うなぎの与三郎商店

目立たぬように、はしゃがぬように、似合わぬことは無理をせず、教育・古典・語学・芸能など。タイトルは落語「うなぎ屋」より。

生活はテクノロジー

2016-10-16 23:00:00 | 随想 Home! Sweet Home! ―家族の物語―
【生活はテクノロジー】

《プログラミング教室の説明会に出かけたこと》

 子どもの通うプログラミング教室の開講前説明会に出かけた。本当は本人と一緒に行きたかったのだけれど、ちょうど学校の中間テスト前で、やらなければならない課題が山積みになっている。このところ妻と特訓をしていたようだ。スローなペースであっても息子なりの試験対策が進行中である。

 説明会ではまだ若いプレゼンターが戦後教育の話から始めた。どうなることかとハラハラしたが、それは一瞬のことで、すぐにプログラミングの話に戻った。少し安心する。

 また、これからどんな時代がやって来るかを解説する中で、中学生の3割から4割は今はまだない職業に従事するとか何とかという話が出てきた。言われてみれば「なるほど」と心当たりがある。中学校教員だった父並びにその配偶者である母の理解を超えた仕事=予備校講師を私自身が選択しているのだから。でも、プレゼンターはそんな旧態依然の職業の話をしたかったわけではなかろう。

 説明会で提供された情報は、運営会社のホームページから得られる情報とそれほど違うわけではない。ただ、これから息子をどのような人間に預け、何を吹き込まれるのかを私なりに確認することができた。少なくともそのように思うことはできた。

 当たり前のことだが、福沢諭吉は慶應出身ではない。大隈重信も早稲田出身ではない。帝国大学を創った者も帝国大学で学んだわけではない。明治初期の小学校教員も小学校での教育・学習経験があるわけではない。パイオニアはシステムの中で生まれたわけではない。システムを創った人間がパイオニアになる。

 そう考えると、運営会社の若い創業者たちは、プログラミング教育の可能性を訴えながらも、彼ら/彼女ら自身がまだまだ発展途上にあるという当たり前のことに思い至る。後進を育成するどころか、自分自身が未知の領域へ向けてまだまだ精進しなければならない身である。

 インストラクションの最前線に学生を配置するという運営形態もツッコミどころ満載である。社会的な信用の形成過程にある、もっと具体的に言うなら不安定で未熟な、そんな人員(学生)を最前線に配置しつつ、一方で時代の趨勢を語るという会社幹部の「大胆な」知の様式は、十分に議論されてよい。

 とはいえ、私が考えているのは、可能な限り私の裁量の及ばない領域に子どもたちを置くこと。古風な言い方をすれば「かわいい子には旅をさせよ」ということになる。

 生活の基本は私並びに妻の手の内に置く。しかし、子ども(息子と娘)のすべてを自分たちの手の内に置こうとしないこと。そんなことをすれば、妻はまだしも私のような小人物のさらにミニチュアができあがるだけである。それは単に親の自己満足であり、子どもにとっては考えられる限り究極の不幸である。

 そのように考えたときのひとつの選択が、息子の興味に最も合致していると思われたプログラミング教育の機会の提供である。プログラミングに熟達させたいわけではない。それはそれでいいけれど、私が最も期待しているのは、私自身が息子を対等に見ることができるようになること、私の手の内から飛び立ち、手に負えなくなる息子を可能な限り肯定的に受け止められる親になること、である。

 息子にとってもう一人の親である妻はというと、今日は義母を連れて地元の秋祭りに出かけた。地元の祭りといっても千単位の客が集うそれなりのものである。その会場の舞台でhip-hopダンスを披露するのは、わが娘である。こちらもダンサー兼劇団員のインストラクターについて早5年。中年メタボでスローなボディの父親としては、娘が早々と私の手の内から飛び立ったことくらいすぐにわかる。

 息子についてはカッコよく「さあ、飛び立て」などと言えるが、娘については何だか寂しさばかりが先行する。結局「飛び立て」のフレーズも、子どもの飛翔を自分の手の内で完結させ、何とか、あるいはいつまでも親としての優位を保とうとする邪心が見え見えということか。

 まだ修行が足りぬ。
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