朝から一日雨が降っている。悲しくなる雨だ。
昼前、いつもと違う、聞いたことのない泣き声で犬が啼いていた。私は、出掛けようとして、駐車場へ歩いていった。このあたりの人々に愛されているノラ犬のチロが、めずらしく吠えながら走っていた。ワゴン車が1台停まっていて、傍に檻があって、成犬が4匹入っている。見覚えのある顔がいた。ちいさな箱に子犬も2匹はいっている。これはチロの子だ。男の人が3人、先に輪がついた棒を持っている。犬を捕まえにきたんだ。私の心臓もドキドキした。彼らはチロを捕まえようとしていた。邪魔したらおこられそうだし、気にはなるしで、私は少しの間ウロウロしていたけれど、車で立ち去った。どうかうまく逃げてくれよ、と祈りながら。
可哀想だけど仕方がない。ここ1,2年のうちに、Gさん所有の駐車場で野良犬が増えていた。親子3代か4代の血族である。2ヶ月くらい前、チロのムスメが、駐車場のそばの空き地で、6匹、子を産んだ。Gさん、Sさん、私で、「どうする?ほおっておけないよねえ。これ以上ふえたら困るしねえ」と話していた。2週間前のこと、Gさん、意を決して、「処置するなら今しかない」と、4匹捕まえて公園にこっそりおいてきたのだ。何故4匹? 優しいGさんは1匹のこしてやったのである。本当は6匹いたのを知らなかったわけだ。で、2匹はその後も駐車場で昼ねしていた。まだ子供で、車を出すとき轢きはしないかと気になっていた。今日の捕獲騒動でどうなったか、知らない。
チロも何処かで子を産んでいた。ムスメの子供達が2匹に減ったからか、チロも駐車場に我が子を、最近連れてきた。何匹いたのかわからないが、今日見たのはこの子達だ。
ノラに餌をやってはいけないと、皆わかってはいる。無責任なやさしさの為、Gさんはとても迷惑していた。Gさんがやさしいから、犬がここをネグラにしてしまったのである。Gさんも近所の人たちも、誰一人追っ払う人はいなかった。黙認していた。私もその一人。Gさん、本当に気の毒だった。餌をやっているわけでもないのに、手をよごさなければいけなかったのだから。
犬達に餌をやってた人、今日の事件、どう見ただろう。悲しい出来事だった。