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〔映画〕 硫黄島からの手紙

2006年米国 2h21 (ナビオTOHOプレックスで12月12日鑑賞)
監督:Clint Eastwood(以後「CE」:東樹氏に敬意を表し「東木」を変更)
出演:渡辺謙 伊原剛志 二宮和也 加瀬亮

待ちかねた硫黄島第二弾。前回に懲りて、しっかり居眠り防止策を講じたものの、不要でした。

CE監督には、若い頃の「荒野の用心棒」「ダーティーハリー」「白い肌の異常な夜」などでの冷酷非情で胡散くさいイメージがつきまとい、今のように「人格高潔な巨匠」と言われる日が来るなんて、想像もつきませんでした。

CE監督、この作品では苦労なさったようですね。
戦争反対の意志と、日本人を理解し、他に理解させようという熱意は良く伝わります。日本人は猿ではなく人間である。野蛮人ばかりではなく、知識階級もいる。ひたすら家庭の平安を望む素朴な庶民もいる。元憲兵のニヒルな男(加瀬亮)もいる。米軍と同じで、あらゆる種類の人間が混在しているということを。

アメリカの観客には、親米・知米派の栗本中将・西中佐、若い世代へは、西郷(二宮和也)と言う兵隊を配しました。だが、パン屋とは?日本でパン屋がどこにでも出現し始めたのはずっと後のこと、戦前ではごくごく稀だったはず。庶民代表としてこの職業はどんなものでしょう。1959年の反戦映画「私は貝になりたい」で、主人公は床屋でしたが、これなら納得です。もう一つ「いおうじま」が正しいの?「いおうとう」の方が長年なじんだ呼びかたです。

日本人の好きな「猿の惑星」と言う映画・・・それが何を意味していたか、知らない人が多いのではないでしょうか。原作者にとって、この場合の猿はまさに日本人のイメージだったのだそうです。
また、日本でも「鬼畜米英」と言い、戦後になっても、70歳を過ぎてから初めて海外旅行するまで私の父は「毛唐(けとう)」なんて言葉を使いました。知らないための恐怖・劣等感からくる自己防御などが原因だったのでしょうか。

硫黄島に戦ふ幾千の兵思へばわが胸いたく朝の飯食む
硫黄島の軍を悲しみて我の胃に食す飯すら消化(こな)れ難きか 

父の歌集の、昭和20年の作です。「あとがき」では、歌誌に掲載されたものではなく、偶然ノートに残っていたものだとのことです。当時、食糧難のため母の乳が出ず、わたしは重湯の上澄みを飲まされていたとか。家族写真ではやせて眼ばかり大きい赤児が写っています。「飯」と言う語がしつこく使われているのが不思議ですが、父が赴任していた病院は、まだ食糧事情が良かったものと見えます。

硫黄島には釈超空の歌碑があります。かれの愛人で、養子でもあった折口春海は中隊長としてここに赴任したまま消息を絶ったのです。

      「たたかひに果てにし人を かへせとぞ 
         我はよばむとす 大海にむきて」

若い世代が過去の事実を知るきっかけになるといいと思います。
コメント ( 15 ) | Trackback ( 8 )
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コメント
 
 
 
Unknown (claudiacardinale)
2006-12-22 02:25:00
「硫黄島からの手紙」は米国でもとても評価が高いです。まだ一般公開されてませんがNY映画評論協会の賞を初めとして色々受賞してます。これで話題となり日本人以外の人にも多く観てもらいたいですね。早く観たい作品です。

「猿の惑星」が日本人のイメージでつくられたとは知りませんでした。異国人種に対しての偏見はこういう感覚なんでしょう。妙にしかりです。
 
 
 
お邪魔します (ラクサナ)
2006-12-22 16:03:36
感想楽しみにしておりました。
硫黄島の戦いを思い、お父様が書き残された貴重な歌を拝見させて頂きました。
お父様は軍医でいらっしゃったのでしょうか?
お父様の同胞を思う悲痛な思いが感じられて言葉もないです。

硫黄島(いおうとう)はアメリカに占領された時点でいおうじまと呼ばれたそうですが・・・
この作品、確かに西郷の職業がパン屋というのも微妙ですね。
二宮君が演じる西郷も、見ていて現代っ子というよりアメリカの兵士を見ているような思いがしました。
イーストウッドは当時の日本人を描きながらも、彼には若い世代や他国の誰もが共感できる人となりを与えたかったのでしょうね。
それゆえの職業でしょうかパン屋って!?(笑)
日本では、二宮君の演技評価はそれ程でもなく、アメリカでは大人気というのも頷けますよね。^^

