全国学力調査(全国学力テスト)の結果が公表された。
ウチの学校には,クロネコヤマトさんがCD-ROMを届けてくれた。校長が留守だったので教頭がハンコを押して受け取ったら,後から電話がかかってきてちゃんと校長に渡ったか確認していた。
このCD-ROMの扱いについては,地域の校長会や教育委員会で最終的な判断をするとのこと(まだ,判断していない)。ウチのような過疎地域は,実にノンビリしたものだ。ROMの中身をよく見てから,扱いを決めるということなのだな。
さて,文科省からは,都道府県別のランキングが出された。全国平均の下位が沖縄県や北海道だったのは何となくわかるが,上位が秋田県や福井県や富山県というのは,意外であった。新聞報道を読む限りでは,当事者である県教育委員会のコメントも,何で上位なのかがわかっていないようだ。また,東京や大阪といった大都市圏が上位ではないというのは,やはり公立と私立間の格差ということか。くわしい分析が待たれるところだ。
文科省が都道府県間のランクを公表した以上,当然ながら今後,下位の地域には国として何らかの支援をするべきであろう。具体的な方策としては,苅谷剛彦氏(東京大学大学院教授)がNHKニュースでコメントしていたように,下位の県に対する教員の増員がもっとも有効な方策であろう。
ただ,都道府県別の平均点をみると,文科省サイドからのコメントのとおり地域間の格差はさほど大きくないとはいえるだろう。『産経新聞』が,トップの福井と最下位の沖縄との差が大きく開いていることをことさら問題視しているが(10月25日付社説),それはミスリードであろう。教育の機会均等という点でいうと,わが国は,とりあえずどこに住んでいても,等しい教育を受けることはできているといっていいだろう。
しかし,下位に甘んじた都道府県については,次回の学力調査に向けた学力向上策がはかられるのは,必定である。それは,地方行政をとりまとめる教育委員会も,現場で指導にあたる教員も,意見の相違なく取り組むことになるのだろう。なぜなら,現場というのは,教育委員会からの圧力があろうがなかろうが,あまりに行政に従順であるからだ。教育委員会サイドから学力向上策が降りてくると,校長以下管理職はそのまま校内に降ろし,教員はそのまま教室に降ろしていくという,社会主義的な上位下達システムが見事に発揮されるのである。それは,教育委員会も校長も現場教員もみんな真面目だからであろう。この上意下達のシステムがいかんなく発揮された最近の例では,いじめ防止の通達や,いじめアンケートなどがそうだった。あの時,私は今さらながら,自分は教育者ではなく行政の末端であるということを思い知った。文部大臣のメッセージのFAXを淡々と教室で読み上げた教員も多かったことだろう。
そういうシステムの下,学力向上だ。今後,わが国の子どもたちの学力は一層向上するであろう。とくに,今回,正答率が低いとされる,知識技能の「活用」に関する学力向上策がはかられるようになるだろう。そもそも,基礎的な「知識」を問う分野と知識の「活用」を問う分野では,後者の方の点数が低いのは当たり前だろうと思うのだが,とにかく低かったのだから向上させよということだ。どうして,別の分野の正答率を比較するのかが,私にはわからない。前回と比べて,「知識」分野が下がったとか,「活用」分野が上がったとかという議論なら,比較しているということになろう。ここら辺りも,新聞やテレビニュースの報道のおかしなところである。
いずれにせよ,わが国は教育に関心が高く,教師は真面目で教える技術も高いのであるから,PISA型の学力観に基づいて作成されている今回の学力調査の向上は,現場においてはそんなに難しい課題ではないであろう。ようは,このような学力観に対応できる学習を授業で行えばよいということである。わが国の教師の腕なら,次回にでもよい結果を出せるだろう。
また,ついでに言うと,今後現場で予想される事態としては,全国の学校長や教育委員会による日本海側の教育委員会詣でが起こるであろう。
なお,『朝日新聞』の社説をはじめとして,識者が,今回のようにすべての子どもの調査をする必要性について疑問を呈していた。つまり,今回のような公表結果であれば,抽出調査でいいだろうという主張なのだが,これは的外れだろうと私は思う。
公表したのは都道府県別のランキングであるが,もとのデータからは,各市町村のランキングから,各学校のランキングまですべて出せるようになっている。何なら,日本全国のすべての子どもの点数も個人データとして特定できる。ちなみに,データの持ち主は誰もが知っているあの大手教育関連会社。
私としては,これらのデータこそ大いに活用して欲しいと思う。
そして,地域間格差,学校間格差の要因を分析して欲しい。そのうえで,家庭の所得による格差との相関をしっかりと分析して欲しい。
そのような分析があってはじめて,学力向上策はもとより,学校の自由化論議にも一石を投じることになるからだ。すなわち,子どもの学力形成の主要因は,果たして都道府県のような地域行政なのか,各学校の教え方によるものなのか,それとも家庭の教育力にあるものなのか,ということの分析をせずに,いたずらに制度改革をしてもしょうがないでしょうと思うのである。
せっかくのデータであるから,有効に活用されることを望む。
