オオ・マイブッダ ~不良家改メ~

雑記。
元 初代不良家

不在の自由

2017-04-23 12:31:18 | よその国
ゴギョ。朝刊がドアに押しこまれる音で夢は途切れた。長い間つづいていたようだ。
「この列車はどこに向かっているのですか」「この船はどこに着くんですか」・・・ひたすらたずねている。だるい単純なリフレィン。
アンサーはない。空しい時間に「昭和ふらふら丸」は行先不明に困惑するばかりだった。どこかに進んでいる気配はなかった。

あんよが、というよりからだ全体が重たい。ふとんに沈んでいく。
地下鉄に乗るときに「さて、地球にめりこむかぁ」なんて言い回しをする性悪性格だ。その「めりこんじまう」感。
そういえばきのうはさわやか印の青空だった。
よーし。およそ半年ぶりにシーツを洗濯した。ふとんだって天日干しした。なのに。
眠りのなかで「よこしまな夢、あっちに行け」とつぶやいていた。

沈夢?とでもいおうか。わが脳天の海馬関係はどうなっているのか。ぼんやりアタマで夢判断をしてみる。
わかった。前日に配られた老朽マンションの管理規約を読んでむかっとしたせいだ。
15年ほど住んでいるが、読んだには始めてだった。
ー入居者が14日以上留守にするときは長期不在届を提出するものとする。
なむ。そら大変だ。これって管理されてるってこったろう。
でも、誰がどうやって<不在の自由>を規制するのかい?罰則はどうなんだ。愚かで空疎なクソ規定。


近所で花屋をやっている住人にグチってみた。
「そうね。これって孤独死は困るとする建て前でしょ」気にすることはないと注釈してくれた。にしても面妖な。
この数年、こっちは「よその国に14日以上スティ」の常習犯なのだ。申告制とは恐れ入ったハナシだ。ざけんなの思いが沈夢をいざなったようだ。
孤独死禁止!よけいなお世話だ。

いちいち反応するほどアホではないけれど、午前中にはひいき筋の旅行屋のカウンターに坐っていた。<不在の自由>を主張せねば気がすまない。
担当デスクの高井青年がいう。
「安いチケットがあります。きょう現金払いだと前回の値段より15%ほどお安くなります」
「ほー、安井さんだね、高井さん」
「・・・・」

「座席指定はどうしますか」
「運ちゃんの隣りの席」
「・・・あのー、これ飛行機ですよ」
「いいからいいから「
「パイロットの隣りですか」
「そ。ダメ元で指定してみてよ。申し込むのだけは自由でしょ」
「・・・」

旅好き、というより旅クレージー。出張のことをキザに「わらじを履く」と呼ぶB級のメディア仕事をしていた。
わらじ仕事にはいつだって強欲に手を挙げた。二ホン列島を気流のようにふららふらら、うごめいていた。
40代で会社勤めをやめてフリーになったのは、国内わらじの卒業でもあった。
それからの羅針盤はよその国に向かった。周回遅れのバックパッカーを自認した。ろくに外国語がしゃべれないくせに。

よその国ではちょこって仕事にした。それよりもなによりも幸不幸があった。
ラッキーはパートナーの紗羅がバイヤーとなって外国ビジネス中心になったことだ。外国に出かけて箱根ガラスの森美術館で扱うガラスを買い付ける彼女のカバン持ち兼用心棒心得ライフ20年。
アンラッキーの極みは紗羅の病死。それからは・・・ひたすらセンチメンタルジャーニーのわらじとなった。およそ3週間単位の。
安い航空券さえあれば、あとの費用面はあっち暮らしに馴れているので東京独居ライフと同レベルだ。

なんとなく起床、いつものように朝刊を読み、粗朝食のオカズにはテレビをながめ・・・こんな日常をパチン!
朝っぱらから情報の海に漂流するのは、これを苦界とするひとりだ。
日々のニュースなんぞくたばりやがれ。それよりも情報ゼロの異空間でもそもそ。昭和残侠にとってパラダイスなのだ。

♪行かなくちゃ 君に会いに行かなくちゃ 井上陽水の唄を背中にまとって、ビンボーわらじはいつ終幕になるんだろう。
ーおもたい夢は、こんなあんなを、不在の自由の制限を暗示していたんだろうか。だとしたら不幸というよりどんづまりの奈落。







ジャンル:
ウェブログ
コメント   この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
« あ々、北の国 | トップ | 一山百文の遠吠え »

コメントを投稿


コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。

あわせて読む

トラックバック

この記事のトラックバック  Ping-URL
  • 30日以上前の記事に対するトラックバックは受け取らないよう設定されております。
  • 送信元の記事内容が半角英数のみのトラックバックは受け取らないよう設定されております。
  • このブログへのリンクがない記事からのトラックバックは受け取らないよう設定されております。
  • ※ブログ管理者のみ、編集画面で設定の変更が可能です。