和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

虚言を一切。

2010-07-26 | 短文紹介
暑苦しさは、何も夏ばかりじゃなく
政治の暑苦しさは、いかんともしがたく。

なんてはじめると、いかめしいのですが、
昨日の続きです。
岩波文庫の「日暮硯」は、信州川中嶋、
そこは、犀川・千曲川の合流地帯の平野をいい、川中島の古戦場として有名な場所。
松代藩の中心部。
そこに藩財政を立て直すべく、恩田木工が起用されるのでした。
その恩田木工が語り。

「先づ以て、殿様不如意につき、只今まで御領内の者ども、殊の外難儀致す儀に候故、此度手前勘略奉行に相成り候へば、尚以て御領分難儀にもこれあるべしと、気の毒に存ぜられ候が、先づ手前儀、向後(きょうご)虚言(うそ)を一切言はざるつもり故、申したる儀再び変替(へんがえ)致さず候間、この段兼(かね)て堅く左様相心得居り申すべく候。さて又、向後は手前と皆の者どもと肌を合せて、万事相談してくれざれば勘略も出来申さず、手前の働きばかりにては勤まらず候間、何事も心やすく、手前と相談づくにしてくれよ。これを第一、手前が皆への頼みなり。・・・」

こうして、語り始められる一部始終。
夏の暑さに、涼感を呼び覚ます読後感あり。


「今までの意趣晴しは此の時ぞ、有難き事なり、誠に闇の夜に月の出でたる心地、胸の曇りも晴れて、これより行末安楽になるべしと、悦び勇まぬ者こそなかりけれ。」


35ページほどの解説も丁寧で、こうはじまっておりました。

「本書は江戸時代中期、信州松代藩10万石真田家の家老恩田木工が、甚だしい窮乏に陥った藩財政の立直しを一任され、嘘をつかず、誠実であることを信条として改革に当たり、よくその功を成した事蹟に関する説話である。」

本文は67ページほど、暑気払いに元気がでるのでした。
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