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映画「戦場のメリークリスマス」 大島渚

2014-10-29 21:54:39 | 映画(日本 昭和49~63年)
映画「戦場のメリークリスマス」は大島渚監督による83年の映画作品だ。


テーマ曲があまりにも有名、題名が「戦場」となっているが日米の交戦シーンはない。捕虜収容所における英国捕虜と管理する日本兵との関わりを描く。ここでは2人の超一流ミュージシャンを中心にストーリーが展開する。デヴィッド・ボウイと坂本龍一だ。それにジョニー大倉、内田裕也という2人のミュージシャンが加わり捕虜収容所におけるヒューマンドラマを展開する。

ストーリーはどうってことない。
ここではこれらのミュージシャンとビートたけしのふるまいを見て楽しむということだろう。

1942年、ジャワに日本軍の浮虜収容所があった。日本軍軍曹ハラ(ビートたけし)は英国軍中佐ロレンスを叩き起こし、閲兵場に引き連れて行く。広場にはオランダ兵デ・ヨンと朝鮮人軍属カネモト(ジョニー大倉)が転がされていた。カネモトはデ・ヨンの独房に忍び込み彼を犯したのだ。ハラは日本語を操るロレンスを立ち合わせたのだった。


そこへ、収容所長ヨノイ大尉(坂本龍一)が現れ、察した彼はハラに後刻の報告を命じて、軍律会議出席のためバビヤダへ向かった。法廷では、英国陸軍少佐ジャック・セリアズ(デヴィッド・ボウイ)の軍律会議が開廷された。ヨノイは異様な眼差しでセリアズを凝視する。セリアズは浮虜収容所へ送られてきた。ヨノイはハラに、セリアズをすぐに医務室へ運ぶよう命令する。そこへ浮虜長ヒックスリが連れてこられた。ヨノイは彼に、浮虜の内、兵器、銃砲の専門家の名簿をよこせと命ずるがヒックスリは拒否する。

ある日、ヨノイの稽古場にハラが現れ、ロレンスが面会を申し入れていると告げる。ヨノイは唐突に、自分は二・二六事件の3ヵ月前満州に左遷されたため、死に遅れたのだと語った。そして、その場でカネモトの処刑をいい渡した。処刑場にはヒックスリ以下浮虜側も強制的に立ち会わされ、ハラがカネモトの首を切り落とした瞬間、デ・ヨンが舌を噛みきった。「礼を尽くせ」とヨノイは命ずるが浮虜たちは無視する。激昂したヨノイは、収容所の全員に48時間の謹慎と断食の行を命じる。ロレンスとセリアズは独房入りとなった。

ロレンスは、たった2度しか会わなかった女性の思い出の中へ。セリアズは、耳許に内向的だった弟の歌声を聞く。2人は司令室に連行された。そこには「ろーれんすさん。ふあーぜる・くり~すます」と笑いかけるハラがいた。ハラは2人に収容所に帰ってよいといい渡す。ヨノイの命令で、浮虜全員が閲兵場に整列させられたが、病棟の浮虜たちがいない。病人たちをかばうヒックスリに、激怒したヨノイは再び「兵器の専門家は何人いるか」と問う。「おりません」とヒックスリ。ヨノイは「斬る」と軍刀を抜いた。そのとき、浮虜の群からセリアズが優雅に歩み出、両手でヨノイの腕をつかむと、彼の頬に唇を当てたが。。。


男色系恋愛映画というのがある。そういう映画とは一線を引くが、デヴィッド・ボウイが登場してから坂本龍一をはじめとした日本兵の調子がくるってくる。客観的に見てもここでのデヴィッドボウイの美青年ぶりが際立つ。ぞくっとするようないい男ぶりだ。パブリックスクール時代の想い出と弟がくらうイジメの話が挿入されるがちょっとついていけなかった。

1.デヴィッドボウイ
デビューしてからもう10年たつ頃だ。キャロルが初めて登場したフジテレビ「リブヤング」で、自殺した評論家今野雄二がデビュー以来何度も紹介していた。今野は有名な男色系だ。1983年といえば、「レッツダンス」が全米ヒットチャート1位をとる。ディスコで何度もかかった曲である。そういう世界の頂点にある時期にこの映画に出演したという事実が凄い。


最近では化粧しているミュージシャンが珍しくない時代となったが、デビュー時のデヴィッドボウイの化粧姿には驚いた。ここでのデヴィッドボウイは化粧なしで、しかも端正なマスクを見せる。美しいといってもいいかもしれない。あえて女性を一人も出演させなかったのにはデヴィッドボウイを際立たせる意味があったのではと感じる。

2.坂本龍一
イエローマジックオーケストラで脚光を浴びたのは1979年である。82年には矢野顯子と結婚している。演技を見ればわかるように、まったくの素人である。大島渚もよく出演させたなあと思うけど、独特のオリエンタルムードを持っている。デヴィッドボウイに対抗させるには彼しかいなかったろう。87年の「ラストエンペラー」では甘粕大尉を見事に演じるようになるのであるが。。。


3.ジョニー大倉
キャロルの解散は75年で、もう8年たっている。いまや醜い姿をさらしているが、俳優としての基礎を固めつつある時期で、矢沢永吉との差は今ほど極端に開いているわけではなかった。81年の「遠雷」は今もって傑作とされる。ここでは日本兵として罰せられる朝鮮人兵を演じている。情けない顔をさらしているだけであるが、元々在日のジョニーが戦争中も差別を受けていた朝鮮人の姿を見せつける。

4.内田裕也
浮虜収容所の所長役である。ここ最近は凄い色の髪をしてヤクザまがいの表情を見せる。この作品では端正な顔でかっこいい。65年の「エレキの若大将」での司会役、この映画、2003年の「赤目四十八瀧心中未遂」の刺青師の3つを比較してみると面白い。


こんな4人を見れるだけでも価値がある。ビートたけしはまだツービートの漫才で売っていたころで、映画の世界に本格的に足を突っ込んでいなかった。坊主姿の顔は戦前の日本人そのものの表情と言っていいだろう。最後のシーンは感動したという人も多いが、さほどでもなかった。

(参考作品)
戦場のメリークリスマス
日本兵と捕虜の奇怪な関係


ラストエンペラー
甘粕大尉を演じる坂本龍一


レッツ・ダンス
全盛期のデイヴィッドボウイ


赤目四十八瀧心中未遂
内田裕也を見比べる

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