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小松左京/日本沈没 第二部

2007年06月02日 21時16分20秒 | Books
 一昨年の暮れに、「日本沈没」のことを書いた時、最後に「近年の写真をみると往時に比べずいぶんと痩せてしまって、今更30年前にかかれた作品の続編に期待するのも酷ではないかとも思ったりもする。」などと締めくくったのだけれど、こういう形で続編が出たとは正直驚いた。確か昨年の長期出張中に都内の書店の新刊のところに沢山並べてあったのを見て知ったのだが、なんと谷甲州という人との共著になっていて、あとがきなど読んでみると、執筆は体力的に無理なので、ストーリーを共同作業でまとめて、小説そのものは谷甲州が担当したということらしい。おかげで、私は「小松左京以外の人の書いた小松左京の小説」という警戒感のようなものを感じてしまい。結局半年近く、購入することをためらっていたのだが、ようやく購入して、数日前に読み終わったところである。

 なにしろこの作品、ストーリーはともかく実際の執筆は別人が担当していることで、あの小松左京らしいスケール、饒舌さ、あるいは生活感のようなものが、いったいどうなってしまっているんだろうと、実はおそるおそる読み始めたのだが、意外にも実に小松左京らしいタッチの作品になっていて、読んでいて懐かしいやら、安心するやらで、あっという間に読了してしまったという感じだ。
 ストーリーは当然の如く、沈没した日本のその後で、沈没から25年後からスタートする。日本人当然世界に散らばっていて、パプアニューギニアだとかカザフスタンなどに活動する人達をピンポイントかつ平行して、入念に描写していくのは、ある意味前作の同じパターン。ちなみ日本政府もちゃんと存在していて、首相は中田という設定なのが懐かしい(ちなみに渡り老人の孫とか国枝、もちろん小野寺や玲子も登場する)。しかもこれらのドラマの中から、次第に日本復活に向けてのメガフロートという人工島や地球シミュレーターといったプロジェクトが浮かび上がるという趣向になっている。

 ネタバレ承知で書くと、メガフロートという人工島は、地球シミュレーターの予測で、なんと地球は氷河期を迎えることになり頓挫、今度は地球規模の危機となるという展開が後半の中心となっていくのが、ここに例によって政治だの、思想だが絡みいかにも小松左京らしい蘊蓄が傾けられる。
 ただ、全体としては後半がやや駆け足すぎで、薄手になってしまった感もある。大詰め近く首相と外務大臣がサシで向かいあう、日本とは、愛国心とは....みたいな問答は、いかにも小松左京らしくて、なかなか読ませるのだが、今一歩、危機の主体(氷河期)が漠然としていることもあってか、どうも切迫感がなかったのが惜しまれるところかもしれない。谷甲州の文章は小松左京ほど、説教臭くも、感傷的でもないけれど、この作品のスケール感や「日本沈没」の雰囲気はよく生かしているだが、なにしろちと短い、この倍とはいわなくとも、1.5倍くらいの分量があった方が良かったと思う。
コメント
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