映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

映画「江分利満氏の優雅な生活」 小林桂樹&新珠三千代

2017-01-01 22:09:09 | 映画(日本 昭和35年~49年)
映画「江分利満氏の優雅な生活」は昭和38年(1963年)の東宝映画


この年山口瞳がサントリーの宣伝部に勤めているまま「江分利満氏の優雅な生活」で直木賞を受賞した。原作を若干変えて、むしろ山口瞳のプロフィルに近い脚本としている。昭和38年当時のサラリーマン生活が浮き彫りにされるが、大正15年生まれでむしろ戦中派ともいえる江分利満のグータラぶりが見ていて楽しい。オリンピックを控えた東京周辺の住宅地の道路がまだ砂利道だというのもよくわかる。

江分利満はevery manのもじりである。

主人公江分利満(小林桂樹)はサントリーの宣伝部に勤める36歳のサラリーマンで妻夏子(新珠三千代)と子供庄助、父(東野英治郎)と川崎の社宅で暮らしている。どちらかというと、不器用で仕事がバリバリできるというタイプではない。酒好きで週に一度は深酒をしている。その日も夕方5時の退社時間になり、周りの同僚の動きをみて飲みに誘う態勢にはいっているが、新婚の隣人(江原達怡)をはじめ、みなそそくさと帰り支度をはじめている。気がつくと、一人で飲み屋のはしごをはじめて馴染みのママの店で深酒になっている。そんな時、男女2人の酔客(中丸忠雄、横山道代)と意気投合して飲みはじめる。


翌朝、気がつくと婦人画報社の編集者の名刺があり、訪問の約束の電話をすると書いてあったが、江分利はまったく覚えていない。その2人が来ると、江分利に小説を書いてほしいと言ってきた。普段から飲み屋でくだをまいている江分利に注目していて、何か書いてもらおうとしたという。当然拒絶する江分利であったが、とりあえずやってみるかと、自分や親族のことなど書き始めるのだが。。。

1.昭和38年の会社生活
いきなりの映像は会社屋上で社員たちが合唱をしたり、バレーボールをしたり、バトミントンをしたり、ゴルフ練習をしている。地方の人たちに東京都心での会社生活って楽しんだろうなあと思わせるのが主旨だというわけではないだろう。くどいけど、最後まで出てくる。「キューポラのある街」で映るプロレタリア風な会社生活じゃあるまいか。これはよくわからん。


映画の中での江分利満の給料は基本給3万6000円で、手当その他を加えた後税金などを引かれて手取り約4万円だという。資料によれば当時の大卒初任給は平均1万8930円だという。現在の大卒初任給で約20万円~22万円程度だ。当時国鉄初乗り運賃が10円で今は130円、昭和38年の日経平均の平均値が1400円これを基準にすると、現在は当時の13倍くらい。そう考えると給料手取り約50万は越すわけだから、1週間に1回の銀座はしご飲み会はもしかしたら奥さんのクレームにならないだろう。しかも、酒会社は飲み屋向けの販路拡大接待費もあるはず。サントリーは高給なのは今も昔も同じだろうし、この水準は当時としては上級かもしれない。

その数年後、自営業の息子である自分はお年玉1万円もらった。正月あけて小学校の先生がみんないくらもらったと聞いたときに、自分が1万円と答えたら、そんなことありえないと先生がいったのは鮮明に覚えている。

2.小林桂樹
江分利満役を演じるのに小林桂樹以外の人選はありえないだろう。やっぱりピッタリだ。現在演じるなら誰なんだろう?ぴんとこない。社長シリーズの秘書課長とは違うムードでこなす。むしろ画家の山下清役の雰囲気でこなしているのかもしれない。


3.新珠三千代
江分利満の妻役は新珠三千代である。彼女はやっぱりきれいだ。この当時の東宝映画での活躍はすごい。社長シリーズで森繁久彌演じる社長がちょっと浮気しようとする芸者やホステスを演じるのだが、いい女だよね。ここでの奥さん役もさっぱりして好感を持てる。でも小林桂樹と新珠三千代はこのあと「女の中にいる他人」でもう一度夫婦役を演じる。これは若干違うムードだ。新珠三千代が女のずるさを巧みに演じている。このコンビは絶妙だ。


4.東野英治郎
小林桂樹の父親役は東野英治郎だ。それにしてもこの当時彼は至るところに出てくる。映画会社同士の協定がある中で、俳優座に属し演劇系で自由に映画会社を渡り歩く東野英治郎の活躍には驚くしかない。われわれには水戸黄門の印象が強すぎるけど、この当時彼が演じる役は泥臭い。映画「キューポラのある街」での吉永小百合の父親役で星一徹のようにちゃぶ台をひっくり返す鋳物工場の職人役がいい例だ。
会社役員になったり、会社をつぶして借金取りに追いまわされたりというこの役も適役だ。でもそんな男によく金を貸す奴がいるなあという印象を持つ。


5.多彩な出演者
この映画で目を引くのはこのあと3年後に「ウルトラマン」の隊員役になる二瓶正也と桜井浩子江分利満の同僚役で出演していることだ。子供時代にリアルで「ウルトラマン」を見た自分からすると、この2人の存在感はいまだにすごい。というより姿を見てうれしくなる。二瓶正也は多彩な才能があることで有名だったが、ここでは江分利満のお祝いをやるのにくだをまくのにいやいや聞かされて朝までつきあわされるつらい後輩を演じているのが滑稽だ。


銀座を思わせるバーを江分利満がはしご酒をする。いくつかのバーが映るが、その中で若き日の伊丹十三や作家の梶山季之山口瞳本人がお客役で映るのが御愛嬌。名画座で見れば見逃してしまったろうが、DVDだとその後怪優として有名になった塩澤ときがバーのマダム役で、後ろで飲んでいるのが山口瞳本人だとわかる。

 

コメント    この記事についてブログを書く
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 映画「サムライ」 アランドロン | トップ | 映画「モヒカン故郷へ帰る」... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

映画(日本 昭和35年~49年)」カテゴリの最新記事