松永和紀blog

科学情報の提供、時々私事

小若順一氏らの薬事法違反(? )を日本消費者連盟が明らかに?

2010-11-11 17:15:22 | Weblog
 日本消費者連盟や食品安全・監視委員会(神山美智子・代表、日本消費者連盟内に事務局を置く)などがコア団体となって先月発足した「食の安全・市民ホットライン」。これが、面白いことになっている。

 「食の安全・市民ホットライン」は、消費者に食の安全に関する指摘をウェブ上でどんどん公表して行こうという試みのようだ。「呼びかけ」ではこう説明している。

私たちは、事故情報に限らず、表示偽装、誇大広告なども含めた民間の情報収集機関(食の安全・市民ホットライン)が必要だと考えました。
食の安全・市民ホットラインでは、一般の方からメールやFAXなどで情報を寄せていただき、その情報をデータベース化するとともに、事業者名や商品名を記号化した上で、ホームページに掲載します。また必要があると判断した場合は、事業者への警告、行政への法的措置要求などの行動をとることも予定しています。重大・緊急と判断した場合は、個別企業名、商品名の公表もします。


 一見よさそうに見えるが、それは食品の難しさを知らない人の言い分だろう。食品業界の人ならよく御存知のように、企業に消費者から寄せられるクレームのほとんどは、消費者の勘違いか知識不足によるものだ。そんなものがいちいち公表されるようになったら、企業活動は滞ってしまう。企業に責任のないものまで消費者からの情報としてデータベース化され、企業名まで出されたら、企業だって法廷で争わざるを得ないだろう。

 実際に、「スーパーマーケットで、いつも国産の玉ねぎを山積みしている場所から何も考えずに商品をとりかごに入れて購入し、レシートを見たらアメリカ産だった。不誠実だ」というような情報が載っている。もし、アメリカ産を国産と表示して売っていたら問題だが、そこは分からない。これでは、いちゃもんをつけているにすぎない。

 私の知人の中には「これは、新手の総会屋の手口だね」と言う人までいた。興味深いことに、先月23日に「食の安全・市民ホットライン」運営委員会が開いたシンポジウムで、日本消費者連盟の一人が、次のように発言している。「私たちのやっている活動が、企業ゴロのような、単なる何か追及するだけの団体ではない、そういうことをしらせていくことが重要だと思いました。そのための宣伝の仕方、実際の活動を通してしっかりと証明していくことが大事だと思います」。


 さて、「食の安全・市民ホットライン」はこれから、どのように情報の質を判断し、なにをデータベース化しウェブに掲載して行くのか? 興味津々で見ていたら、驚くべきことが起きた。皆さんからの不具合情報 の11月8日付の情報を見てほしい。

不具合の種類・表示不適/食品(料理)名・無添加白だし/ブランド名・MKテイスト/企業(店)名・MKテイスト(SとKのA)/不具合の内容・「無添加」「ミネラル」の表示と、病気の改善などの表示。このだしを摂取すると躁鬱病が改善するかのような薬事法に抵触しかねない売り場づくりがされている。また、ミネラルが豊富かのような表現も好ましくない。これにより、さらなる健康危害が出る恐れがある。


 この商品は、間違いなくこれだろう。
 このサイトは、「安全すたいるオンラインショップ」で、月刊誌『食品と暮らしの安全』の付録誌『安全すたいる』で扱っている商品の一部を販売している。このオンラインショップのページから、「月刊誌「食品と暮らしの安全」年間購読について、にリンクし、そのページで「食品と暮らしの安全」最新号(2010年11月号)の特集として「蕎麦で躁うつ病が改善
」を紹介し、さらに記事詳細にリンクしてゆく、という仕組み。記事詳細では、次のように紹介している。

