Good Night Rambler

気が向いた時にディスクレビューを投稿しているブログです。

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My Bloody Valentine 『Isn't Anything』

2013年01月26日 20時32分54秒 | ディスクレビュー K~O
マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン 『イズント・エニシング』


ノイジーなギターから紡ぎ出される音のカーテン。そしてその中をユラユラと浮遊する、終始テンション抑え気味のボーカルと、不穏な空気を醸し出す女性コーラス。妙に不安定で、奇妙で、不安感を掻き立てられるヘンテコリンなアルバムです。


これに似た作品としてよく引き合いに出されるのが、ジーザス&メリー・チェインの『サイコキャンディー』。しかしあちらがとんでもないノイズと甘いボーカルとの対比で成り立っているのに対し、この『イズント・エニシング』のノイズは多少ライトな印象。その代わり、こちらの方がドラムの存在感が半端じゃありません。


特にスネアドラムの手数の多さは曲が進むに従って異様に多くなっていき、特に7曲目からほぼ休みなし。全盛期の藤川球児か浅尾かと思わんばかりの連投状態。ラスト1曲前の「ナッシング・マッチ・トゥ・ルーズ」に至っては、ほとんどヤケクソ気味な叩きっぷり。


ところが、ラストの「アイ・キャン・シー・イット(バット・アイ・キャント・フィール・イット)」 だけ妙に安心感を誘うスロ-ナンバー。まるで、新喜劇で池乃めだかが「今日はこれくらいで勘弁しといたるわ!」と言っているような感すらあります。


こんな書きっぷりでいてなんですが、超名盤です。


[1988年発表作品]

My Bloody Valentine - Soft As Snow - London 89

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Radiohead 『Kid A』

2012年05月27日 18時04分07秒 | ディスクレビュー P~T
レディオヘッド 『キッドA』


今になってみれば、この『キッドA』なる味気ないタイトルのアルバムが、2000年最初のディケイドにおける最初の問題作にして、最大の問題作かつ大傑作だったことは間違いないと断言できます。ただ、発売日に初めてその音を聴いた時は、正直言って自分の中には落胆の2文字しかありませんでした。


発売日当日、午前中のバイトを終えるやいなや、自転車に跨り速攻で駅の向こうの商店街のCDショップへと駆け込んだこと。同日発売のミスチルの新作と共に会計を済ませた直後、店の目の前でパッケージから取り出したCDをポータブルプレーヤーにセッティングしたこと。プレイボタンを押し、再び自転車に跨って『キッドA』を聴きながら帰路に着いたこと…。10年以上経った今でも昨日のことのようにまざまざと思い出せます。そして、なんていうか、肝心の音自体に好印象を持てなかったことも…。


「アレ、コレ、一体、どこら辺で盛り上がってくんの?」


実際『キッドA』については、発売前から「前作『OKコンピューター』から大きく路線変更した」とか「脱ロック的」というような情報を雑誌などで読んでいたので、その旨は充分理解したつもりではいました。がしかし、実際にそのサウンドを耳にしたことで、自分がやはり、無意識のうちに、レディオヘッドにいわゆる従来の「ロック的なもの」を求めてしまっていたことに気がついてしまったのです。


だいたい、最初の2曲からしてお経みたいにほとんど抑え気味なのが気に食わない。3曲目に入りドラムとベースがそこそこ活躍し始めてテンションが徐々に上がってくるも、結局最後までわかりやすいサビもなく4曲目に突入。結局そのアコギ基調のナンバーが鳴り響いてから家に辿り着くまでの約30分間で既にCDは終わっていたものの、5曲目以降の印象はまったく頭に入っておらず、「ま、いいか。ミスチルでも聴いて気を取り直そう」となったのでした。


…ところが。ミスチルもあらかた聴き込んだ頃、再びパッケージから取り出して最初から聴き直してみて驚愕しました。あれほど物足りないと思っていたのに、なぜかスルスルと耳に馴染んでいく。聴けば聴くほど、その音にどんどん引き込まれていく始末。


