オオ・マイブッダ ~不良家改メ~

雑記。
元 初代不良家

  僧衣で消えた辻参謀は・・・

2017-05-05 21:54:50 | 天下大変
B級メディアで外国の旅ものをせっせと書き流していた時期がある。
いい加減なおもしろネタがメインで、海外ものはまだ珍しい時代だったのでそれでもそこそこ通用していた。
韓国で青年誌を刊行する企画に編集スタッフとして参画していた。ソウルに往復しての出稼ぎだ。

このときは泡食った。ライバル誌が「日本人が観光ビザで仕事をしている。不法就労だ」と当局に密告したのであわてて逃げ帰った。
拘束寸前の逃亡帰国は、とてもスリルがあって仲間に自慢した。
トラブル好きな性分の困ったちゃんであった。

タイの木材ビジネスマンが、カンボジア国境の山中で隠居しているポルポトの隠れ家の近くに行くという。
「連れてってよ」虐殺者ポルポトにインタビューして「おいしい仕事」にしようか。
複数の検問所で自動小銃を突き付けられたが、赤いパスポートは役に立つお守りになった。

結果は不発だった。粗末な海上レストランで同行者たちと食事していると、タイの王室を構成するおっさんがニヤリいった。
「ほら、あいつがポルポトの護衛隊長さ。取材を申し込んだら」楽しそうに笑いながらけしかけた。
視線を向けると黒光りする顔がにらむ。テーブルの上の黒光りするピストルもにらんでいた。目ぢからで負けた。
同行者たちのニヤリニヤリも本気モードにブレーキをかけた。
ポルポトの死を外電で知る1年前だった。

ラオスの首都ビエンチャン。タイとの国境になるメコン河を小舟で渡った。
辻正信という参議院議員が僧衣に身をやつしてラオスに潜入、この地で行方不明になっている。この男は曲者で、戦時中は「魔の参謀」として悪名高い存在だった。

中国戦線からインドシナ全域で悪辣非道をやらかしている戦犯だ。敗戦後は中国に逃げて{蒋介石軍のスパイだった?}、1950年に戦犯指定が解除されると臆面もなく表舞台に登場。果ては人気者に成り上がり、あろうことか国会議員に。

1961年、僧侶に化けたその男がラオスのジャングルの彼方に消えたのだ。
「辻正信を探せ」好奇心をそそるターゲットだった。その後を追いかけてみるか。ビエンチャンでは旧国民党軍の元兵士と接触したりした。
1980年代だったからまだ話題になるテーマだったが、雑ネタ探しのついでで、あてのない宝探しのような軽いノリだった。

「作戦の神様」と呼ばれた狂気の参謀大佐。戦後はGHQから「第三次世界大戦さえ起こしかねない男」と危険視されたナゾの男。
近衛文麿首相の爆殺計画、吉田茂首相暗殺・クーデター計画の軸心メンバーでもあり・・・
そいつがラオスの未開のジャール平原に向けて出発した。しかしながらその後の消息は杳としてわからない。

「旧軍時代に隠した金塊を探しに出かけた」「CIA,あるいはイギリスの諜報機関に消された」こんな情報まで飛び交っていた伝説の張本人だった。
実はエジプトのナセル大統領の秘密の政治顧問をしている。こんな怪説まであった。
ネタの価値は十分過ぎるほどあった。

フランシス・コッポラ監督の「地獄の黙示録」が公開された当時だった。
ベトナム戦争の漆黒の闇を作品化した作品で、マーロン・ブロンドが密林の王国の支配者カーツ大佐を演じた。
辻なる元大本営参謀がインドシナ半島のどこかでおどろおどろしくカーツ大佐をやっていたとしたら・・・こんなマンガチックな妄想をたのしんだ。

 
先日、世田谷の図書館で辻正信に関した本を見つけた。どれどれ読んでみた。おやおや。新しい情報が記述されていた。
新しいといっても2005年に公開された極秘のCIA文書による新事実。「戦犯逃亡者」「生きる危険物体」はCIAによってしっかり追跡されていた。

それによると。
彼はラオス経由で北ベトナムに入り、ホーチミンと会談する。それを北京政府に手土産にして差し出す構想がであった。
事実は僧衣の辻はラオスで共産党過激派に捕らわれて地続きの中国雲南省に軟禁された。
・・・消えたのではなく毛沢東軍の一派にさらわれたのだった。従来の通説がひっくり返ったことになる。

これらは北京政府の諜報機関が把握していて、軟禁した彼をスパイに仕立てようと強要したらしい・・・いずれにせよ処分された。

「戦犯」から逃げて、国会議員の金バッジをつけた男は、そしてラオスで消えたのではなく中国・雲南省だったのだ。
こんな底深い闇を軽薄なお遊び気分で追跡したのだ。事実の凄みを知って呆然とするばかりだ。
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