の平均寿命から言って、見事に長寿だったふたり、死は驚くに値しない。 つまり、丈山のミッションは、家康・正信が逝去してからこそ必要だったのではないかと、思うのだ。 正信も、まさか姪にこれほどの根性があろうとは、と、極楽浄土で笑っていただろう。

 実は、「石川丈山の幕府スパイ説(京都探索方)」は、京都観光タクシーの運転手諸氏の間では通説らしい。筆者も、嬉しそうに秘密を語る運転手さんに出会ったもんです。

 だが、実際、丈山が、出奔後、京都に根づくまで、なんと26年もの年月が過ぎてしまう。
 その半分以上は、和歌山や広島(安芸)の外様小藩に仕官し、禄を食(は)む。 先方から「請われての出仕」で、およそ「諜報活動」とはほど遠い。
 また、夏の陣で逃亡した豊臣型名将「明石全登」らの全国探査を担った風もない。

 母親が逝き、丈山はようやく京都に根付くのだが、洛内に見せた姿は、すっかり文人のそれであった。
 詩文学、書家、儒学者、茶人(日本の煎茶の祖らしい!!)、そして造園デザイナー、武人の姿はどこにもなかった。

 さらに、驚くべきことに、幕府罪科人(とがびと)の丈山を、放逐後ずっとサポートしてきたのが、幕府同級生の御用学者、林羅山だった。 当初より親友だったとは言え、あまりにも幕府中枢の高官。
 ちなみに、林羅山とは、あの「方広寺梵鐘事件」~『国家安康 君臣豊楽』(知ってますね!はぁい)を見つけ出し、冬の陣に至る「言いがかり」を創出した人物だ。

 さて、この林羅山の支援もあり、ふたりは京都東山、『詩仙堂』を創建する。1641年、出奔が1615年だったから、26年が経ったわけである。

 が、この不思議な26年がぴったり当てはまる史実の事象が、探してみると、ちゃんとあった。ここからいよいよ極楽探偵の登場である。

 実は1614年、東本願寺の門跡(もんぜき:浄土真宗では宗主をこう呼ぶ)が、12世(代のこと) 教如(きょうにょ)から13世 宣如(12歳)(せんにょ)に代わった。代替わりである。 そして、詩仙堂ができた1641年、39歳になった宣如は引退を決意、隠居先の庵の庭の設計を、できたばかりの詩仙堂の主、石川丈山に頼むのである。
 このことは、1615~1641の26年間が、少なくとも、東本願寺の門跡が、在責中、この石川丈山という浪人(罪科人)と知己を得、交流し、その人物を信頼し、造園デザインのセンスさえ感じとって、自分の居処の庭設計を頼むまでの年月であったことを、意味するではないか。
 これは、本願寺門跡が、引退の意思をいち早く、丈山に知らせたことも意味し、林羅山もそれを知る、わけである。これは、余談ではない、きわめてセンシティブな内容なのだ。

 「詩仙堂」、恐るべし・・・みなさん、ついてきて・・ませんよね(笑)
ともかく、現代人は、考えるべきことですから、最終回まで、きっとついてきてください。嫌な人は最終回だけでも、覗いてね!!

 次回、丈山の人生の謎を解き明かす!
彼は、誰の意志で、何のために、何を願って命を賭けたのか? 母親は何を止めようとしたのか?
 ちょっと興味、感じられ始めましたか?
 
つ・づ・く ついてきてよ!!みなさん、がんばって!
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