vagabond77

時空を超えて・・・
微塵のような存在でも、何らかの記憶に残るか?
何かしら、波紋のようなものかもしれないが・・・

コンビニ人間

2016-09-19 14:20:32 | 文学

文春9月号に掲載された芥川賞受賞作「コンビニ人間」、 最近読んだ芥川賞受賞作で一番面白かった。

選考会で満場一致だったのもうなずける。

主人公は18年間、コンビニで働いた36歳の独身女性である。

まず性格が面白い。 素直で柔軟性があるのだが、小学校時代とんでもないことをやらかす。

男の子の喧嘩をやめさせるために、スコップで殴った。

ヒスを起こした先生をおとなしくさせるために、スカートとパンツを引き下ろした。

本人としては、見聞きした知識で、善意でやったことである。

だが、それがいけないことだということを諭されたが、納得がいかない。

これからは余計なことはすまいと決心し、すっかり内気になってしまった。

そして、大学生の時、コンビニでアルバイトを始める。

コンビニでのいろいろな仕事、ルーティン、規律、等々が描かれる。

商品の発注、これは天候、季節等の状況で種類、量などを変える。

商品の陳列も工夫する。 客の気持ち動きなどを、敏感に察して機敏に行動する。

色んな性格の店長、店員たちとの関係、その口調と性格に影響されやすかったり、故意に真似たりする。

18年間で、店長も8人、店員もアルバイトもみんな変わった。

その間にすっかりコンビニのプロになった。 コンビニの声が聞こえる人間になった。

コンビニに特化した、だから「コンビニ人間」なのだ。

18年間もそのコンビニで開業当初から、バイトで勤め続ける、 しかも結婚もせづ・・・。

頭もよく理解も早く、弁もたつがどんなことにも怒らない。 

客観的に自分の内面を見つめ、変わらない、或いは変えたくない中核と柔軟に変える表面とを冷静に考える。 

アイデンティティが意識して柔軟に作ったものか、自然にでき上ったものか冷静に見ている。

世間一般とはちょっと変わっていると見られ、本人も自覚はしているが別に変なこととは思わず、姿勢を貫く。

あちら側とこちら側の違いと思っている。

このずれがそれぞれの場面で、軽妙な面白さを作り出す。

理屈ばかりのダメ男に餌を与えて部屋で飼うが、それ以上の関係もない。

一旦、コンビニをやめるが、腑抜けみたいになった。

一時立ち寄ったコンビニで再びコンビニの声が聞こえだす。

自分はそれ以外の何物でもないコンビニ人間だということを痛切に自覚した。

ダメ男を振り切って再びコンビニ人間として生きていくことを決意する。

考えてみると人は、みんな夫々ちょっとずつ変わっている。

普通の人は世間一般の平均像に合わせていこうと努力する。

だから圧倒的多数の人は、いわゆる普通の平均的人間なのだ。

その中で、このコンビニ人間のように変わっている人も、結構どこにもいるとも思える。

この人間像は作者とも重なっているとも思えた。

コンビニという世界を中心に社会を描いているのだ。

久しぶりに面白い芥川受賞作を読んだ。

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