キーボードの不穏な響きと、その周りにウニョウニョとした歌声を細切れに配置した「エヴリシング・イン・イッツ・ライト・プレイス」は、その曲名の通り、「Everything In Its Right Place(すべてが正しいところにある)」としか思えない絶妙なバランス感覚。続く「キッドA」は、印象的な鐘の音や、変則的な鼓動のようなパーカッション、そして不規則なSEの中を、ボコーダーを使用した無機質なボーカルが通り抜けていき、ラストはシンセサイザーが静かに盛り上げた後に赤ん坊の泣き声のようなSEで見事なエンディング。「ザ・ナショナル・アンセム」も終始ほぼ同一のパターンを刻むベースに対し、後半に向けてヒステリックなまでに鳴り響いていくトランペットとの対比が面白い。思えば『キッドA』無機質で記号めいたアルバム・タイトルもクールだし、もう、完全なる手のひら返し。


こうして、第一印象では、全体的にサビのような分かりやすい盛り上がりに欠けると思っていたものの、結果的に2000年後半に最も繰り返し聴き込んだアルバムにまでなってしまったのでした。そもそも、ミニマル・ミュージックのように反復の中で徐々に展開していくような手法は、野外でポータブルプレーヤーを用いて聴くような環境では、なかなか伝わり辛いものだったのかもしれません。


このように『キッドA』は、即効性・衝撃度という面では前作『OKコンピューター』に遠く及ばなかったのですが、聴き込めば聴き込むほどのめり込んでいってしまうという中毒性の面に関しては前作を遥かに凌駕していました。あれから10年以上経った今でも、ラストの「モーション・ピクチャー・サウンドトラック」を聴いていると、あまりに奇麗で身震いしてしまうほど。


しかし、作品全体に漂うこの捻くれ具合はどうでしょう。特に6曲目の「オプティミスティック」などは、そのタイトルとは裏腹にほとんどペシミスティックにすら感じられ、それが『キッドA』全体に貫かれた姿勢を顕著に表しているようにも思えてなりません。ロックから電子音楽、ミニマルミュージックへと大胆にアプローチをした事にしろ、相当捻くれてるのに、本当に素晴らしい。こんな捻くれた作品ばかり好きな僕も、やっぱり捻くれているんでしょうか…。


[2000年発表作品]


optimistic : radiohead
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サザンオールスターズ 『KAMAKURA』

2011年09月04日 22時51分53秒 | ディスクレビュー さ~そ
サザン初の2枚組アルバム。2枚組という気合の入りっぷりに負けていない傑作ですが、同時に不気味さと怪しさが満載の怪作でもあります。なにせ「死体置場でロマンスを」といい「古戦場で濡れん坊は昭和のHero」といい、恐ろしく独自色の強いタイトルが目白押し。曇り空みたいなグレーのジャケ写もちょっとばかし薄気味悪さを助長させているせいで、もはや『KAMAKURA』というアルバムタイトルすら不気味に感じられる始末。


このようにビジュアル的な方面や字面だけでも怪しさプンプンですが、内容自体もそのイメージに違わぬ出来栄え。「Computer Children」「顔」「怪物君の空」など、スラップベース、シンセサイザー、コンピュータのエフェクトを用いたサウンドが散りばめられた楽曲が多く収録されており、実験的で聴き応えのあるものとなっています。こうした打ち込みサウンドはいかにも1980年代っぽいと思うのですが、時代に迎合したというよりは、むしろ時代を取り込んでサザンっぽく消化してしまったという印象を受けます。というよりも、桑田佳祐が歌えばなんでもサザンになってしまうのですが…。


