思いつくままに

ゆく河の流れの淀みに浮かぶ「うたかた」としての生命体、
その1つに映り込んだ世界の断片を思いつくままに書きたい。

困った人たち

2017-01-25 13:45:13 | 随想

 テレビを見たり、いろいろな人と話したりしていて気付くのは、簡単に言えば、それぞれの人が「私は正しい」と思っているということだ。特に、社会的問題など、正解を明示することが難しい問題についてそれが言える。自然科学関係の問題については、いまの科学で明らかになっていながら、自分が知らないことはたくさんあると思っているので、知らなかったことを教えてもらうことで、従来の自分の考え方を改めることに、それほどの抵抗はないようである。

 しかし、前者のような性質を持つ問題については、意味のある時間内に確実に正しい答えを出せないのが普通のことである。だから、自分が正しいと思っていることを、ほかの人が否定した場合、反論するのが普通のこととなる。しかも、その考え方が大きく違う場合、ほとんどまともな話にならないことが多い。相手にその弱点を突かれれば突かれるほど、論理的にはボロボロになっても、むきになって反論し、あげくは暴力沙汰になったりする。

 なぜそうなるのだろう。前回のブログで述べたように、人とは、それまでに蓄積した経験や知識に基づいて反応する一つの物理化学的な装置である。どういう経験を積むか、どんな知識を得るか、それはDNAレベルでの個性や、その生まれ育った環境(歴史的、地理的、社会的)によって一人一人が異なる。だから、その装置の外界への反応の仕方は、そこに蓄積されている経験や知識によって異なり、その違いこそが各個人の人間性をかたち作っているとも言える。また、その装置が他の装置とどういう関係を持っているかによっても反応の仕方は異なってくる。そのような各個人の存在条件から導き出された外界への反応の仕方が、各個人にとって「正しいこと」となる。したがって、各個人が「正しい」と思っていることを否定することは、その人間性を否定するという意味にもなる。人が簡単にほかの考え方に同調しないのはこのためだと思う。だから、「正しいこと」であれば、かならず、いつかはわかってもらえるという考えは安易に過ぎる。「正しいこと」とは、実は個人的なものである。

  ただし、これは、話しをすることなど無駄なことだと言いたいのではない。反対に、話すことは大切なことである。世の中には、話がよく合う人がいる。お互いに不足する部分を補い合いながら、さらに認識を深め合ったりできる人がいる。それは、上に述べた個人の存在条件に共通する部分が多いからだと考えられる。インターネットのツイッターやフェースブックなどで形成された一種のフォーラムが多数あるが、各フォーラムは、ほぼ同種の人たちが意見を交換している。だから、そのような場では、互いに認識を深め合うことができる。大いに話をした方がいい。また、以前に書いたブログ「群盲象を撫でる」(2013.1.11)も見てほしい。いろいろな人と話をすることは、多様な視点を獲得することでもあり、この世界を適切に認識するうえで大切なことである。

 ところが、この世界には困った人たちがいる。自分の見方、考え方こそ正しい、他は間違っていると考えている人である。ここまではいいだろう。このような人たちの考え方も一つの考え方であり、同意はしなくても、その考え方そのものを禁止すべきではないだろう。彼らの資質や生まれ育った環境、そのときの人間関係がそのような考え方を醸成したのだろう。しかし、問題は、それを他人に押し付けようとすることである。他人がそれを受け入れないと怒り、力を持っている場合は、暴力的にそれを押し付けたり、反対するものを排除したりする、それが問題である。

 一番大きな問題は、国という大きなレベルで、いまだにこの問題が乗り越えられていないことである。人間の社会を治めようとする人たちがこの種類の人であると、悲惨な結果を招くことが多いのは歴史が示している。民主主義社会というものは、衆知を集めて、悲惨な結果を招かないようにしようという、ようやくたどり着いたシステムである。欠陥もあり、正すべき点も多いものである。しかし、その欠陥を突いて、困った人たちが、再び、自分流の正しさを強引に押し付け始めた。国会などで野党から批判されるとすぐにキレてしまう安倍首相やその周辺の人たちは、この種類の人たちであり、自分の国家感こそ正しいと信じ、そのような国家にすべく、強権的にその政策を推し進めている。

