空観方程式

「色」と「空」の一体化によって可視化され、相互作用で共感・共鳴が生じ、新たなる思いや生命力が実体化される。

経(たて)糸と緯(よこ)糸 -------染織家 志村ふくみの日々

2014年01月05日 | 記事のコメント
☆年始特集 「京の“いろ”ごよみ 染織家 志村ふくみの日々」
【Eテレ】1月1日(NHK教育テレビ)

染織家人間国宝、志村ふくみ氏の生き様や自然観


深い茜色、奇跡的な紅花の淡い紅、生きている藍の色、色にはそれぞれ
命があって、季節の移り変わり、そのときどきに生まれる色であって

そうした「縁」というコンタクトによって具体化されていた。
自然はいつも思いがけない。だから二度と再現できない色だ。しかし
自然とのコンタクトによって具体化された色は、いずれも透明で純粋で
かつ新鮮であった。

   アカネ

当の染織家は繭から紡いだ糸に染色するだけでなく、機織りまで行う。
機織りでは、たて糸を経度の経、よこ糸を緯度の緯を使って表現する。
番組の中でも出てきたが、経糸の経は心経の「経」とも読めるのであって、
そうであれば、私にとっていささかこじつけ的でもあるのだが、「空」と
「色」の二次元によって紡ぎだされる「織り色」を連想させるに十分だった。


 ベニバナ

ところで経(たて)糸は、やはり何でもかんでもよいというわけではなく、
絆とか想いなどの経のつながり、あるいはビジョンやポリシー、コンセプト
といった織の思想的な部分を担う。
一方、緯(よこ)糸は具体的な色付やグラデーションであって、それらが
一体化した時に、織り全体の色が具現化される。これらの組み合わせだから
無限に存在する。
見た目には同じ糸でも、異なった役割があるから、それぞれを活かしながら
染織する。即ち、経(たて)糸だけでもダメ、緯(よこ)糸だけでもダメ、
経(たて)糸と緯(よこ)糸の双方があって、それらが二次元的に織りなす
ことで、はじめて新たな「織り色」が実現される、ということである。
まさに経と緯の関係は、空と色の関係でもある。


そのときどきに生まれる色に、氏は「日常あたりまえのことが、私たちが
気がつかないだけ
」という。
日常に使う布を見て、それが経糸と緯糸とが織りなす「織り色」を意識する
ことはないし、和食で出されるお吸い物をいただくときに昆布と鰹節の調合
された味だなどといちいち考えない。
社会や人間の関係も同様である。結果の数字だけではなく、異種間での
関係性とが一体化された姿なんだと意識しなければ、現状の改善や進化に
ならないし、経糸と緯糸とが織りなす「織り色」なのだと意識しなければ、
新たな世界を目指すこともできない。



例えば「うまい!」の新春TVで紹介があった通り、イノシン酸とグルタミン酸の
組み合わせが調理にとって良いと分っていれば、和牛の赤身を昆布で巻いて
塩釜焼にする、という具体的な調理プロセスが、自然に生まれるものだ。


また、ノーベル賞の山中教授が発見したiPS細胞も、ビジョンとハードワークの
「織り色」の結果なのであって、結果のiPS細胞だけに注目してしまえば、
ビジョンやハードワークの方は見えなくなってしまう。だから
空と色の三位一体の関係、いわばコンタクト・シナジーによって生まれる関係に、
日常生活の中では、まだまだ気が付かないでいることがたくさんありそうだ」
という事が、染織家や食材番組を見ての印象である。


祝:文化勲章受章 2015年11月文化の日

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