蕎麦に海苔をかけ、『無添加白だし』つゆで食べ、蕎麦湯を飲む、
こんな蕎麦食事療法モニターを募集して2ヵ月。
モニターの3人の躁うつ症状がかなりよくなりました。
カルシウムが不足すれば神経過敏に、
マグネシウムが不足すれば神経・精神障害に、
鉄が不足すれば疲れやすくなり、頭痛も起こります。
何も考えずに現代食を食べていると、
主要3ミネラル不足で心身の調子が悪くなる確率は、88%以上。
現代食のミネラル不足によって生じる心身の異常を
「新型栄養失調」と名づけました。


 市民団体で不安を煽り、会社で買わせる。この“つくり”の問題点は、「食の安全・市民ホットライン」が掲載した情報が指摘する通り。
 「安全すたいるオンラインショップ」店主は、「(株)食品と暮らしの安全 代表取締役 小若順一」氏で、小若氏は、月刊誌「食品と暮らしの安全」を発行する「食品と暮らしの安全基金」の代表でもある。実に巧妙な足掛けだ。そして、ここからが興味深いのだが、小若氏の出身は日本消費者連盟である。 

 市民団体「食品と暮らしの安全基金」は、これまでにも「アスペルガー症候群が「『無添加白だし(三合わせ)』(天然ダシ)で劇的に回復する」というような情報を流し、一方で「(株)食品と暮らしの安全」が『無添加白だし(三合わせ)』(天然ダシ)を販売するという悪質な商法を繰り広げてきた。

 小若氏は、昨年、ある地方の消費者団体に招かれ講演した時に、ちまたにある食品の悪口をさんざん言った後に、この商品を出して「こんなにいい」と宣伝したそうだ。消費者団体もさすがに「これは、まずい」と気付き、参加者からも後で文句が出た。その消費者団体は今年、憑き物が落ちたように唐木英明・東大名誉教授や畝山智香子・国立医薬品食品衛生研究所研究員などを招き講演会を開催している。

 でも、官庁はこの商法に手を出せなかった。ところが、消費者が「食の安全・市民ホットライン」に情報を掲載させた。もし、ホットラインが本当に本気なら、消費者がどしどし情報を寄せれば「必要があると判断した場合は、事業者への警告、行政への法的措置要求などの行動をとることも予定しています。重大・緊急と判断した場合は、個別企業名、商品名の公表もします」になるかも。神山美智子さん、本気になって小若商法を追及してください! 十分に重大、緊急です!
 それにしても、日本消費者連盟と小若氏の関連を逆手にとって情報を投稿し掲載させた消費者さん、すごいです。これが、本物の消費者力、かも。

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15 コメント

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ミネラル (mimon)
2010-11-12 03:47:59
面白いサイトをご紹介いただき、ありがとうございます。
最近、ミネラルは積極的に摂取して、有害金属をデトックスしようとか、生物の恒常性を無視した食品が多いですね。身体の方は、そっちの都合で吸収したり、排出したり、貯め込んだりしているのですけれども。
それに、金属イオンも色々呼び名を変えられまして、例えば、セレンが重金属(密度も低いし、本当の金属ではない)に仲間入りしたり、必須微量ミネラルだったり、好き勝手しています。

リンク先の「蕎麦で躁うつ病が改善
」は、見出しが不適切です。
私は、浅学にして、双極性鬱病に効果のあるミネラルは、炭酸リチウム剤(品名:リーマス)しか、思いあたりません。
もちろん、リチウムは、血中の有効濃度と中毒危険濃度の差が小さいので、医師の管理のもと、血液検査をしながら投与量を調整する必要がありますから、気安く「健康食品」に添加できるような物ではありません。
それに、躁状態と鬱状態の繰返し周期は、人によっては年の単位ですから、3人だけのモニタで2箇月観察しても、何もわかりません。モニタの対象とした人は、病気ではなく、単なる「気分屋さん」が落ち着いた「気がした」だけにすぎないのでしょう。

