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昔のエロ本

2009-07-12 17:39:26 | Bibliomania
『エロスの原風景・江戸時代~昭和50年代後半のエロ出版史』松沢呉一(ポット出版)
エロ本は遠からず消えると言っていい。そんな時代だからこそ、こんな本を出す意義もあるだろう─(著者前書きより)
誰からもかえりみられない、古いエロ本を膨大な数、私費を投じて蒐集した松沢呉一氏が、その研究成果を「日本エロスの原風景」として『実話ナックルズ』誌に連載。その19回分を、豊富なカラー図版も収録して単行本化。2800円+税と、ちと高いが、この機会を逃すと永遠に失われてしまいそうな、出版の裏面史。
江戸時代に生まれた風俗情報誌の原型─【吉原細見】。敗戦直後の日本に咲いた徒花─【カストリ雑誌】。日本初の巨乳アイドル─【オッパイ小僧】。定説を覆すソープランド史─【元祖トルコ風呂とは】などを収める。



故・永沢光雄さんの『AV女優』という本は、そのインタビュー内容の深さなどから話題を呼んだので、ご存知の方も多いでしょ。もともとは、コアマガジンから主として裏ビデオの情報を載せる雑誌として出ているビデオ・ザ・ワールド誌に連載されていた。たいへん小さな字だったので、エロ雑誌を買うとしても、なかなかそこまで目を通す人はいるまいが、案外そんなところに宝石が隠れてたりする。
たとえば最近なんかでも、メガストアHを始めとするエロマンガ雑誌はかなり誌面のテンションが下がってきているものの、読者投稿イラストに有望株が見つかったりして。コリィ寺井っていう人とか。だいたいは世に出ぬまま、姿を消す運命。ですので初期の『お尻倶楽部』誌の投稿イラストなんかも、ページごと切り取って保存してます。みうらじゅんのエロスクラップくらいのことは、オナニストなら多かれ少なかれやってるんじゃないですかね。
しかし、そういう保存してあるエロ物件を、自ら死期が迫ってくるのを察知したとき、「捨てる」以外の選択肢というのもなかなかあるまい。遺品の整理とかでそんなもの見られた日には、ねえ。古本屋に持ち込む人もほとんどいないのでわ。
この書物の著者、松沢呉一さんという人は、そうした物件の希少性、放っておけば消滅してしまうエロ本たちの貴重性にわりと早くから気づいて、見かけるたび買い込んでたのだとか。かつ、ご本人も風俗ライターをやったり、インディー出版物をあつかうタコシェショップを創業したりとかで、出版界を取り巻く事情にも通じてたので、とうとうこうして1冊の本にまとめるまでに。もちろんエロ目的として「使える」ようなネタは皆無ですが、そもそも今の40歳以下の男子たちは印刷物で「ヌく」習慣がなくなっており、出版・マスコミ・風俗にまつわる滅びゆく歴史への挽歌として、その資料価値とともに志の篤さにも静かな感慨を覚えます。
思えば、中国政府による、ウイグル自治区での同民族への迫害が報じられてますが、なんでも、ちょうど20年前に起こった天安門事件で市民が人民解放軍によって殺された、その事件そのものが中国ではタブーとなっていて、知る方法がないので、中国の若者の多くが「天安門広場で何が起こったか」を知らないという。マスコミも報じないし、事件のあらましを知っている大人たちも公然と語れば逮捕されるおそれがあるので沈黙する。ゆえに、生まれてなかった若者にとって、存在しなかったも同然のことになってしまう。
別段、松沢呉一さんの本を、自由を求めて立ち上がったが踏み潰されてしまった中国の人民に匹敵するくらい持ち上げようというつもりではないですが、印刷物として《証拠物件を残す》ということは、ときとしてたいへん尊い意味を持つ可能性もあることのように思われる。

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