風塵社的業務日誌

日本で下から258番目に大きな出版社の日常業務案内(風塵社非公認ブログ)

ブタ箱物語(6)

2017年01月30日 | ブタ箱物語
運動場を囲むパネルの隙間から、凝固したまま外を見つめている人がいる。おそらくは軽い拘禁症状に苦しんでいるのだろう。長い日数を狭い空間に閉じ込められて視界をさえぎられていると、人間は精神的にまいってしまうそうだ。小生はそれをいまだ経験したわけではないけれど、精神に変調をきたして感情抑制が効かなくなって怒りやすくなったり、涙もろくなったりして、鬱状態に陥ってしまう。ジッと外を見ている彼も、精神的にはかなりまいっているのだろう。精神的な悩みは人それぞれで耐性もちがうだろうから、弱者に基本設定を合わせて勾留施設の運動場くらいはオープンにしておくべきだろう。
ただの推測だけれど、少し前まで運動場なんてオープンだったにちがいない(タバコが吸えたのだから)。そこに近隣住民から「胡散臭げな連中が、高いところから危い目つきで我が家を覗きこんでいる」なんてな苦情があり、それでクローズドな設計に変更したのではないだろうか。もしくは、高いところから逃走経路を捜されると困る、とでも警察の側で判断でもしたのだろうか。しかし、収容者の心身の健康に責任を持つべき立場は、当然ながら拘禁ノイローゼの予防にも配慮すべきなのだ。
小生も、パネルの隙間から外を眺めてみた。視界がさえぎられているからよく見えないのだけれど、M署の裏の細い路地が見える。時おり、そこを通学か通勤の自転車が通っていく。そんなどうでもいい光景ですら、心の支えになる収容者がいるのだ。そういえば、検察庁や裁判所に向かう護送車のなかから眺める街の風景がなんとも心に沁みたと、だれかが(複数が)書いていたようにも記憶している。どんな犯罪者であろうとも、勾留するという行為そのものがかなり非人道的なものであることを法務省には認識してもらいたい。
司法行政に意見を述べたいと思って書き始めたわけではないけれど、ついつい不満が出てきてしまう。ついでなので、取り調べや勾留中の警察官の態度についても述べておこう。全般に礼儀をわきまえた態度であった。取り調べ中に暴行を受けたとか怒鳴られたという話もよく聞くわけであるけれど、そういうことは小生に対してはなかった。取り調べ担当刑事にしてみれば、ただの酔っ払い相手なんだから事務的に処理しておこうということだけかもしれないが、こちとら、少しはそういうものを期待していたところもなくはない(なにせ性根が悪いので)。相手が高圧的な態度を取ってきたら、こっちも怒鳴り返してやろうとひそかに期待していたわけであるが、その期待はすっかり裏切られてしまった。また、留置所内の警察官も、形式的に大声で指示を出すとき以外はおおむねていねいな言葉遣いであり、おかげさまで小生が声を荒げることは一回しか生じなかった。
そして、ここまでブタ箱に入った経験を縷々綴ってきているわけであるけれど、この駄文を辛抱強く読まれた方のなかには、「なんだこいつは。逮捕されたくせに、かっこつけて余裕かましていやがる」と思われた人もいることだろう。正直なところ、逮捕されても精神的にさほど追い詰められたわけでもないのは事実である。
そもそもが酔っ払ってブラックアウトを起こしていた。そこで民家の壁に貼ってあった選挙ポスターを破ったということで逮捕されたのであるが、しかし、その被疑事実(被疑行為?)なるものを覚えていないのだ。M署に担ぎ込まれて、その被疑事実なるものについて取り調べを受けても、覚えていないものは覚えていないし、また、黙秘路線で押し通すと早々に覚悟を決めちゃったものだから、取り調べにまともに受け答えするつもりはなかった。
一方で、その被疑事実なるものがまったくのデッチ上げで、冤罪で逮捕されたとも思えない。つまりは、「おまえはこういうことをやったんだろ」と言われれば、「したかもしれないなあ」という程度の認識である。もしもこれが濡れ衣だという認識が小生の内部にあれば、また別の対応を考えたことだろう。さらに、刑事の話しているとおりであっても、「どうせ微罪だし、黙秘していてもすぐ釈放されるだろう」という期待もあった。その「すぐ」というのが何時間なのか、何日なのかというのは曖昧ではあるけれど、「こんなことが重大な犯罪であるわけがないだろう」という小生内部のコモンセンスによる判断があったわけである。
そこで、ここは記憶が曖昧で前後関係が定かではないけれど、小生の犯罪行為なるものは器物損壊にあたると、取り調べ中だったかに担当刑事からレクチャーを受けたんだっけな。ところがその日は参院選の公示当日であった。そのため、選挙管理委員会の印の記されている政党ポスターを破ったということで、公職選挙法違反にも該当するということである。したがって、酔っ払うのがもう一日早ければ公選法には引っかからなかったわけで、アリャリャリャと内心で思ってしまったのであった。
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