そして歌詞自体も前述の「古戦場で濡れん坊は昭和のHero」みたく、一見すると意味不明なものが満載。ただサザンならば、おそらく雰囲気さえ伝われば良しという方向性だと思われるので、これでかえってサザンっぽさが強調されたような気すらします。特に、一見意味の通らない英語だらけでも、実は“She more no O.K”と書いて“下の毛”と読ませるような非常に素晴らしい言葉遊びに溢れている「Brown Cherry」が素敵過ぎです(笑)。そんな中で、歌詞の内容が最も分かりやすいのはストーリー仕立ての「死体置場でロマンスを」ですが、これは香港のディスコで女の子を口説いていた男が、その場から女の子ごと謎の集団に拉致られて、放り込まれた先は白骨死体まみれの地下室。この拉致監禁の依頼主はなんと浮気に怒った妻だったというストーリー。一番分かりやすいのに一番ぶっ飛んだ内容なのが、なんともはや。


しかしこうした掴み所のない怪しさが炸裂する反面で、実際にはところどころに正統派の歌謡曲っぽいキャッチーな曲も不意打ちのように収録されており、これがまた絶妙。やわらかなサウンドに包まれた「メロディ(Melody)」や、原坊の歌うしっとりとしたナンバー「鎌倉物語」、寂寥感を誘うラストの「悲しみはメリーゴーランド」などがそれで、余計にワケが分からなくなる始末。しかし、こうしたトータルでの「ワケの分からなさ」こそが一番の魅力だったりするのです。


文句なしのサザン最高傑作。


[1985年発表作品]

SOUTHERN ALL STARS - Computer Children
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Roxy Music 『Avaron』

2011年08月28日 12時31分30秒 | ディスクレビュー P~T
ロキシー・ミュージック 『アヴァロン』


アーサー王が眠るとされている伝説の島「アヴァロン」。そんな理想郷の名を冠するだけあって非常に幻想的で落ち着いた作風ですが、それでいてどこかポップな軽快さも兼ね備えており、ある種のオトナの余裕めいたものを感じるアルバムです。


全編を通じて、サックスの音色や、ふんわりと包み込むようなシンセサイザー、巧みなコーラスワークがアダルトな雰囲気を効果的に演出。また、曲ごとに異なるパートにエコー(反響音)のエフェクトがかけられており、元々の録音状態が素晴らしかったというのもあるのでしょうか、奥行きのある立体的なサウンドとなっています。


ハイトーンなボーカルと、シンプルな8ビートのドラムでテンション高めな「モア・ザン・ディス」。今作のハイライトとなるオトナの色香すら漂うタイトル・ナンバー「アヴァロン」。ゆったりグルグルと部屋中を駆け巡るようなインスト曲「インディア」など、個々の楽曲のクオリティも高く良曲揃い。その中で最も印象的なのは、アルバムのラストを飾る「タラ」。控えめなベースとシンセと波音のSEをバックに、サックスがソロを披露するという2分足らずの短いインスト曲でありながら、しんみりと心地良い余韻を残します。


なおロキシー・ミュージックは、後年ツアーのために何度か限定的な再結成はしているものの、この作品に伴うワールドツアー後に解散しているので、実質的にこれがラスト・アルバムとなっています。この作品を完成させたことで、彼ら自身行き着くところまで行ったのだと感じたのであれば、解散したのも納得です。バンドの終わらせ方としては最も理想的なのではないでしょうか。このアルバムがケルト神話におけるユートピアの名を冠しているのも、もしかしたらこの理想的な終わり方を暗示してのことなのかもしれません。


[1982年発表作品]


Roxy Music - Avalon (Live 1982)
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The Rolling Stones 『Let It Bleed』

2011年08月21日 11時10分46秒 | ディスクレビュー P~T
ローリング・ストーンズ 『レット・イット・ブリード』


初っ端の「ギミー・シェルター」が凄い。何が凄いかって、妖しい魅力満載でドロドロと漂うギターとハーモニカも凄いのですが、何といってもゲストの女性ボーカルが更に凄い。


