うなぎの与三郎商店

目立たぬように、はしゃがぬように、似合わぬことは無理をせず、教育・古典・語学・芸能など。タイトルは落語「うなぎ屋」より。

採用ポリシーは細部に宿る

2017-06-28 23:00:00 | 随想 職業としての予備校講師
【採用ポリシーは細部に宿る】

《模試問題をつくりながら考えたこと》

 先ほど近所のコンビニから発送した企業研修用の添削済原稿で、上半期の在宅仕事がひと区切りついた。

 年が明けてからというもの、通常の仕事の合間を縫って模試論文の添削やテキスト・模試問題作成、企業研修論文添削等の在宅仕事を引き受けてきた。教採模試論文の添削は例年のことだが、今年は特に模試問題原稿がきつかった。

 一般模試ではなく、特定自治体向けのもので、他の自治体のものならこれまで担当したことがなかったわけではない。通常は「〇〇県・教育原理分野〇題」「〇〇県・教育心理分野〇題」「〇〇県・ご当地〇題」といった形で依頼される。1回あたりの依頼は、5択程度の問題を5題程度。選択肢を25ほどつくる。

 今回、教職教養を「総合問題」として出題する自治体の問題を引き受けた。大問4題。その中に小問が各10題ほど。形式にもよるが、単純計算で5択×10小問×4大問で200ほどの選択肢をつくらなければならない。

 この自治体の問題は、本試験問題の解答解説作成作業で見かけたことがある。随分と手の込んだ問題をつくるものだと、毎度のことながら感心しては次の自治体の問題へと移ることの繰り返し。はじめは無意識だったが、ある年からハッと気づいて意識するようになった。教育心理分野で「何もそこまで」というレベルの最新のトピックを出題していたのがきっかけだった。

 原稿は、完成までにひと月近くかかった。思いのほか時間をとられた。問題をつくるだけでなく、解説も書いた。それに、これは人目にさらす商品である。他人様の文章をパクって「解説」とするわけにいかない。もちろん、問題文や選択肢もどこかの自治体のパクリ、まして市販の参考書・問題集のパクリで済ませる〔注1〕わけにはいかない。

 つくってみて思ったのは、教育委員会の問題作成担当者がどこまで報われているかということ。まさか現職教員、特に管理職がつくっているわけではなかろう。そんな暇があったら児童生徒・保護者と向き合え。まさか教育委員会事務局スタッフがつくっているわけではなかろう。ルソーがどうのこうの、地方公務員法・学習指導要領・中教審答申がどうのこうの言っている暇があったら、学校教育の条件整備に駆け回れ。

 結局、誰がつくっているのか。一般教養や専門科目も含めて、数十万、数百万単位の予算と、しかるべき人材が投入されない限り、特定の人物へのしわ寄せや外部委託を巡る不祥事〔注2〕は絶えないだろう。

 この模試原稿もつい昨日、編集部へ送信したばかりである。きっと徹底的に校正され、ずたずた〔注3〕になって戻ってくるに違いない。反吐が出るほどの思いで仕上げた原稿に誇りをもっているとはいえ、傍目からは何かと穴があるだろうから。

 例の原稿を最終的に送信する数日前に、別の自治体の問題作成を別ルートから打診された。至急とのこと。依頼してきた職員から、昨年は〇〇がつくっていた、と幹部職員の名前を告げられた。昨年度版を参考に、数時間でつくり、解答解説を添付して翌日には送信した。複雑な気持ちになった。

 これは実際の本試験問題の質の違いによるものであって、本試験に見合う模試問題がつくられるというだけのこと。自治体のレベルの違いは、採用試験問題からもうかがえる。採用ポリシーが細部に宿る、といったところか。


1.「最高傑作の本試験問題、熱意溢れる外部委託」2015-08-19
2.注1の記事参照。
3.「テキストの「中立性」確保」2013-11-01
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