コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~

制圧者とインカの末裔たちとの戦いの物語

コンドルの系譜 第九話(1118) 碧海の彼方

2016-10-08 22:36:48 | 碧海の彼方

同じ頃、ビルカパサもまた、小競り合いの仲裁や、何か異変が無いかを視察するために、砦内を巡回していた。


彼が、トゥパク・アマルが執務室としている居室の前を通りかかると、扉の隙間から室内の光が夜明け前の薄暗い回廊に零れている。


(陛下、まだ起きておられるのですか?)


気になって遠慮がちにノックをすると、「どうぞ」と、中からトゥパク・アマルの声がする。


「トゥパク・アマル様、失礼いたします」


ビルカパサが重厚な扉を押して、室内に顔を覗かせた。


彼の視線の先で、トゥパク・アマルは中央の書斎机に座し、机上のランプで手元を照らしながら、何かの書面にサラサラとペンを走らせている。


「陛下、少しはお休みにならなければ、お体に障ります。


昨日の激戦のお疲れはもとより、アレッチェに暴行を受けた傷口も火傷痕も未だ生々しく残っておられるというのに」


心配そうなビルカパサの言葉に、トゥパク・アマルも机上から顔を上げ、こちらを見た。


「ビルカパサ、このような時間まで見回ってくれていたのか。


有難いことだが、そなたこそ、いかに強靭なれど、休まねば体がもたぬぞ。


わたしのことは、案ずるには及ばぬ。


先刻、手足も身体も傷の手当てを受け、ほら、この通りだ」


トゥパク・アマルが軽く微笑し、袖口をまくって見せる。


すると、その逞しく引き締まった褐色の腕に、幾重にも丁寧に包帯が巻かれていた。


それを見てビルカパサが安堵の吐息をついていると、トゥパク・アマルが、「中へ」と、優美な手つきで招き入れる。

【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆

≪トゥパク・アマル≫(インカ軍)
反乱の中心に立つ、インカ軍(反乱軍)の総指揮官。
インカ皇帝末裔であり、植民地下にありながらも、民からは「インカ(皇帝)」と称され、敬愛される。
インカ帝国征服直後に、スペイン王により処刑されたインカ皇帝フェリペ・トゥパク・アマル(トゥパク・アマル1世)から数えて6代目にあたる、インカ皇帝の直系の子孫。
「トゥパク・アマル」とは、インカのケチュア語で「(高貴なる)炎の竜」の意味。
清廉高潔な人物。漆黒長髪の精悍な美男子(史実どおり)。

≪ビルカパサ≫(インカ軍)
インカ族の貴族であり、トゥパク・アマル腹心の家臣。
トゥパク・アマルの最も傍近い護衛官として常にトゥパク・アマルと共にあり、幾度と無く命を張って主を守ってきた。
ロレンソの恋人マルセラの叔父でもある。

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