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いつでも君のこと好きだったよ

坂田久枝の歌 

2017-03-15 23:09:40 | 日記

 坂田博義歌集を読みなおしながら、坂田久枝の歌集をなにげなく読んでいて、胸がつまってしまいました。

 

 第一歌集『すずかけ』には夫の坂田博義のことを詠んだ歌が収められています。

 

 ・心汚れて帰りくるとう夫なればいたいたしこよい又黙しいて  (坂田久枝『すずかけ』)

 

 坂田博義との結婚生活がスタートしたものの、慣れない会社勤めで疲れて帰って来る夫を日々見守るということは、お互いかなりつらかったことが伺えます。

 

 坂田は坂田で、

 

 ・吾が傘をだきて夜更の雨にたちいつまでも待つつもりなりしや

 ・おのずからめさめし吾れをみつめいる妻の目にあう朝々にして

 

 と詠み、妻の思いがプレッシャーになっていたように思われます。 お互いを思いやり、言いたいことを言わず黙しながら、ふたりはどんどん狭い道の先へと進んでいったのかもしれません。

 

 坂田が自死したのちの久枝さんの歌。

 

 ・悲しみの中に逢いにし母君に喪服の帯を結びてもらう

 ・みどりごと二人めざめて雪の夜半雪降る夜半よ夫かえり来よ

 ・亡夫と摘みし月桂樹の葉は乾きつつなおもみどりに針箱にあり

 ・遺したる亡夫のはみがき朝朝におしみつついてすくなくなりぬ

 ・「おや、哀愁に充ちた鳩がいるよ」亡夫の口ぶりのように子が言う

 

 5首目は子供はもう10歳か11歳。

 

 第二歌集『自転』でも夫の歌は見られます。

 

 ・夫と生きて迎えんものを独りにてしずかなる夜半二〇〇〇年来る

 ・「小刀はマキリ」と教えてくれし夫折々アイヌのことかなしみき

 ・歌会の日バザーありしは五月にて夫はヘデラの鉢を買いにき

 ・夫のことやがて書かんと帯広の姑へのつてを請いたまいしに

 

 「小刀」といえば、坂田の「小刀もて目をつぶしては闇にのみ安らぐ鰕を生簀に放つ」という歌がありますが、「闇にのみ安らぐ」のはほかならぬ坂田自身であったのではないかと、時間がたてば見えてくることもあります。4首目は坂田の友人でありライバルであった清原日出夫が亡くなったときの歌で、清原さんは清原さんで坂田さんのことをずっと思っていたんだなということを知ることができます。

 

 来週22日に「月と六百円」の会でレポートする『坂田博義歌集』。きょう一日、読み直し、レジュメができました。ご興味のあるかたはどなたでもお越しください。18時半から塔事務所で行います。お待ちしています。

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