Rape, Murder, It's Just A Shot Away, It's Just Shot Away…


「レーイィープ!マァダー、イェアー!」などと、物凄くとんでもない台詞をソウルフルに叫びまくり。もうね、メイン・ボーカルのミック・ジャガーを喰らうような勢い。それも容赦なく不安感を掻き立てるようなメロディーに乗せて。確かにこのアルバムが発表された1969年には既にベトナム戦争が始まっており、しかもストーンズの野外でのフリーコンサート中に黒人青年が刺殺されるという、ロックによるラブ&ピース幻想を打ち砕くような事件まで起きてしまった時代(オルタモントの悲劇)。それらの時代の不穏な空気を象徴するかのような壮大なスケールは、ただただ圧巻です。ついでに言えば、上記のフレーズを「強姦、殺戮がおっ始まりそう、おっ始まりそう…」というフレーズに訳した日本語訳者も凄い。「おっ始まりそう」てアンタ・・・。


それに続く楽曲群は、多少こじんまりとした印象は受けますが、それでいてなかなか退屈させないものばかり。というより、むしろあまりスケールの大きさを感じさせない分、かえって上手く「ギミー・シェルター」とのバランスが取れていると言えるのかも。


そしてこのアルバムのもう一つの山場は、やはり「ミッドナイト・ランブラー」。ザクザクとリズムを刻んでいくギターと、ハーモニカとの絡み合いが素晴らしい。徐々にテンポも上がり、それに従い楽曲全体も盛り上がっていくことで、とにかくドラマチックな展開を見せます。


アルバム全体の総評としては、「それでもやっぱり好き嫌いは分かれそう」といった感じです。ところどころに収録されたスローテンポな楽曲に対し「味わい深い」と捉えるか、はたまた「退屈だ」と捉えるか、そこが評価の分かれ目かもしれません。もっとも、僕は前者寄りですが。


[1969年発表作品]

Gimme Shelter - The Rolling Stones
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The La's 『The La's』

2011年08月16日 21時05分08秒 | ディスクレビュー K~O
ザ・ラーズ 『ザ・ラーズ』


ギター、ベース、ドラムのみで構成された、甘く切なく、シンプルで力強いサウンド。しかしそこに乗っかってくるのは、やたらと存在感のある、なんとも情けないダミ声ボーカル(プラス裏声)。この一見食い合わせの悪そうな組み合わせが、妙に郷愁を誘い、耳に、胸に心地良く染み渡ってくるのだからアラ不思議。コミカルな要素満載なのに、なぜかシリアスな余韻漂う傑作として仕上がっております。


さて、このザ・ラーズというバンドですが、現段階ではこのファーストフルアルバムが事実上ラストアルバムとなっており、その後は解散状態になっています。たった1枚のリリースで解散…などとくれば、伝説的パンクバンド、セックス・ピストルズみたいで、なにやら非常に衝撃的にも感じられます。しかし実際のところはというと、どうもバンドとレーベルとの間で揉めた挙句、アルバムのアレンジ自体もレーベル側で勝手に進められてた上に勝手にリリースされ、いつの間にかバンドも自然解体していたというのが実情のよう。


このように、情けなさ全快のボーカルだの、バンドの意に沿わないアレンジを施されただのと、なんだか色々と締まらないザ・ラーズ。それでもこのアルバムが傑作なのは間違いなく、永遠の名曲「ゼア・シー・ゴーズ」や、「ルッキング・グラス」の、情けなさを前面に押し出しつつも切ないメロディーは、何度聴いても素晴らしい。どうしてこんなに涙腺が刺激されるんだろうってな具合に。


ともかくこれは、どこか懐かしさを感じさせるような温かいアコギと、愛すべきダミ声が綴る、甘く、切なく、情けない全12編の傑作です。


[1990年発表作品]

The La's - There She Goes
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Mr.Children 『SENSE』

2011年07月03日 20時44分50秒 | ディスクレビュー ま~も
収録シングル曲は配信限定曲「fanfare」のみで、全ての収録曲が初CD音源化という思い切った内容。おまけに発売の数日前まで、収録曲はおろかアルバムタイトルまで伏せられていたというシロモノ。1~2年程度時間をかけてシングル曲を数曲リリースし、徐々に(それらが収録されるであろう)アルバムへの期待感を煽っていくという、邦楽アルバム作品のマーケティング理論をまるっきり無視した作品です。


