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サービス・デーに観た、映画『美しい星』

2017-06-01 23:59:59 | アメリカの夜(映画日記)
6月1日。サービスデーですよね。ということで、観てきました映画『美しい星』。三島由紀夫原作で監督は『桐島、部活やめるんだってよ』の吉田大八。結論からいうと、面白かったですよ、万人受けはしないだろうけど。リリー・フランキーというより、佐々木蔵之介の怪演に感心しました。というわけで、ネタバレしない程度に簡単な感想。

(以前に書いた記事)
・『美しい星』 三島由紀夫 著
・三島由紀夫の小説『美しい星』が映画化。吉田大八監督、リリーフランキー&亀梨出演!


三島由紀夫異色のSF小説『美しい星』は、一部の三島ファンの間でも有名で、有名すぎる『仮面の告白』や『金閣寺』を挙げたくないうるさ型文学ファンが決まって「傑作」と呼ぶ作品なんですが、わたしはこの作品自体には大いに疑問を持っていて、今読んで面白い小説ではないと思っています。ま、その辺については、以前に記事を書いているんで、興味のある方はお読みください。なお、「じゃ、お前なら何を挙げるんだ」と問われれば、初期の短編か長編なら『鏡子の家』か『春の雪』、後期の短編なら『剣』かな。あとは評論集の『作家論』か戯曲全集を読むべしといいたいが…。ま、少なくともわたしは中編は挙げません。薄味で駄作が多いと思うから。たとえば、『美徳のよろめき』、『青の時代』あたり。でも、中編がよいといっている山田詠美みたいな人もいるんですよね~。

で、話を戻して映画について。原作をかなりのレベルで現代風にアレンジしてるんですが、映画にきっかけに小説を読む人がいたら驚くんじゃないのかな。逆に原作ファンはその点を批判するかもしれませんね。でも、原作のエッセンスを忠実に生かしている感じがしたのは橋本愛演じる美少女の長女。個人的には彼女、この役はハマリ役だと思いました。

物語は、ある日、自分たちのことを宇宙人だと信じるに至った家族の大暴走ってところですが、原作同様に、あまり説明しないで展開していくんで、わかりよい映画ではないかもしれない。ただ、この監督の映画って『桐島~』も含めてそんなにわかりやすくはないですけどね。感じとしては、昔ならATGでやっていたような実験エンターテイメントって感じかな。たとえでいうと、須川栄三監督の『日本人のへそ』みたいな。ただ、去年の『君の名は。』や『シンゴジラ』同様、大手配給系の作品として、こういう中身の映画が出てきたというのは価値があると思いますね。

で、若干中身について言うと、主人公のリリー・フランキー演じる父親を天気予報士にしたという設定は面白かったんですが、大根仁監督の『SCOOP!』の暴走怪演を観た後だったんで、わたし的にはもっと暴走させたらよかったのにとは思いました。そのかわり、謎の男を演じた佐々木蔵之介の瞬きしない演技が凄かった!猿之助の「スーパー歌舞伎Ⅱ」の舞台を観て大した役者だなとは思っていたんですが、この演技は助演男優賞ものだと思いました。怖いです。で、リリー・フランキー、佐々木蔵之介、亀梨和也の対決シーンは大島渚の『日本の夜と霧』以来のディスカッション・ドラマだと思いました。

でも、個人的な感想をいうと、あんまり現代の世相と結びつけすぎないで、ドラッグ的な映像のショック中心でつないでいった方が、現代版『2001年宇宙の旅』か少なくとも『博士の異常な愛情』くらいにはなったのにな~というところ。その点で、後半変にまとまりをつけちゃってるところがわたし的には不満なんですが…。でも、宇宙人の視点でも導入しないと地球人の問題なんて解決しないんじゃないのって気分は、東京オリンピック問題一つとっても、頷ける時代の気分ではあるんですけどね。

でも、数ある三島原作映画の中ではよい方だと思います。三島原作以上に三島的だった市川雷蔵主演の『剣』を頂点として、増村保造監督の『音楽』とか浅丘ルリ子主演の『愛の渇き』の次の次くらいに。ちなみに、わたしは市川崑監督の『炎上』はあまり買っていなくて、高林陽一監督の『金閣寺』の方が割と嫌いじゃない。というのも、加賀まりこの役がよいから。他だと、作者本人が酷評した中平康監督の『美徳のよろめき』とか、三島本人がゲスト出演した『不道徳教育講座』なんて作品もありますが、ご覧になった方はどれくらいいるのやら…。

というわけで、こんな曖昧模糊とした感想で参考になったでしょうか。ただ、ネタバレさせちゃうとよくないタイプの映画なんで、映画同様に謎を残した感想にしてみました。高校生恋愛映画なんか観たくない人にはおすすめ。

PS:原作に興味を持った末に読んでみたんだけど、わけがわからなかった人には、江藤淳の『文芸時評』か、奥野健男の『三島由紀伝説』の該当部分を読むことを強くお勧めします。どちらもかなり詳しく分析していて、結論的には「傑作」と評しています。特に江藤淳の方はまさに同時代に読んだ人の時評で、この小説の発表された時期がキューバ危機の頃だったという点が今読むと非常に興味深い。そういう時代の気分が三島に『美しい星』を書かせたんだという視点はやはり重要だと思います。なお、この時、江藤淳が一緒に論じた小説が大江健三郎の『叫び声』!でも、けちょんけちょんにやっつけているんですよね。でもでも、わたしは『美しい星』より『叫び声』の方が傑作だと思いますけど!

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