うなぎの与三郎商店

目立たぬように、はしゃがぬように、似合わぬことは無理をせず、教育・古典・語学・芸能など。タイトルは落語「うなぎ屋」より。

ドンビキーノ論作文〜教採論作文を巡る放談〜

2017-05-02 23:15:00 | 教育 聖と俗の教育随想
【ドンビキーノ論作文〜教採論作文を巡る放談】

《教員採用試験の「小論文」「論作文」に関する放談》

課題:児童生徒に規範意識を身に付けさせるために、教師としてどのような指導を行っていくか。具体的に述べなさい。

答案:
 児童(生徒)の規範意識の問題が学校教育の重要な課題になるのは、いじめや不登校問題が相変わらず深刻であり、それに加えてインターネットの普及がこうした事態を助長しているからである。また近年は加害・被害の関係が固定化せず、どの児童(生徒)も被害者だけでなく容易に加害者になり得るという新たな問題も生じている。
 こうした問題状況を改善・克服し、児童(生徒)達に規範意識を育むために、私は○○〔学校種〕教師として、児童(生徒)達が互いに認め合い、言葉で伝え合う活動を重視する。また、法やきまりの意味や意義を考え、理解を深める取組を行う。
 まず「認め合い、伝え合い」の活動について、私は授業を児童(生徒)中心の「主体的・対話的」なものにするよう努める。具体的には、調べる・考える・話し合う・発表するという4つの段階を踏んだ授業づくりを進めていく。このとき、調べたことや自分の考えたことを文章にしてまとめること、他の人の意見に自分の意見・感想を述べることの2点に配慮する。それが言葉を磨き、自他を尊重していく上での基本になると考えるからである。
 次に「意味や意義を考える」活動について、私は道徳科や学級活動等を要の時間と位置づけ、児童(生徒)が法やきまりを知り、その意味・意義を考え、理解する機会を設けていく。特に、自分たちで学級のきまりや個人の努力目標をつくり、守り、反省する取組を重視する。目指すのは、日常的な実践を通して、法やきまりが個人を縛るものではなく、個人が集団の中でより生き生きと活動するための手段であることを理解させることである。
 こうした取組を通して、児童(生徒)一人ひとりが自他を重んじ、健全な規範意識を持ちつつ自己実現できるよう指導・支援していく。
 このように私は、理解と実践を組み合わせた指導によって児童(生徒)規範意識を育んでいく。さらに、学校内及び家庭との連携・分担・協働の意義を理解し、組織の一員としての自覚を持ち、学校と家庭が一体となった指導体制に貢献できるよう、日々努力していく所存である。

受講生放談:A・B共女性
A:この人の「規範意識」って、何なんだろうね。
B:そうそう、言葉の定義みたいなのがないまま話がどんどん進んじゃってる。
A:「法やきまりの意味や意義」を考えるとあるから、それが規範なのかな。
B:「法やきまり」と「規範」って、ちょっと違うような気がする。少なくとも簡単に置き換えられるようなものじゃないと思うんだけど。
A:今、広辞苑で「規範」を引いたら「のっとるべき規則。判断・評価または行為などの拠るべき手本・基準」とか書いてある……。
B:……まあ、いずれにしても「規範」を「法やきまり」に置き換えちゃったら、勝手に問題を変えたことになるんじゃないかな。「法やきまりを守らせるためにどんな指導を行うか」みたいに。

A:あとね、「主体的・対話的」な授業にするって、新しい指導要領のキーワードを繰り返しただけだよね。
B:そうそう、この前の予備校の授業で聞いたよね、この夏は「主体的・対話的で深い学び」が出ますよ、って。
A:授業中に配られたプリントにもあった。「主体的・なんちゃら的で深い学び」のなんちゃらを答えなさいって。
B:そういえば、「アクティブラーニング」って指導要領に載ってないんだってね。
A:うん。それ、ちょっとびっくりだった。
B:しかも、ずっと前の授業では「主体的・協働的」な学びがどうのこうのとか言ってたような気もする。
A:それ覚えてる。「キョードー」って漢字がいっぱい出てきて困っちゃった。
B:特別支援の「キョードー学習」って、共産主義の「キョー」だよね。
A:ふつう、そんなたとえ方するかな。まあ、使い分けがめんどくさいのは確かだよね。
B:違いをちゃんと説明してほしいよ。