「ケンコーコム」のサイトあたり、警戒すべき表示が多く見受けられますので、そのうち、使わせてもらうかもしれません。
小若順一講演会 (雪兎)
2010-11-12 13:04:26
昨年、小若順一の講演会に乗り込んでどやしつけたことがあります。ご参考までに。

http://d.hatena.ne.jp/usagi-snowrabbit/20100612/1276350018

ちなみに私自身、確定診断には至っていないものの、発達障害の専門医を受診している身である事を申し添えておきます。
訂正 (雪兎)
2010-11-12 15:58:24
昨年ではなく、今年の6月でした。
参考文献?です (PALU)
2010-11-15 15:39:41
たまたま小若氏の著書を見かけた覚えがありましたので、ご参考までに。

http://www.sangokan.com/books/978-4-88320-491-5.html

タイトルでは分かりにくいのですが、中身は「無添加白だし」賛美的であったと記憶しています。
こういう、いわゆるかつてはバイブル本と言われていたもの(まじめな宗教関係者からのクレームで、今はそういう呼び方はしないそうですが……)、表現の自由とトンデモの境界線はほんとうに難しいですね。

なお、発行元はかの「悪魔の新農薬ネオニコチノイド」でみつばちブームを引き起こしたところと同じです。
消費者団体となんとかは紙一重? (UEUE)
2010-11-30 13:45:24
日本消費者連盟は彼が今こんなことをしていると知っているのでしょうか?知らないわけ無いですね。
私は健康食品の業界にいたので日本消費者連盟とか食の安全監視市民委員会とかといった団体のことは良く覚えています。
広告表現などでよく出版社や業者に質問状なんかを出していたところだったかと記憶しています。
当時は正当性があるし、こういったものが業界には必要かとも思ったので、それ程悪い印象もありませんでしたが、このページを見て、改めて疑問に思うところが多い団体なんだなと思います。
ちなみに私がここに到達したのは息子が3年前にアスペルガーだと診断されたので、暇なときに関連ページを見に行くようになった為です。雪兎さんという方のブログ経由です。それにしてもまったく世の中狭いものです。

改めて少し関連団体を見てみたのですが、ひどいものだったのだなと感じます。
子若さんの出身である日本消費者連盟もその関連機関である食の安全監視市民委員会の神山美智子代表も(あるいは主婦連合会もなのでしょうか…)まず他人の世話よりも自分の身内のことを何とかしなければいけませんね。
でも、まさか、もしかしたら皆さん確信犯なのでしょうか? 他にもこんな組織と関わってたりして…。まさか新手の団体商法?
これが出身団体に放置されるようだと、皆さん政治屋さんと法律屋さんの集まりではないかと、とてもいやな感じがします。まあ、世の中そんなものかもしれませんが…。神山さんも知らないわけ無いんだから監視市民団体のページにそんな団体のリンクなんか張らないでくださいよね(協賛団体?)。たいへん恥ずかしいことですよ。

