古文の会で、今、万葉集を読んでいる。人麻呂や額田女王の名前ぐらいは、知ってはいる。けれど、ほとんど名前だけで。しかも和歌を読んでも、こちとら基本的な素養というか、詩心がどうもチンプンなのだ。彼らの和歌もこちらを素通りしているようで、なんともなのだ。それで、万葉の頃を舞台にした小説がないものかと、近くの図書館で探して借りてきた。「天智帝をめぐる七人」杉本苑子。大化の改新は中大兄皇子が主役で、蘇我入鹿親子は悪役と思い込ませるものありて、それゆえ蘇我一族がほしいままにしていた政治を、彼らを一掃することで改新したんだと、思っていたのだ。ところがこの小説では、中大兄皇子は小賢しい狭量なものとして描かれており、蘇我入鹿を懐の広い革新的なものとして描かれているから、まったくひっくりかえされて読まされている。それはそれで、作家がそう書きたい何かがあるのだろう、と思って読み進んでいる。人物像はともあれ、その万葉の頃のありようが小説ならではこそ、よくみせてくれるのであるよ。
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