古野まほろ『天帝のはしたなき果実』

やっと・・・やっと読み終えました。
古野まほろ氏のデビュー作です。


姫山にある勁草館高校の吹奏楽部に属する僕・古野まほろ。
アンサンブル・コンテストに金管８重奏で出場するべく練習中の毎日だ。
演目は「天帝のはしたなき果実」というフランスの曲で、顧問・瀬尾の思い入れ曲。
そんなある日、メンバーのトランペッター修野嬢の家の晩餐に招かれた僕は、
修野嬢から３枚のメモ＝暗号文を託され、解読にチャレンジすることになった。
それは修野嬢の祖父が残した遺言のようなパズルだという。
僕は解読しようと試みるが苦戦、親友の奥平（伯爵家・生徒会長）に助っ人を頼む。
奥平は手がかりを探して図書室にある開かずの書庫を調べ始める。
そして・・・僕とすれ違いになった翌日、奥平の遺体が校内で発見されるが、
その遺体には頭部が無く、「首を果実として天帝に捧げた」という声明文が置かれていた。
一体何があったのか？　僕たちの探偵が始まる・・・


まず、この文章、読みにくいんですよ（＾＾；
初めての作家の文章は、それでなくても掴むのに時間がかかりますが、これは・・・
ルビ＆当て字が多く、薀蓄がらみの変な修飾語も多発。
１ページ目から「熱情色」に「アパッシオナート」とか「音楽神」に「ミューズ」とかのルビ。
挙句「なーんてね。」なんて地の文に書かれた日には、頭がくらくら（笑）
会話文にも、かなり不気味な擬音が出てきますし、こってりしてること請け合いです。
ということで、適当に読み飛ばそうと思ったのですが、
こういうところ律儀なＡ型気質が祟りまして、頑張ってしまったのでした（＾＾；

まあ、慣れてしまえば、こういうものかと思えるようにもなります。
それに、この作品の中にはかなりの有栖川ネタが散りばめられていて、
「千原由衣」を見つけて喜び、「進化するパズル」に反応し、
「人形ガーデン」に、マニア臭を嗅ぎ取りながら、最後はハマってたかも（笑）

さて、肝心のミステリ部分ですが、
最後の殺人の後に「読者への挑戦」が入ります。
その後、アンサンブルメンバーの推理合戦が始まるのですが・・・
そのロジカルな点は非常に堪能できたのですが、
何というか、かなり痛かったです。

アンサンブルで、ものすごい合奏をした直後のメンバーたちが、
おふざけの許されない緊迫した状況で、身内を犯人だと指摘したりするのです。
コワイよぉ～(>_<)　親友とかじゃなかったの？

最後はドンデ～ンがえっし～っ！！（まほろ調ｗ）もあったりしつつ、
いまいち心情的にスッキリしないエンディングでもあったのですが、
「まほまほ」だから仕方がないと思いました。

ところで、この作品世界、普通では無いんですよ。
戦争に負けた日本なのに「帝国」で軍隊も残ってて、貴族制が存続してるんです。
たから奥平君は伯爵家だし、修野嬢は子爵家だし。
ちょっと右翼系の人が喜びそうな世界かもしれませんね。

シリーズの次作品は、もうちょっとインターバルを置いて読みたいと思います。