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2011年TVドラマ春シーズン・レビューNO.3:「鈴木先生」

平均視聴率が21%に達する「JIN」が,数字上は一人勝ちの様相を呈している2011年の春ドラマだが,はっきり言って内容的には低調だ。どの局においても脚本家に若手を登用する傾向が目立つが,そのほとんどが総崩れ状態なのに加えて,井上由美子や林宏司といったヴェテラン勢まで,続けて見るに値しない内容の作品を垂れ流し続けているのを観るのは実に悲しい。そんなに悲しいなら観なければよい,と言われそうだが,お笑いタレントのローテーションによって安定した数字を取るヴァラエティ&クイズ番組全盛の時代に,敢えてB/Cの低いドラマ作りに挑むチャレンジ精神だけは応援したいという複雑な壮年心も,一方で存在するから厄介だ。

そんな中にあって,「glee」をはじめとする米国製の大排気量で押しまくる幾つかのドラマ群のせいで,極端に少なくなってしまった国産の録画予約番組のひとつが,テレビ東京が渾身の力を込めて送り出した(と思しき)「鈴木先生」だ。
これもご多分に漏れず大流行の「コミック原作もの」のひとつなのだが,展開から役者,演出に音楽と,全てが胸のすくようなニッチ精神に溢れているのだ。

主人公の鈴木先生は,問題解決にあたって生徒と一緒に悩みはするが,指導にあたっては打ち出した策がどれもズバリと的を射抜いて一件落着,というステレオタイプの理想教師からは遙かに遠い。
それなりの根拠と自信を持って打って出てはみるものの,それぞれに複雑な心情を抱えた生身の生徒は手強い。常に予想と乖離する結果を前に,鈴木先生は立ちすくむ。
そこから自らを鼓舞し,必死かつ妙に冷静に解決策を模索する姿は,まるで良くできたサスペンスに出てくる人間味溢れる探偵のようで,実にリアルで目が離せない。
更に,たった一人の優等生美少女の存在によって常に救われながらも,どうやら彼女の存在が鈴木先生のプライベートな生活を侵食しつつある,という設定も新鮮でワクワクさせてくれる。

「セカンド・バージン」で鈴木京香が溺れた相手を演じてブレイクした主役の長谷川博巳が,今度は中学2年生に翻弄される,という皮肉の効いたキャスティングも当たった。メガネにポーラー・タイというスタイルも,際立つような二枚目でもないのに妙に印象に残る長身の長谷川にフィットしている。
セオリー重視のヴェテラン教師を演じる富田靖子も,鈴木先生に理解と同等の興味を示す田畑智子も,「冷たい熱帯魚」の怪演が記憶に新しいでんでんも,それぞれに好演だが,出番が少ないながらも,鈴木先生の悩みを知ってしまい「生き霊」化しつつある臼田あさ美の熱演もドラマに良いアクセントを加えている。

字幕やモノローグを多用した演出も,大友良英の音楽も,エッジの効いた展開に良く馴染み,このチャレンジ精神旺盛なドラマを盛り上げている。
視聴率はなんと驚きの「2%」前後(!)ということだが,鈴木先生の妄想に幸あれ,と応援し続けたい。
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