映画とライフデザイン

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映画「乾いた花」 池部良&加賀まりこ

2014-06-28 05:53:47 | 映画(日本 昭和35年~49年)
映画「乾いた花」は昭和39年の篠田正浩監督による松竹映画作品だ。原作は石原慎太郎による。

ジャケットの加賀まりこが若い。小悪魔と言われたころの彼女である。当然かわいいし、危険な香りもある。
主役は出所間もないやくざを演じる池部良である。これがいい。その2人を中心に白黒でスタイリッシュにまとめる。後ろには武満徹の前衛音楽が流れる。演歌調や浪花節調でなく、アウトローのムードをじんわりさせる。これが実に効いている。なかなかの拾いもので映画のレベルはかなり高い。ネタばれになるが、ラストシーンも余韻を残してうまく終わる。

映画のストーリーは単純だ。
出所間もないやくざ村木(池部良)がいる。人を殺して三年ぶりに娑婆へ出たばかりだった。組に戻り親分(宮口精二)にあいさつして、賭博場に久々に向かう。昔の仲間が多数いる中に、一人の若い女性(加賀まりこ)がきっぷの良い博打を打っていた。次の賭場で村木は再びその少女に会い、サシで勝負した。

その夜、村木は思いがけなく屋台でコップ酒を飲む少女を見た。名は冴子、もっと大きな勝負のある場所へ行きたいとせがむ。約束の日、彼女はスポーツカーMGで現れた。賭け額が張る場でも、冴子はさっそうと立ちまわった。後ろでは気味の悪い男が様子をうかがっていた。葉という男(藤木孝)は、中国帰りで殺しと麻薬だけに生きているという。その死神のような眼に、村木は言いしれぬ危険を感じた。村木と冴子は、夜の街を狂ったようにMGを走らせた。
その後やくざ同士の縄張り争いに巻き込まれ、村木は刺客を引き受けざるを得ない状況になるのであるが。。。

池部良がかっこいい。ヤクザ映画と言うと東映スタイルを想像するが、ここでの組員のファッションは特にいわゆる最近のやくざや不良のテイストを彷彿させるものではない。普通である。でも、賭博場面が妙にリアルティがある。
「先にコマ、先にコマ。。。」「どっちもどっち。。。。」と胴元が仕切る。賭博場に流れる異様な雰囲気がどこか違う。
行ったことないのでわからないが、実際の賭博場を取材したのであろう。他のヤクザ映画で見る「手本引き」よりもリアルである。

池部良には新子(原知佐子)という女がいた。彼女はずっと出所を待っていた。元々は普通の事務員であり、結婚を嘱望されている男もいた。でも池部良が戻ってきて、一度抱かれると離れられなくなるのだ。
ヤクザには情交はつきものだという。いったんくっつくと1週間は腰の抜けるまで「ヤチをきり」相手を離れられないような状態に持っていく。そんな話を笠原和夫の本で読んだことがある。でも、その池部良も加賀まりこの意外性のある魅力に魅かれていく。そこがこの映画のミソである。


殺し屋村木は刺客を引き受け、仕事を履行する。
ピストルで相手を撃つわけではない。ドスで相手を刺すわけである。その前に見せる池部良の表情がまさに殺人鬼の表情になっている。自分は実際の殺しを目の前で見たことがない。でも豊田商事事件オウム真理教の村井秀夫殺人事件はテレビで臨場感あふれるように映し出していた。その時の殺し屋の表情と今回の池部良の顔がだぶる。リアルなものへの接近がこの映画の凄味である。

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2 コメント

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この映画は (さすらい日乗)
2015-01-08 13:45:05
あまりに反社会的とのことで、大船では撮影できず、柿の木坂にあった教育映画配給(教配)という撮影所で作られました。大島渚の『悦楽』もそうです。
石原慎太郎も、「自分の小説で最高作品は、これだ」と言っていますが、この映画は松竹では1年間公開されず、63年末に篠田や石原が金を出して上映会をして、記者等を招待しました。
ところが途中で一人、また一人と記者がいなくなり、何事かと思うと小津安二郎が死んだとのことでした。
白黒ではこれと『異聞猿飛佐助』が篠田正浩作品では最高だと私は思います。
「乾いた花」 (wangchai)
2015-01-08 21:18:26
>あまりに反社会的とのことで、大船では撮影できず、

この映画の賭博の場面が妙にリアルな感じがします。胴元の雰囲気が他の任侠映画とは違う。(実際に行ったことはないのですが)

池部良の振る舞い方も数多く出演した他の任侠映画よりも「殺し屋らしい」匂いをプンプンさせます。反社会的と思われても仕方ないでしょうね。

>ところが途中で一人、また一人と記者がいなくなり、何事かと思うと小津安二郎が死んだとのことでした。

初めて知りました。そんな時期から頑張っている加賀まりこもすごいですね。

またよろしくお願いします。

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