ウチの学校には,クロネコヤマトさんがCD-ROMを届けてくれた。校長が留守だったので教頭がハンコを押して受け取ったら,後から電話がかかってきてちゃんと校長に渡ったか確認していた。
このCD-ROMの扱いについては,地域の校長会や教育委員会で最終的な判断をするとのこと(まだ,判断していない)。ウチのような過疎地域は,実にノンビリしたものだ。ROMの中身をよく見てから,扱いを決めるということなのだな。
さて,文科省からは,都道府県別のランキングが出された。全国平均の下位が沖縄県や北海道だったのは何となくわかるが,上位が秋田県や福井県や富山県というのは,意外であった。新聞報道を読む限りでは,当事者である県教育委員会のコメントも,何で上位なのかがわかっていないようだ。また,東京や大阪といった大都市圏が上位ではないというのは,やはり公立と私立間の格差ということか。くわしい分析が待たれるところだ。
文科省が都道府県間のランクを公表した以上,当然ながら今後,下位の地域には国として何らかの支援をするべきであろう。具体的な方策としては,苅谷剛彦氏(東京大学大学院教授)がNHKニュースでコメントしていたように,下位の県に対する教員の増員がもっとも有効な方策であろう。
ただ,都道府県別の平均点をみると,文科省サイドからのコメントのとおり地域間の格差はさほど大きくないとはいえるだろう。『産経新聞』が,トップの福井と最下位の沖縄との差が大きく開いていることをことさら問題視しているが(10月25日付社説),それはミスリードであろう。教育の機会均等という点でいうと,わが国は,とりあえずどこに住んでいても,等しい教育を受けることはできているといっていいだろう。
しかし,下位に甘んじた都道府県については,次回の学力調査に向けた学力向上策がはかられるのは,必定である。それは,地方行政をとりまとめる教育委員会も,現場で指導にあたる教員も,意見の相違なく取り組むことになるのだろう。なぜなら,現場というのは,教育委員会からの圧力があろうがなかろうが,あまりに行政に従順であるからだ。教育委員会サイドから学力向上策が降りてくると,校長以下管理職はそのまま校内に降ろし,教員はそのまま教室に降ろしていくという,社会主義的な上位下達システムが見事に発揮されるのである。それは,教育委員会も校長も現場教員もみんな真面目だからであろう。この上意下達のシステムがいかんなく発揮された最近の例では,いじめ防止の通達や,いじめアンケートなどがそうだった。あの時,私は今さらながら,自分は教育者ではなく行政の末端であるということを思い知った。文部大臣のメッセージのFAXを淡々と教室で読み上げた教員も多かったことだろう。
そういうシステムの下,学力向上だ。今後,わが国の子どもたちの学力は一層向上するであろう。とくに,今回,正答率が低いとされる,知識技能の「活用」に関する学力向上策がはかられるようになるだろう。そもそも,基礎的な「知識」を問う分野と知識の「活用」を問う分野では,後者の方の点数が低いのは当たり前だろうと思うのだが,とにかく低かったのだから向上させよということだ。どうして,別の分野の正答率を比較するのかが,私にはわからない。前回と比べて,「知識」分野が下がったとか,「活用」分野が上がったとかという議論なら,比較しているということになろう。ここら辺りも,新聞やテレビニュースの報道のおかしなところである。
いずれにせよ,わが国は教育に関心が高く,教師は真面目で教える技術も高いのであるから,PISA型の学力観に基づいて作成されている今回の学力調査の向上は,現場においてはそんなに難しい課題ではないであろう。ようは,このような学力観に対応できる学習を授業で行えばよいということである。わが国の教師の腕なら,次回にでもよい結果を出せるだろう。
また,ついでに言うと,今後現場で予想される事態としては,全国の学校長や教育委員会による日本海側の教育委員会詣でが起こるであろう。
なお,『朝日新聞』の社説をはじめとして,識者が,今回のようにすべての子どもの調査をする必要性について疑問を呈していた。つまり,今回のような公表結果であれば,抽出調査でいいだろうという主張なのだが,これは的外れだろうと私は思う。
公表したのは都道府県別のランキングであるが,もとのデータからは,各市町村のランキングから,各学校のランキングまですべて出せるようになっている。何なら,日本全国のすべての子どもの点数も個人データとして特定できる。ちなみに,データの持ち主は誰もが知っているあの大手教育関連会社。
私としては,これらのデータこそ大いに活用して欲しいと思う。
そして,地域間格差,学校間格差の要因を分析して欲しい。そのうえで,家庭の所得による格差との相関をしっかりと分析して欲しい。
そのような分析があってはじめて,学力向上策はもとより,学校の自由化論議にも一石を投じることになるからだ。すなわち,子どもの学力形成の主要因は,果たして都道府県のような地域行政なのか,各学校の教え方によるものなのか,それとも家庭の教育力にあるものなのか,ということの分析をせずに,いたずらに制度改革をしてもしょうがないでしょうと思うのである。
せっかくのデータであるから,有効に活用されることを望む。