作品構成として、アルバムの取っ掛かりとして重要なはずのシングル曲がないのは前述の通り。しかしそれ以外の内容も冒険というか多少暴走気味。オープニングを飾る「I」は、斜に構えた視点で半ばヤケクソ気味の歌詞で、どうにも後味の悪い幕開け。そのうえラストの「Forever」も、壮大なバラードっぽいタイトルとは裏腹に、別れた(フラれた?)後の呆然としたテンション。とことん売れ筋から外れようとするような展開。相当捻くれてます。


ただしアルバム1枚通して聴いてみると、トータルの印象、曲展開は悪くありません。シングル曲がない(=既知の曲がない)ことで、かえって流れをぶった切られることなくスムーズになっている感すらあります。個々の楽曲にしても、「擬態」のような希望に満ち溢れたアッパーチューン、「365日」のようなストレートなバラード、管楽器がアダルトな雰囲気を醸し出している女々しいラブソング「ロザリータ」、ピアノとアコギ主体の綺麗な弾き語りナンバー「蒼」など佳曲揃い。気が付きゃ発売当初の12月から年始に掛けて、随分と聴き込んでしまいました。個人的には、ミスチルのアルバムをこんなに聴き込んだのは『Discovery』以来、実に十ン年ぶり。何のことはない、2000年以降のミスチル作品では最高傑作と言える程のクオリティでした(笑)。


なおセールス面では、ミスチルのオリジナル作品としては2000年リリースの『Q』以来、久々に100万枚に届きそうにない模様。そういえば『Q』も、随分と捻くれた作風だったような…。どうやらミスチルが捻くれてしまうと、(あくまでミスチルにしては)セールスが落ち込んでしまうという法則が発動するようです。そりゃそうか。でもこういうの、結構好きなんだよなぁ…。


そんなわけで毎度毎度は難しいとは思うけど、これからもたまにでいいから、こうやって捻くれた作品をリリースしてほしいものです。


[2010年発表作品]


Mr.Children/365日
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Pinback 『Summer In Abaddon』

2011年07月01日 00時20分54秒 | ディスクレビュー P~T
ピンバック 『サマー・イン・アバドン』


派手なエフェクトもなく、全体的な装飾は控えめ。ギターパートのほとんどが単音弾きなので、悪く言えば多少スカスカで、音の隙間の目立つアルバムです。


しかしながら、そもそも余計な音がないおかげで、ある意味では一つ一つの音に集中できる環境とも言えます。感情を揺さぶる力は半端ではありません。


そのうちいつの間にか「音の隙間」を脳内が勝手に「喪失感」と解釈してしまい、郷愁や切なさを勝手に喚起してしまうという仕掛け(なのか?)。秋の夜長にピッタリ。


なお、日本国内盤限定で、9曲目に「todo」なるボーナストラックが収録されていますが、これがまたオリジナル収録曲を抑えてベストトラックと言えるほどの名曲。さらにオリジナル収録曲の途中に挿入されているのに、それで全体のトータル感が損なわれるどころか、むしろ作品全体がググッと引き締まった感じさえあります。


ボーナストラックが文字通りにボーナストラックとして機能している、非常に珍しい作品。


[2004年発表作品]

Pinback - todo
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ヒートウェイヴ 『日々なる直感』

2011年04月24日 16時19分47秒 | ディスクレビュー は~ほ
土の中での7年を たった7日で燃やし尽くし――


ヒートウェイヴにかかれば、セミだって途端に熱い生き物になってしまう。歌詞を読んでいるだけでもそう感じてしまう。とにかくエネルギッシュ且つソウルフルな山口洋氏のボーカルによって放たれた言葉の存在感は、恐ろしく圧倒的なのです。


