TOKIDOKI 日記

日々のなかで、「へぇ~」「ふぅ~ん」と思った、
私につながるステキなコトやモノ、そしてヒトたちの記録です。

ウォールデン

2009-07-23 | 

いまから100年以上も前に、H・D・ソローによって書かれた『ウォールデン・森の生活』は、現代においても、いや現代においてこそ読むべき本の一冊といえる素晴らしい内容です。けれど、この本を手にし読み進んでいくと、多くの人がその難解さと退屈さに途中で投げ出してしまうという本でもあって、かくいう私もそのひとりで、何度か投げ出してはまた読んでといううちに、やっと本の真価を見出した次第です。

そして今回ここに「ウォールデン」のことを書いておこうと思ったのは、久しぶりに本屋で買った小説、ポール・オースターの「幽霊たち」のなかに、この本が小道具の一つとして登場したからなのです。登場人物の一人が「ウォールデン」を読んでいることで、もう一人の登場人物もたまたま同じ本を買って読むことになるのですが、私にとっては、オースターの小説に「ウォールデン」が出てきたのはちょっとした驚きでした。

オースターは、「ウォールデン」について、『「ウォールデン」の難解さには定評がある。読書経験豊かな、洗練された読者にとっても厄介な本である。ほかでもない、あのエマソン(ソローの親友といえる詩人)でさえ、ソローを読んでいると不安で惨めな気分になってくる、と日記に記している。』こう述べているんですね。

で、「幽霊たち」の登場人物の一人が「ウォールデン」と格闘する様子を描いていて、それには、際限なく無駄話がつづき、退屈な言葉が並ぶ本、途中まで読んで気がつくと頭には何も残っていない。そこでもう一度最初から読み直す。すると、『書物はそれが書かれたときと同じ慎重さと冷静さとをもって読まなければならない』この一文にいきあたり、じっくり読まなければと思い、これによってある程度の成果を挙げることになります。

「ウォールデン」を読み始めた人の多くが陥るワナ? そんなところが描かれていて、私にとっては偶然にも、読みかけの「ウォールデン」を再び読みだすきっかけになりました。偶然は必然なりって、ほんとうですね。

さて、本の中の登場人物は、あきらめずに「ウォールデン」を再読するのですが、やがて本を投げ出してしまいます。オースターはそこで、『この本が要求している通りの精神でそれを読むだけの忍耐を見出したなら、彼の人生全体が変わりはじめるはずだということを、少しずつ少しずつ、彼の状況について、彼のかかわるあらゆるものについて、すべてを把握するにいたるだろう。』そう書いています。
ストーリー全体からすると、わずか2ページ足らずの文章のなかに書かれた「ウォールデン」についての記述ですが、これだけでもどれほど内容の濃い本であるかがわかります。

それでも、オースターの「幽霊たち」に、なぜ「ウォールデン」が出てきたのか、それが謎です。ストーリーの展開とは、これといった関わりがあるとは思えないし、またそんなふうに読者を考えさせるオースターという作家が、はなはだ魅力的であるということに加え、どこかストイックで、人間の洞察力に優れた作家であり、また詩人であることも、そうなのかなと思います。
まぁ、どちらにしろ数少ない好きな作家の本に「ウォールデン」が出てきて、それがリンクしていたというのを知り、なんかうれしい発見でした

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