異国の丘

2016-05-04 04:58:25 | 懐かしのメロディー
美空ひばり ♪異国の丘


http://blog-imgs-76.fc2.com/t/o/s/toshiichi/20150518171028770.mp3

1 今日も暮れゆく 異国の丘に
  友よ辛かろ 切なかろ
  我慢だ待ってろ 嵐が過ぎりゃ
  帰る日も来る 春が来る

2 今日も更けゆく 異国の丘に
  夢も寒かろ 冷たかろ
  泣いて笑うて 歌って耐えりゃ
  望む日が来る 朝が来る

3 今日も昨日も 異国の丘に
  重い雪空 日が薄い
  倒れちゃならない 祖国の土に
  たどりつくまで その日まで



第二次大戦の最末期、日ソ中立条約を破棄して満州に侵攻したソ連軍に日本軍は降伏しました。武装解除された日本軍将兵は、在満の民間人や当時日本国籍だった朝鮮人とともに、ソ連領内の収容所に送り込まれました。一般にこれを「シベリア抑留」と呼んでいます。

シベリア抑留というものの、収容先はシベリアだけでなく、モンゴルや北朝鮮、中央アジア、ヨーロッパロシアの各地に及んでいました。
収容者数は、約65万人というのがいちおうの定説になっていますが、実際には約107万人だったと見られています。

収容された日本人たちは、劣悪な居住環境と粗悪な食事のもと、過酷な強制労働に従事させられました。
作業は建築や土木建設、木材伐採などでしたが、ノルマが課せられ、ノルマが達成できないと、減食されたり、欠食とされたりしました。
また、定期的に共産主義教育が行われ、反・非共産主義的と見なされると、共産主義に感化された同胞からつるし上げや人民裁判、ときにはリンチを受けました。

連日の過酷な作業のため、収容期間中の死者は、収容人数の1割近い約6万人に達したとされています。
ただし、アメリカの研究者ウイリアム・ニンモの調査では、実際の死者は約34万人とされており、また約37万5000人とする調査結果もあります。収容者数を約107万人とすると、犠牲者はその3分の1以上にも達したことになります。

収容者の帰還は昭和22年(1947)から、ソ連との国交が回復する昭和31年(1956)にかけて逐次行われました。共産主義教育に反抗的だった者ほど、帰還を遅らされたと伝えられます。

抑留からの帰還者によって日本にもたらされたものがいくつもあります。前述したノルマという言葉や歌声運動などがその例ですが、『異国の丘』もその1つです。

昭和23年(1948)8月1日(8日説あり)、NHKの人気番組「のど自慢素人演芸会」に1人の復員兵が出演、みごとに鐘を打ち鳴らしました。シベリアから復員した中村耕造という人物で、歌ったのは作詞・作曲者不明の『昨日も今日も』という歌でした。

望郷の思いを切々と歌い上げるその歌にビクターが着目、佐伯孝夫の補作詞と清水保男の編曲を施したうえで、中村耕造と当時の人気歌手・竹山逸郎に歌わせてレコード化しました。
同年9月、『異国の丘』と改題されたそのレコードが発売されるや、たちまち全国に大流行、大人から子どもまで口ずさみ、NHKや各地ののど自慢大会でこれを歌う者が続出しました。

はじめはだれが作った歌か不明でしたが、やがて吉田正が名乗り出て、作詞は増田幸治、作曲は吉田正と判明しました。
吉田は昭和23年8月にはシベリアから帰還していましたが、大流行している歌が自分の歌だという実感が湧かなかったので、名乗り出るのが遅れたそうです。
昭和25年(1950)4月には増田幸治も帰還して、歌のできた経緯がさらに明らかになりました。

吉田正と増田幸治は、シベリア・ウラジオストク郊外アルチョム収容所にいっしょに収容されていました。中村耕造も同じ収容所にいたはずですが、2人の名前は記憶していなかったのでしょう。
あるとき、吉田が戦時中に作った『大興安嶺突破演習の歌』という軍歌を紹介したところ、増田がそれに『俘虜(ふりょ)の歌える』という歌詞をつけ、副題を『異国の丘』としました。
 後年、増田はそれを発表したときのようすを、次のように語っています。

「初めて異国の丘を発表したのは収容所の演芸会だった。合唱していると胸が詰まり、歌いながらみんな泣いた。これ以降、作業の行き帰りや夕方の人員点呼時に、皆が口ずさんだ。お互いをいたわり、励まし合うようになり、自分さえよければといった殺伐とした雰囲気は次第に薄れていった。シベリア最初の冬がようやく終わる昭和21年(1946)の3月ごろだった」

歌が単なる娯楽以上の力をもちうるという顕著な証拠がここにあります。

吉田はビクターから専属作曲家として迎えられ、以後数々のヒット曲を連発したことはよく知られているとおりです。


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