風塵社的業務日誌

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塀のなかの敬老会

2016年10月17日 | 出版
例によって、極北の地にいる友人からの手紙を勝手に転載(腹巻)。
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 いきなりの秋本番、お元気ですか。
 塀の中では、春や秋を実感する日が短くて、夏と冬がやたら長く感じられるのですが、ついにこの国の「刑務所化」は、季節にまで及んでしまったのかという感じですね。急激な変化に体調をこわさないでと願っています。
 このところのうれしいニュースは、日弁連の「死刑制度廃止」提出決定ですね。ようやくですが、「よっし!」です。人が人らしく生き合える社会へ、しっかりと歩を進めましょう。
 私は今年66歳ですが、先頃、当所で行われた「敬老会」に初めて参加しました。たまげました。ここは刑務所、国の縮図です。
 毎年行われていたようですが、内容は老人体操、インストラクターによる「イスに座ってする運動」15分。8月中旬放映の『笑点』という番組(「24時間テレビ」で、マラソンに参加する噺家の話題)のVTR30分。以上で、誰のあいさつも講演もなし。待ち時間を入れて全90分ですべて、というものでした。参加者には「感想文」の課題が出ました。以下は私の「感想文」です。
 (1)「楽しかった」「楽しくなかった」のどちらかに丸を付ける(後者です。周りの人たちも途中から首をかしげ合っていました)。
 (2)得たものは? 「なかった。会を開いた意図や意義がまったく理解できなかった。『敬老』なのか『娯楽』なのか『教育』なのか? もう少し、老齢になったこと、生きてきた人生や、これからの人生を考えたり、今あることに喜びや感謝を持てたり、今後の人生を励まされたりするような内容があればよかったと思う。例えば、そのようなテーマの映画や講演にした方が内容があるのでは」
 (3)「高齢者も自分を育て続け、よりよく生きたいという思いは持ち続けている。誤りを犯した受刑者もそれは同じで、だからこそ人一倍苦労し、迷い、悩みながらここまで生きてきた。がんばって今があることは変わりないのだから、せっかく『敬老会』と称して催しをやるのであれば、ひと言今あることを敬い、喜び合い、これからの人生を大切によりよくしようと励ます内容があってもよかったと思う。残念だ」
 というような「感想文」を提出しました。「楽しかったか?」と設問されているのだから、受刑者としては「YES」と答えるべきなのでしょうが、仲間たちは「こっちだよね」と「NO」を指差しあっていました(こんな時、なかなか本音は書かないのですねえ)。
 会は、まさに刑務所当局・幹部職員の受刑者観・高齢者観を如実に示してくれました。
 参加者は120名、(65歳以上)自由参加なので多分辞退者と昼夜独居者が20~30人はいると思われるので、当所では600人強の受刑者の実に5人に1人以上が「高齢者」です。
 高齢や病気の死刑囚への収容継続や執行の問題もそうですが、改めてこの国の行刑制度とこれほどの「高齢者」を「犯罪者」にさせて、塀の中に追いやるこの国の社会のゆがみを考えさせられます。
 車イスの人、押し車を押して一歩一歩前進する人、明らかに呆けていて自分が何をしているのかも人の言うこともわかっていないような人も何人もいます。こんな体で、いったいどんな「悪事」がやれたのだろうかと思うような人が多数います。彼女たちに「懲役」という刑罰を与えて塀の中に閉じ込めて……、いったい誰のため、何のためになるのだろうか。身近な人たちには追い払われて……、いるところも生活の糧もなくなって……、そうして塀に隔てられて、ますます社会に居所を失って、彼女たちの多くがまた塀の中を求めて戻ってきます。そうした人の中には「衣食住だけじゃあない。仕事まであるから」と言う人もいます。どうしたらいいのだろう、と私は考えさせられます。私も当所の5人に1人の「高齢者」の1人ですから。
 子供たちの貧困、学業を続けたくても続けられない青年、働きたくても働き場のない労働者層……、週に10種類近い中国製加工食品(レトルトやパック入り漬物)を食べ、中国製衣類と雑貨で身をかためて、私たちはこんなに貧しい国の住人だったのだと思い知らされる日々です。何か「人が生きる社会」であることの基本の「基」がストンと抜けているような気がします。
 半年後には「自分の足で」どう生きてゆけばいいのでしょう。限りなく未知で不安な世界に飛び込むことになりそうで……、びびりますよね――。「準備」は……こんなもんです、今。秋、「充実の季節」なはずですから、根性を入れ、ベルトを締めなおして、着々と。
 冬に向かいます。生きづらさますますですが、お元気でいてください。共に! 再見!
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