 初めに述べたように、この種類の人たちとはまともな話ができない。以下に、その例として、安倍首相の発言を示してみる。(主にlite-ra.comの“なぜここまで平気で嘘をつけるのか? 2016年安倍首相がついた大嘘ワースト10 強行採決、TPP、ガリガリ君…”から引用。コメント部分は改変した)

「そもそもですね、我が党において、いままで結党以来ですね、強行採決をしようと考えたことはないわけであります」(’16年10月17日、衆院TPP特別委員会)

*  集団的自衛権行使容認に伴う安保法制改定/特定秘密保護法/TPP関連法/年金カット法など、普通の人の感覚では、すべて「強行採決」であった。安倍首相にとって「強行採決」とは、反対党が行なう、自分の意にそぐわない採決のことであり、同じことを自分が行なうときは「強行採決」ではないようだ。

「私自身は、TPP断固反対と言ったことは一回も、ただの一回もございませんから」(’16年4月7日、衆院TPP特別委員会)

* 目の前に2012年総選挙時の「ウソつかない。TPP断固反対。ブレない」という自民党ポスターを突き付けられていながら、堂々とこんなことを言う。

「世界経済はリーマンショック前に似ている」(’16年5月27日、伊勢志摩サミット)

* 伊勢志摩サミットの取材に訪れていた海外メディアはすぐにその発言を報道したが、安倍首相は、「私がリーマンショック前の状況に似ているとの認識を示したとの報道があるが、まったくの誤りである」と言う。

「株価下落により、年金積立金に5兆円の損失が発生しており、年金額が減るといった、選挙目当てのデマが流されています。しかし、年金額が減るなどということは、ありえません」(選挙前の‘16年6月27日、Facebook)

* 選挙後の7月29日に、政府は約5兆3000万円の運用損を出したことを公表。また、強行採決で成立した年金カット法案によって年金額が減らされることになった。

「妻のパート月収25万円」/「日本はかなり裕福な国だ」(‘16年1月8日、参院予算委員会/’16年1月18日、同委員会)

* 当時の直近データではパート労働者の平均月収は8万4000円。/OCDE(経済協力開発機構)の統計で日本の相対的貧困率はワースト6位。

「我が国が核兵器を保有することはありえず、保有を検討することもありえない」(‘16年8月6日、広島での記者会見)

* この発言の10日後、オバマ大統領の「核兵器の先制不使用宣言」に対し、安倍首相はハリス米太平洋軍指令官に反対の意向を示す。国連の「核兵器禁止条約」に向けた交渉を2017年にスタートさせる決議で日本は反対。2006年には、「核兵器であっても、自衛のための必要最小限度にとどまれば、保有は必ずしも憲法の禁止するところではない」と答弁書に記載。官房副長官時代の2002年には「憲法上は原子爆弾だって問題ではないですからね」と語っている。

「国民の信任を得た」「(自民党改憲案を)実現していくのは総裁としての責務」(‘16年7月11日、参院選の結果を受けて)

* 7月の参院選の遊説において、ただの一度も憲法改正に触れず、選挙が終わると、「信任を得た」と胸を張り、(改憲を)「実現していくのは責務」などと言う。

 「そんなもの政治資金で買いませんよ!」(‘16年6月24日、『NEWS23』(TBS)党首討論で)

 * 政治資金でガリガリ君を2本買ったことは、安倍首相の資金団体が領収書を出している。

「国内担保法(共謀罪)を整備し(国際組織犯罪防止)条約を締結しなければ、東京オリンピック・パラリンピックをできないと言っても過言ではありません」(‘17年1月23日の衆議院本会議)

