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『ヒミズ』─さよなら、映画

2011-12-28 22:06:29 | 映画(映画館)
@一ツ橋ホール(試写会)、園子温監督、2011年
夢と希望をあきらめ、深い暗闇を歩く少年と、愛だけを信じる少女の、魂の出会い。絶望だらけの世界の果てに、彼らが見たものとは─?
住田裕一(染谷将太)、茶沢景子(二階堂ふみ)、「ふつうの未来」を夢見る15歳。家を失った年配の被災者たちからリーダーとして敬われる住田が「ふつう」には見えないが、そんな彼の高潔さを見込んで、なにかと付きまとう茶沢。しかし、そんな2人の日常は、ある“事件”をきっかけに一変。衝動的に父親を殺してしまった住田は、そこからの人生を「オマケ人生」と名付け、世間の害悪となる連中を始末してゆこうと考える。
自ら未来を捨てようとする住田に、茶沢は再び光を見せられるのか─。



覚悟はしてたんだけどね、やれやれ、129分も鼻ッ面引きずり回されて。
昨年末まで恒例としていた「映画星取表」ならば、★★ってところか。にっしー(AAA西島隆弘)はいつ姿を見せるのかなァ~と、退屈して半分下を向きながらウォッチしていると、後半、ニューミュージック/J-Pop的な紋切り型の歌詞を歌うストリート・ミュージシャンとして登場。
「J-Popの構造的な欠陥をえぐる」のようなテーマで1本撮るとしたら、もうちょっとマシなものにはなったかも。まあ、そのテーマは、及ばずながら私が明日やりますけど。
どうなんでしょ、園子温(そのしおん)の前々作『愛のむきだし』が映画を超える一つの体験となるほど素晴らしかったのは、キリスト教的な愛、あるいは父性原理といった、人類の歴史と同じくらい続く大きな題材に向かって、園子温が裸になって全力でぶつかった結果であり、それはやはり当人にも「独善」という題材とかぶる資質があったゆえ、余すところなく描ききれたということもあろう。



話変わるが、『闇金ウシジマくん』の真鍋昌平氏が読み切り短編を描いたと聞き、月刊スピリッツを購入。原発事故後、福島県の郷里を離れて東京に避難した家族をあつかう、「おなじ風景」。
その話とともに、山本英夫氏とのマンガ家同士による対談が興味深い。彼が、どのような視点でマンガを作話するのかがうかがえる。

「借金を抱えちゃう債務者は、一般的に言えば魅力のない、興味を惹かない人たち。でも、人を描くにあたって、取るに足りない、つまらないのは見かけであり、どこかに面白い要素ってあるわけで、そこのところを探していく。それが見つかったとき『描ける』と思う」

「こないだ初めて『プリキュア』の映画を見て、話の構成としては、問題が発生してすぐ解決。その間に主人公の志を描くっていうのを延々繰り返す。最終的には地球を飲み込むブラックホールみたいな強大な敵と戦わなきゃいけなくて、ボロボロになっても立ち上がって、前向きな発言を繰り返すだけなんだけど、俺は5回号泣しちゃった。プリキュアガンバレ!!って。
あれを見てる世代の子たちって、あまり負担じゃない、自分に都合のいい関係性を欲しがってる。親って言うことを聞いてくれないし、面倒くさいから排除されていく。(大事なものは友達とペットなんだけど)友達も都合いいときだけで、嫌だったら無視すればいい。欲しがってるのが“お菓子”なんですよ、“主食”じゃなく。
そこにはアニメを作ってる側の都合もいっぱいある。関連商品を売るとか。その都合を(子どもに)押しつけてくるわけだから、ある意味暴力。
東日本大震災の時もいろいろ感じました。テレビではCMもなくなって津波の被害とか怖い情報ばっかりで。ツイッターでもみんな深刻な感じだった。ところが(しばらくして)バラエティ番組が始まったら、みんな急に気持ちが緩んで、なにか普通に戻る状況があった。どれだけテレビに影響されて、自分の感情を当てはめてるのかと思いました。
自分の生活の皮膚感覚よりも、与えられてる情報とか、他人のつぶやきで自分の人格を作っている。いや、作らされてる。そこにも暴力的な部分がある」

↑画像の、間引きされて捨てられるヒヨコを見る女の子と、ウシジマくんに登場する、一分一秒の間にも値段が下がっていく風俗嬢とには、共通して真鍋昌平氏の確かな視点が感じられる。
新たに始まった「生活保護くん」も過去のパターンの焼き直しにとどまり、ご本人も『闇金ウシジマくん』の終わらせ方を視野に入れ始めている模様だが、これからも彼の描くマンガを期待して待ち続けようと思った。



『愛のむきだし』は当初のロードショー公開以降にジワジワと話題を広げたと見え、パンフレットがオークションに出品されると数千円から1万円に達するような高値が付く。
主演の西島隆弘、満島ひかり両人ともグンと株を上げ、テレビに映画に注目作への出演が相次ぐ。
このデフレ不況下にあって、珍しく景気のいい話。
海外でも『スラムドッグ$ミリオネア』などのダニー・ボイル等に感じることだが、映画監督なんてのは「山師」に過ぎない。園子温は、一発当てたのだ。
『ヒミズ』を原作では指定されていない福島県の被災地でロケすることにしたのも、山師の嗅覚・功名心の類いであろう。
いまやフクシマは世界名詞だから。彼の狙いは、今回も当たったように見える。
主演の2人は、ヴェネチア映画祭のマルチェロ・マストロヤンニ賞(最優秀新人俳優賞)をWで受賞した。
しかし、「作品が受賞した」わけではないのだ。審査にあたった人びとは、園監督の独善的な世界観を、若者らしい純粋さで演じきった2人に、神風特攻隊や円谷幸吉選手、あるいは被曝の危険をかえりみず原発事故収束のために働く作業員の献身的な姿を重ね合わせたのかも分かりません。
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