映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

映画「パターソン」 ジム・ジャームッシュ&アダム・ドライバー

2017-09-03 20:29:10 | 映画(洋画:2016年以降主演男性)
映画「パターソン」を映画館で観てきました。


奇才ジム・ジャームッシュ監督の新作は何気ないバス運転手の日常を描いたものだという。「ストレンジャー・ザン・パラダイス」以来独特のムードを持つ作風のジム・ジャームッシュ監督が人気俳優アダム・ドライバーを起用してできた新作は、アメリカの地味な町で普通に暮らすバスドライバーの1週間を追ったものである。末梢神経を刺激するような過激なシーンもなく、淡々と一人の男とその家庭を描く。素敵な映画である。

ニュージャージー州パターソン市でバスの運転手をしているパターソン(アダム・ドライバー)は妻(ゴルシフテ・ファラハニ)と一匹のブルドックと暮らしている。朝6時過ぎに妻と一緒のベッドで目を覚まし、歩いてバスの車庫に行き、頭に浮かんだ詩をノートに書いた後一日の運行に出る。それぞれの乗客の様子を黙って感じながら、倉庫へ戻り、自宅に決まった時間に帰る。食事の後は犬と夜の散歩に行き、なじみのバーで一杯飲んで帰る。決まった生活が続く中で、様々な人に出会う。その月曜日から日曜日までを映画は描いていく。


決まった時間に会社に行き、同じような生活だが、バスの乗客の他愛のない会話、町で出会った詩が好きな10歳の少女やコインランドリーでラップ風に詩を作り上げる男とのふれあい、バーの酔客やマスターとのやり取りなどをつづっていく。固定した場所での話なのに、どちらかというと、様々な人との出会いからロードムービーの匂いを感じさせる。

衝撃的な事件が起きるのではと思わせるが、それらしき展開になってもおとなしく収まる。詩が好きで、ノートに手書きで書いていく。地元パターソン市出身の詩人ウィリアム・カーロス・ウィリアムズを敬愛し、自分の思いを詩にするが、妻にもそのノートを見せているわけでない。バスの運転手なのに携帯電話をもたない。束縛されたくないからだという。中東系の奥さんとどうやって知り合ったのかということは一切語られずに、2人のアツアツのムードがにじみ出る。

1.ジム・ジャームッシュ
現代の吸血鬼を描いた「オンリー・ラヴァーズ・レフトアライブ」以来の新作である。「アイ・プット・スペル・オン・ユー」が繰り返し流れる「ストレンジャー・ザン・パラダイス」で名を挙げた後は「ナイト・オン・ザ・プラネット」、工藤夕貴や永瀬正敏も出演した「ミステリートレイン」など名作を少しづつ世に出している。個人的に最も好きなのはビル・マーレイ主演の「ブロークン・フラワーズ」である。いつもながらのポーカーフェイスのビル・マーレイ演じる主人公のもとへ昔の彼女からあなたの子供があなたのもとへ訪ねていくよと言われ、昔の彼女が誰か特定できないまま旅に出るロードムービーが人をくった感じで好きだ。


今回もいつも通りのムードだけど、よくできている。出演した永瀬正敏「ジム・ジャームッシュのつくる現場は温かい。」とほめちぎる。初めて組む主演のパターソンを演じるアダム・ドライバーも絶賛だ。いい奴なんだろうね。

2.パターソンの町
ニュージャージー州にある人口14万の町だ。地図を見るとニューヨーク・マンハッタンから遠くない場所にあるけれど、古いレンガ造りの建物が多い地味な町である。美しい滝が流れる。


その場所での日本人の詩人である永瀬正敏とのやり取りが素敵だが、地元の少女との詩作談義で「water fall。。」と語り合う場面もいい感じだ。映画「コラテラル」マイルスデイヴィスの「スパニッシュキー」を聴きながらトム・クルーズの標的になったバリー・シャバカ・ヘンリー演じるマスターが営むバーがソウルフルな選曲もよくムード満載で、パターソンのように毎日通いたくなる感じがした。


コーエン兄弟やウェス・アンダーソンなどの名監督と組んで少しづつキャリアを重ねているアダム・ドライバーが何気ない普通の男を演じてすごくいい。奥さん役のイラン出身のゴルシフテ・ファラハニがかわいらしい。昭和から平成にかけて日本ではやった石原真理子のような濃い眉毛メイクがエキゾティックだけど、パターソンにやさしく寄り添うのでいい感じだ。ヒステリックでいやな女が多いアメリカ映画中ではぴか一だ。あとはブルドック犬の名演技これもすげえや!なくなったと聞き、残念


ブロークンフラワーズ
ジム・ジャームッシュ監督で一番好きな作品
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映画「ロスト・イン・パリ」ドミニク・アベル&フィオナ・ゴードン

2017-09-03 20:26:27 | 映画(フランス映画 )
映画「ロスト・イン・パリ」を映画館で観てきました。


「アイスバーグ!」「ルンバ!」で知られるベルギーの道化師夫婦ドミニク・アベルとフィオナ・ゴードンの製作・監督・脚本・主演による、夏のパリを舞台にしたコメディ映画。主人公の女性のメガネがおかしそうで気になっていたけど、なかなか渋谷で映画を見るチャンスがない。公開からしばらくたってしまった。パリセーヌ川やエッフェル塔を舞台にウェス・アンダーソンやアキ・カウリマスキの作品を連想させる色彩設計で色付け、その昔のコメデイタッチでなかなか楽しい。若干親父ギャグ的だけど単純に気楽に楽しめた。


雪深いカナダの小さな村、さえない日々を送る図書館司書フィオナ(フィオナ・ゴードン)。ある日、パリに住むおばマーサ(エマニュエル・リヴァ)から助けを求める手紙が届き、臆病者のフィオナは勇気をふり絞って旅に出る。ところがアパートにマーサの姿は見当たらず、セーヌ川に落ち所持品全てを失くす大ピンチ!おまけに風変わりなホームレスのドム(ドミニク・アベル)につきまとわれて…。いったいマーサはどこに?!(作品情報より)


主人公のフィオナがバカでかい赤いバックパックにご丁寧にカナダ国旗までつけてパリの街を歩く。慣れない地下鉄に乗って、叔母のところへ行けど、不在。そのままセーヌ川に行き、橋の上でエッフェル塔をバックに写真を撮ってもらおうとしたら、重いバックパックのせいで後ろに一回転、セーヌ川に転落してしまう。


予備知識がなくこの映画を見たので、この転落シーンに思わず大きな声で笑ってしまった。どうもこの映画合いそうだ。なぜか、セーヌ川の遊覧船に助けられるんだけど、写真を写そうとした人がスマホを走って返そうとしても、フィオナが気づかない。バックパックはセーヌ川の中だ。結局、そのバックパックはセーヌ川の岸辺のホームレスであるドムが釣り糸で引っ張り込む。その中に入っている黄色いセーターを着て、中に入っているバックにあるお金にシメシメ。飯を食いに行く。


一方、何から何までなくなってしまったフィオナは大使館に助けを求めていくが、レストランのタダ券だけもらう。行ってみると、予期せぬお金が手に入ったドムがいて、ここから2人のドタバタ劇が始める。船上レストランで2人が出会い、ドムの誘いで異様なタンゴを踊る。それから、何度もセーヌ川の底に沈んでしまうシーン、火葬場のエレベータで顔が挟まって眼鏡が壊れてしまうシーンなど、人により好き嫌いはあるかもしれない。でも、気楽に見ればいいじゃないかな?笑いの渦に後味はいい。
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