ところで、皮肉をこめて何か行動を起したいという暇な人がいるというならば、遠回りな事をしなくても、日本消費者連盟や食の安全監視市民委員会等に、「協賛も含めてこの団体と関わりがあるのか」と「今後もこのような団体を放置するのか」等の聞きたいことを「公開質問状」として送り、内容をインターネットにアップするなどの処置が有効かもしれません。(書式見本は各団体ホームページにあります)これは彼らが活動の基本にしていることであり、後々まで記録がネット上で公開される為にいろいろな業者が嫌がっていたことですが、なるほど、頭を冷やしてもらうには有効なことのようにも思います。
Wikipedia (雪兎)
2010-12-04 22:48:47
ところで、小若順一に関するWikipediaの記述が面白いことになっています。これでは食の脅威と戦うスーパーヒーローぢゃないか?
Unknown (Gloria)
2010-12-08 21:27:20
日消連や食の安全・監視市民委員会は、意見や活動報告のページ↓を見る限り、「健康食品」に対しては一貫して批判的な姿勢をとってきたと思います。
http://www.nishoren.org/statement/statement-top.html
http://www.fswatch.org/activities.htm
だから子若とかいう「出身者」の商品についての不具合の情報がホットラインに掲載されることは別に面白いことではなく、当たり前のことなのではないかと思います。(万が一これまでの主張が「偽装」だったらそれはたいへん「面白い」ですが)
むしろ、一般加工食品の「無添加」とか「保存料不使用」とかの情報が山のように掲載されるようになるかどうかが、これらの団体がまともかどうかの分かれ目になるのではないでしょうか。(その場合は完全な路線変更になるわけですから、もしそうなったらすごいことかもしれません)
対処されてますね (UEUE)
2011-01-14 11:40:25
その後行政機関への連絡等対処をされていますね。あまり気持ちの良い作業でもなかったのではないでしょうか。まったく恐れ入ります。
でも、公開された埼玉県の文書に実名が出てしまっていますね。昔馴染みのよしみでこれは消してあげてはいかがでしょうか。ここまでやればもう十分では…。
もっとも、この段階でHP上実名公表が無いということは、今後は余程のことが無い限りは業者の実名が公表されることは無いのでしょう。
ところで、埼玉県の文書中に書かれている「調味料は明らかに食品であるから薬事法上は問題があるとは言えない」という旨の見解は問題があります。調味料やお菓子の部類は昔は明らか食品として46通知の中にあげられていましたが、今は記述が削除されていたと思います。○ッカのレモン汁(調味料)などはその為にかなり以前に規制を受けたはず。一定の意図を持って加工された食品でそれが通るのなら特保の制度はあまりいらないでしょう。最新の資料を購入する予算をもらいましょう。
なんだか… (UEUE)
2011-02-02 12:44:51
その後なんとなく暇な時になるとこの団体のHPを見たりしているのですが、最近はこの団体、いかがなものかと思います。
消費者からの気軽な問合せ窓口としての存在意義というものは確かにあるのかもしれませんが、2011年1月の冷凍食品の苦情対応については、明らかに無責任行き過ぎの感がいなめません。
この世には悪質な業者が数多く存在するように、タチの悪いお方もいるものです。
相談者がうそや勘違いをしていた場合に結果として業者にかけた迷惑に対して、神山代表は「私は知りません、関係ありません」で通されるのでしょうか?
今回のケースが悪質なケースだといいたいのではなく、それが例えば競合する会社のやらせや嫌がらせだったとしてもこのような対応をされるのであれば、さすがにいかがなものでしょうか?
今回はいかなる基準によるものなのか実名公表もしているようですし、以前のコメントにて「感心」した部分については対応の不公平感が否めませんので撤回させていただきます。
「食の不安」を無意味にあおりたてるだけで”食の安全”や”消費者問題”に正面から取り組んでいるとは思えません。
無実の可能性もある他人の名誉については一片の配慮も出来ない、業者に対しても消費者に対しても著しく公平性を欠いた自称消費者団体かと思われます。
Unknown (通りすがりですが)
2011-09-11 04:30:56
トピ主さん、初めまして。
ゲンダイネット掲載記事文中の、小若氏のフルネームでググッたところ、こちらのサイトがヒットしました。やはりゲンダイは最初から結論ありきの記事で、中立的公正な観点ではなく、むしろ不安商法の間接的支援をしているクズメディアだということがよく分りました(週刊ポストとの冷静な姿勢と異なり、煽る報道を続ける講談社週刊現代と同様の姿勢)。

確かに、福島原発事故に起因する放射性物質拡散問題は注視しなくてはいけません。しかし、その報道はあくまでも政治的動機や出版社の私的利益追求のためであってはいけないはずです。それは言論の自由を超えた、一種の自然権としての人権侵害ではないでしょうか。できましたら、以下のゲンダイネット当該記事についても取り上げていただきたく、お願い申し上げます。

放射能放出なんと1.5京ベクレル 日本の魚本当に食べても安全なのか?
http://gendai.net/articles/view/syakai/132574