A:それからこの人、「具体的には」って書いときながら「調べる・考える・話し合う・発表するという4つの段階を踏んだ授業づくり」だって。
B:具体的なイメージが湧かない。
A:やっぱり言葉が空回りしてる。その割に話だけはどんどん進んじゃう。
B:この人、普通の会話って大丈夫なのかな。
A:そこまで言わなくても……。
B:でもさ、わかんない言葉を空回りさせるぐらいなら、細かすぎるぐらいのこと書いた方がまだ教員に向いていると思うよ。
A:そうかな。私だったら、グダグダ書いて終わっちゃいそう。
B:前の模試の論文でそれやっちゃった。そしたら「具体例が長すぎ」とかチェックが入った。
A:「直接話法を使うな」ってのもよく言われるね。
B:でも「この取組は実質1コマで終わる話です」ってコメントもひどくない? 言ってることわかるけど、何か嫌味っぽくて腹が立つ。

A:「目指すのは、日常的な実践を通して、法やきまりが個人を縛るものではなく、個人が集団の中でより生き生きと活動するための手段であることを理解させることである」って、ちょっと私には書けないな。
B:そこそこ。私もそれ思った。何というのかな、こういうのって採用試験の論文で書いちゃいけない気がする。何かまずいよ。
A:いや、こんなレベルの高いことは書けないって意味なんだけど……。
B:ああ、それわかる。でもね、そもそもこんなことを堂々と書く人って、ちょっとヤバくない?
A:どういうこと?
B:何かさぁ、がっちり勉強しましたぁ、って感じ。
A:何それ。
B:だからさぁ、こんなこと、こんな人に言われたら、私なんか「はぁ」としか答えられないじゃん。
A:……。
B:ほら、正論ばかりで話が広がらないタイプ。避けたい上司、扱いにくい部下ナンバーワンみたいな。
A:ますますナゾなんだけど……。

A:「さらに、学校内及び家庭との連携・分担・協働の意義を理解し、組織の一員としての自覚を持ち、学校と家庭が一体となった指導体制に貢献できるよう、日々努力していく所存である」って、突然「家庭」が出てきたよ。
B:確かに、「家庭」の話なんか一つも出てこなかったのに、いきなり「家庭との連携」って言われてもね。
A:「連携・分担・協働」って、ふつう使わない言葉だよね。しかも「所存」だよ、「所存」。
B:うん。言いたいことはわかるんだけどね。わかるんだけど、それ使っちゃまずいでしょ。
A:「まずい」って、どういうこと?
B:何かウケるというか、引いちゃうというか。
A:引く?
B:だってさぁ、さっきも言ったけど、「部下にしたくないナンバーワン」みたいな、「めんどくさいやつ」みたいな。私が人事なら嫌だね。
A:じゃあ、どんなのがいいの?
B:「がんばりま〜す」みたいな。
A:それこそ、まずいんじゃない?
B:いや、いいの。何かこんな答案見てると、「がんばりま〜す」でいいような気がしてくる。
A:じゃあ、論文の練習はしないってこと?
B:しないわけじゃないけど、やりすぎるとダメだなって。
A:私はちゃんとやるよ。
B:私だってやるよ、もちろん。でも「がんばりま〜す」以上のことは絶対に書かない。
A:私は「がんばりま〜す」以上のことを書く。でないと、ただの小学生の作文じゃない。
B:それそれ、その小学生の作文でいいんだよ、たぶん。
A:それは絶対にあり得ない。そんなんでよかったら、教免要らないって。
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