 * 同じ人が、オリンピック招致のときは、「日本は世界一安全な国」と大見得を切る。

共謀罪「一般人は対象外」と菅官房長官。特定秘密保護法の強行採決では「普通の人には関係ありません」と説明。そのとき礒崎内閣補佐官は国会前デモを「とても一般人とは思えません!」と述べ、特定秘密保護法案の審議で「政府に情報開示を迫ったら普通の市民も逮捕される」との指摘に自民党議員が「そんなの普通の市民じゃないよ!」とのこと。

「世間の人が心配する程のものではなく、この法(治安維持法)のために今の社会運動が抑圧せられるなどということはない=警視庁は語る」「純真な運動を傷つけはせぬ」(大正14年5月の新聞記事)

「TPP対策費にはTPP発効に関わらず必要なものがあった」「既に予算化しているものは全てその区分であり、TPP発効に関わらず必要なものだ」「従って予算の組み替えは行わない」(‘17年1月23日衆議院本会議)

* トランプ大統領は「アメリカをTPP交渉から永久に離脱させる」という大統領令に署名した。1兆円を超えるTPP対策費についてその責任を問われるとこんなことを言う。

 TPP対策 主な予算の内訳(各府省提出の予算額をTPP政府対策本部が集計)

2015年度補正予算  計4875億円

海外展開先のビジネス環境整備 223億円

ブランド化など、地域の「稼ぐ力」強化 1053億円

攻めの農林水産業への転換 3122億円

16年度当初予算 計1582億円

コンテンツ、技術などの輸出促進 131億円

企業間連携などによる生産性向上促進 245億円

食の安全・安心 29億円

16年度補正予算 計5449億円

新たな市場開拓支援など 853億円

ブランド化など、地域の「稼ぐ力」強化 907億円

攻めの農林水産業への転換 3453億円

合計 1兆1906億円

 これらは、すべて「TPP発効に関わらず必要なもの」だそうだ。それならば、「TPP対策費」とする必要がない。それなのに、これが「TPP対策 主な予算」となっているのはいったいどういうことなのだろう。

 以上のように、あきれてものが言えないような発言のオンパレードである。こんな人が日本の総理大臣なのだ。「美しい日本」ではなく「恥ずかしい日本」である。“相手の話す言葉も、自分の話す言葉もほとんど理解していないのに、堂々としゃべる傾向がある”という「ウェルニッケ失語症」という脳の病気があるが、まるで、その病気に罹っているかのようだ。

 では、どうすればいいのだろう。一般人であれば、相手にしなければよい。しかし、彼らは、実際に権力を持ち、彼ら流の「正しさ」を暴力的に押し付けてくるのだから無視しようがない。したがって、必要なことは、彼らに反対する側の人をもっと増やしてゆくということである。現政権はおかしい、危険だと思う人たちを増やすことである。彼らの言っていることがどれほど矛盾しているか、どれほど国民を愚弄しているか、その政策が多くの国民にとってどれほど大きな不幸をもたらすことになるかを訴えることである。そして、まだ有効性を持っているはずの選挙で政権交代を図り、こんどはこちらが「正しい」と考えている政策を実行する政権を成立させることである。

 いまでも、原発、改憲、沖縄、近隣諸国との関係、天皇の特別法による退位、カジノ法などの問題について、世論調査をすると、半数以上の人が現政権の方針に反対している。しかし、議席の3分の2を占める与党により、それは強行に推進されてゆく。国民の過半数という人数は、現在の選挙制度(特に小選挙区制)のもとでは、現政権をけん制するに十分な人数ではないということだ。数(得票数)で劣る人たちが、数(獲得議席)の多さを盾に、強権をふるっているのである。もっと、多くの人が現政権への反対票を投じる必要がある。いまはそうすることによってしか「彼らにとっての正義」の強権的押し付けを阻む方法はない。

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