こんなこと書いては失礼ですけど、彼は決して“上手い”ボーカリストではないと思います。しかしその歌唱には、なにか妙な説得力のようなものが備わっているのです。そもそも上述の歌詞が用いられている「夏」という曲には「この夏はヒグラシと共に終わる」という一節があるのですが、夏の終わりと言えば時期的にはむしろヒグラシではなく、ツクツクボウシでは・・・?しかしそんなことが本当に些細にしか思えなくなるから不思議なのです。彼が「太陽は西から昇る」と歌えば、もしかしたら「ああ、そうかもな」と思えてしまうかもしれない。これはもう、一種の才能ではないでしょうか。


さて、そんな「夏」を初めとした傑作が揃いに揃ったこのアルバム『日々なる直感』は、要約するとロックンロールにアイリッシュ音楽を大々的に取り入れた作品です。特にブズーキ(マンドリンっぽい楽器)がアコースティック・ギターと同じ位の頻度で使用されており、それによって独特の個性溢れる雰囲気が生まれています。


たとえば「ガーディアンエンジェル」では、ギター、ベース、ドラムスのロック基本構成楽器に加え、ブズーキ、フィドル(バイオリンみたいな弦楽器)、ティン・ホイッスル(笛)などのアイリッシュ勢と、日本の三線とお囃子が加わり、東西民族音楽ロックとでも形容すべき、面白い構成になっています。


更に被差別部落に伝わる子守唄を元に作られた「竹田の子守唄」。そして、アイルランドのトラディショナル・ソングを日本語詞で歌った「ホームズ・オブ・ドニゴール」。このように日本、アイルランド、それぞれの伝統音楽のカバーが収録されているのも面白いところ。


また、何かが始まろうとする、そんな胎動の予感を見事に音として結実させたような「天国へと続くハイウェイ」を始めとして、日常の中でふと湧き上がる焦燥感をうたった「ノーウェアマン」「風の強い日」の反則的なコンボなど、その他の楽曲の破壊力も抜群。「七つの海」でボルテージは最高潮に。



[1999年発表作品]
ヒートウェイブ  ガーディアンエンジェル
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はっぴいえんど 『風街ろまん』

2010年12月29日 20時41分23秒 | ディスクレビュー は~ほ
今でこそ一つの文化として日本にも根付いているロック音楽ですが、ロックが英語圏で生まれた文化である以上、その始まりにおいて、日本語での歌唱という事態は想定されていなかったはず。そんなこんなで、日本でのロック黎明期には、ロックのリズムに日本語の歌詞は合わないという論争が起こっていたようです。要するに「日本語はロックのメロディーにうまく乗りきらないので、ロックは英語で歌うべきだ」とかどうとか。


そんな最中にリリースされたのが、この『風街ろまん』。半ば逆ギレしたかのように聞き取りやすい日本語詞のオンパレードで、この作品が成功を収めてから以後、日本語ロックにおけるこうした論争は、あっさり収束に向かったそうな(Wikipediaより)。


そうした視点からこの作品を捉えたとき、収録曲の中でも特に興味深く感じるのは、最後に据えられた「愛餓えを」。上記の論争に対する当て付けなのかどうかは分かりませんが、アコースティック・ギターに合わせて「あいうえお~、かきくけこ~」と、日本語の50音をただ順番に歌っだけの曲です。しかし、それできちんと楽曲として成立してしまうことを立証しているという、ある意味、完全に上述の論争をおちょくったかのような清々しい一曲です(笑)。


作品全体を通して聴いてみた印象としては、エレクトリック・ギター、アコースティック・ギター、ベース、ドラムス、キーボード、そして言葉のひとつひとつまで、どのパートも飛びぬけて派手な主張をしていません。かといって目立たないわけでもなく、全てが埋もれず並び立っているという、恐ろしく絶妙なバランスを保っています。また、名曲「風をあつめて」や、夏の田舎の風景や退屈さを淡々と歌った「夏なんです」など、シリアスさなどまったく感じない飄々とした雰囲気が素敵。音や歌詞の一つ一つをゆっくり噛みしめながら、落ち着いて聴ける名盤。


[1971年発表作品]


はっぴいえんど ・ 抱きしめたい
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