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いつでも君のこと好きだったよ

阿部久美歌集『叙唱』レチタティーヴォ

2017-07-06 23:24:16 | 日記

 阿部久美さんの歌は不思議だ。

 

 このひとの作品を読むと物語の続きを書きたくなってくる。

 

 ・手を叩き鯉を呼び寄す水ほとり腰からしたの記憶うしなふ

 

 水に近い位置にかがんで、鯉を呼んでいる。 手を叩くと寄って来る鯉。 うねうねとやってくる鯉をみているうちに自分の下半身はもう魚になっている。鯉を見ているときの怖いような憧れるような感覚が、身体のなかに伝わってくる迫力がある。

 

 ・豆喰らふごとくに鬼は人喰らふ顔より高くいつたん放り

 

 進撃の巨人みたいですね。 鬼はうれしそうに遊びながら人を喰うのです。 「顔より高くいつたん放り」の無邪気さが怖い。 

 

 ・のぼり旗たふらたふらと秋風に入居者募集の熱意はみえず

 

 「たふらたふら」という独自のオノマトペ。 乾いているけれど勢いのない感じ。 きっとこののぼりは古びていて、ずっと前からそこにある。募集しているけれど、もう空き部屋のままでもいい、といったやる気のなさを掬い取ったのがおもしろい。「熱意はみえず」というのは主観的とかそこまでは言いすぎ、といわれるかもしれないけれど、こののぼりをみた瞬間キャッチした「やるきのなさ」感をきっぱり詠っていて好感をもった。

 

 ・夜といふつめたきものをまねき入れのちうつくしくゆがむ窓あり

 

 窓がまるで生き物ののように魅力的に描かれている。昆虫を待って丸呑みする植物のよう。夜をまねきいれ、取り込んだあとの恍惚感。満足気でもある。

 

 ・薄紙につつまれゐしかうたたねよりかへれば楽章移りてをりぬ

 

 「薄紙につつまれゐしか」という捉え方が印象的だ。音楽をききながらうたたねしていたのに、「うたたねよりかへれば」と、まるで故意的にうたたね空間へ遊びにいっていたかのようでおもしろい。

 

 ・身の内に花の根ひろがる感じしてのどを伸ばしてする喇叭飲み

 

 うつくしい歌。垂直に身体をおりていく水。とても健康的なのにエロティック。いちばん好きな歌。

 

 ずっと読んでいたいような歌集です。

 

 

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