吉倉オルガン工房物語

お山のパイプオルガン職人の物語

古いコンパスのセット

2009年09月24日 | 道具
ネットオークションで、素敵な道具を見つけました。
古いコンパスのセットです。


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昔のコンパスやディバイダーは、ものすごく地位の高い道具だったと見えて、非常に造りが良いのです。
他にも廃品として手に入れたものがありますが、大抵メーカー名は入っていませんし、造りも似通っています。
販売会社はいろいろでも製造元は共通だったのかも知れません。

このセット、1000円で落札しました、で、送料が900円。う~ん、これで良いのか?
だって、これ素晴らしいですよ。
材質も良いし、手加工で仕上げてあるので、製造コストはかなりのものですよ。
こんな値段で取引されるべきものじゃありませんよ。ありがたいですけど。


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コンパスごときにこんな高度な加工は必要ありませんし、装飾的な面取りだって無意味です。
これは美術工芸品と言って良いでしょう!
からす口の柄は骨製(象牙かも)で、これにも装飾が施されています。
すごい仕事です!

からす口の柄の先

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ついでながら、鉛筆の芯入れは(筒状のヤツ)精密な深絞りで出来ていて、この技術が後に日本を特殊電池で世界一にしたのです。

良い品を一生モノといいますが、これはすでにその任を果たしています。
いわば二生目とでもいいますか。
磨耗するからす口以外は、歴史的時間の寿命でしょう。つまり、管理さえ良ければ数百年は優に持つと思われます。

最近は、設計を生業とする方でさえ、コンピュータで図面を描くので手で図面を描けない、または描いたことがないという方が多いそうです。
まあこれも時代の流れで仕方がないところでしょう。

手書きの図面というものは、ボタニカル・アートや細密画と同様の芸術的価値があると思います。
銅版画や石版画なども、大量(といっても大した量ではありませんが)出版物でありながら芸術的価値が与えられているので、手書き図面のコピーにも同じ地位が与えられてしかるべきだと思います。

手書き図面、及びそのコピーがどんなものなのか、近々紹介しましょう。
解体される家から、廃棄物として出されるのを救出したものです。

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6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (しまりす)
2009-09-25 20:57:47
美しい道具ですね。
ご披露していただきありがとうございます。
元気になりました。

手で図面が描けない・・・
研修生を定期的に受け入れているPさんが
そのことを嘆いていました。
想像以上にレベルが低いそうです。
Unknown (pipieno)
2009-09-25 23:04:43
これはなかなかのお宝ではないですか。

今時イギリス式のコンパスは珍しいし、象牙の杖のからす口も見たことがない。

と言いながら、これでどんな図面を書くのかな。

でも、基本的に手動で図面がかけないと、高いCADも上手く使いこなせないです。

置いていてもお宝だし、手入れしたらどんな値段で売れる事やら。
うっとり・・・ (ねこじじ)
2009-09-25 23:26:21
すばらしいですね。道具(動力のついた機械ではなく)には、ほれぼれします。
本場! (ひろにゃんof風琴屋)
2009-09-26 22:02:47
しまりすさん、ようこそ!

何をおっしゃいますやら!
素敵な道具の本場はそちらですよ。
アンティークショップの棚にはめくるめく素敵道具たちがひしめいています。

僕がフランスで仕入れてきた素敵道具をいずれ紹介しましょう!
今が買い! (ひろにゃんof風琴屋)
2009-09-26 22:15:46
pipienoさん、もしかしてripienoさん?ようこそ!

僕の場合、図面よりはイラストやお絵かきに使うと思います。
ホルベインのインクも買ったのでこれから練習です。

オルガン設置時の建物との兼ね合いのことで建築側と図面を挟んで話をしても全く理解してもらえなかったので、自分達でやったことが数回あります。
ちょっとイレギュラーな要素が入ると、完全に思考停止してしまう人って結構いるようです。

この手の道具は2000円以下でかなりあります。今が買いです。
落ちた地位 (ひろにゃんof風琴屋)
2009-09-26 22:23:44
ねこじじさん、ようこそ!

道具、特に精密な作業向けの道具は、かつてはとても高い地位にあったのですね。
例えば時計の道具なんてすごいです。
その道具を持つことがあこがれであったり、一人前の証であったりということも多かったでしょう。

道具は用が足りさえすれば済むという考え方は、貧しいと思います。
まあ、消費社会とは相容れないでしょうね。

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