『猿の惑星』は仏の原作者ピエール・ブールが、日本軍の捕虜になった経験を基に書いたとは知っていましたが、日本人としては心中複雑ですよね。
彼は『戦場にかける橋』の原作者でもあり、捕虜時代日本軍に受けた屈辱が忘れられず、その映画化された作品の、日本人との間に敬意や信頼関係が築かれるところには納得がゆかず、『猿の惑星』を不満の捌け口にしたのだという説もあり、あのSFの傑作にも戦争の生々しい影響があったのかと思うと、何ともいえぬ気がしますよね。

そんなことも思うと、やはりイーストウッドというアメリカ人が作ったこの作品の重みや意義を感じずにはいられません。
本当に過去の事実を知り、老若男女が様々な思いでこの作品を受け止めることができたらいいなぁと思います。
 
 
 
こんばんは 初めまして (マダムS)
2006-12-22 20:17:16
初めまして、お邪魔します。ラクサナさんのところから飛んで参りました。
「Brilliant Days」のマダムSと申します。どうぞよろしくお願い致します。
感想を読ませて頂きました。
フランキー堺さんの「私は貝になりたい」を、随分昔ですが私も観ており、やはりこの映画の”パン屋”の部分で”床屋”を思い出してしまいました。
軍人でもない一介の市民が、赤紙一枚で言わば嫌々戦争にとられて行く様が同じですよね。 
この西郷の目を通して、当時の日本の精神論で悲しい亡くなり方をなさった沢山の兵隊さんを描くのは とても解り易いと思いました。
「鬼畜米英」「毛唐」だの今でしたら放送禁止用語になりそうな言葉も、当時は普通に使われていた事は私も母親から聞いておりました。 栗林中将のお子さんへの手紙にも出てくるので「へぇ」とも思いましたが。
親から聞いた戦争体験など、色々思い出し、色々な思いに囚われながら鑑賞した一本です。
お父様の歌からは優しさが溢れていますね 素晴らしいお父様でいらっしゃいますね。
TBも送らせて頂きました。
 
 
 
こんばんは (栗本 東樹)
2006-12-22 20:26:13
Biancaさん、こんばんは。
『猿の惑星』 の元は日本人だったんですね。
俺はずっと黒人社会のイメージだと思ってました。

「人格高潔な巨匠」。確かに。
俺はそこにもチョット違和感を感じたりしています。
だけど 『ミスティック・リバー』 なんかを観ると、
御大の心の内に潜む暗い感情が見えますよね。
また、もともと女にはダラシナイ男ですし(笑)。
まぁ俺は御大のそんな人間味が好きなんですけど。
 
 
 
Unknown (Bianca)
2006-12-22 22:21:22
claudiacardinaleさん

2つの内、こちらの方が評判が良いということは、アメリカ人の面白さですね。さすがは「菊と刀」を生み出した国。珍しくCCさんより先に見たんですね、ウン、ちょっといい気分です。異国人への偏見は誰の心にもあるけど、文明人らしい表現で、面と向かって言われないだけ助かるような気が。記事のUP待っていますね。

ラクサナさん

父は軍医ではないが、勤めていた病院は軍と関係があったみたいです。その辺はあまり語らず、察するのみ。CE監督は、分りやすくするため、事実と違うことも大分入れていますね。西竹一の馬も死んだのは日本だったり、栗本氏の絵手紙も、米国から出したものが混っていたり。エッ、あの「戦場にかける橋」の作者が、そうだったのですか、しかもフランス人?すると、アメリカ人の大らかさ、善良さが、際立ってきますね。高潔とまではいわないけど、いい方です、CEさんは。


 
 
 
Unknown (Bianca)
2006-12-22 22:55:42
マダムS

初めまして。かねがねお名前は拝見しておりました。さっきのぞいたら、二作品ともに詳しい記事で、来客数も多く、世代的にもわたしと近いようで。今後のお付き合いを楽しみにしています。どうぞ、よろしく。

栗本東樹さん

栗本さんのブログ、人格者に共感を覚えるような方とはお見受けしませんでしたよ、初めから。「暗い感情」ですか。どうもCE氏、マゾヒスティックな感じがするのですが、Mっ気のある人はつい、避けてしまいます。でも、お互い紳士的に振舞っているうちは、OKですけれどね。
 
 
 
こんにちは (カヌ)
2006-12-23 12:59:30
パン屋の件。観たときは、当時もパン屋があったんかなと思ったんですが、やはり少なかったんですか。確かに、アメリカ人を意識した設定かもしれませんね。
『いおうとう』という呼び方も初めて知りましたよ。ありがとうございます(^^)
 
 
 
お邪魔します (稲みのる)
2006-12-23 20:56:04
 クリント・イーストウッドを評して「冷酷非情で胡散くさいイメージ」との由。思わず唸ってしまいました。捉え方はさまざまですね。「荒野の用心棒」にしても「ダーティハリー」でも、彼はワルを許さないと言う正義漢だと思っておりました。
 アメリカ人にとって日本人はきっと「猿」なのでしょう。A.ヘプバーンの「ティファニーに朝食を」で猿に似た日本人が登場します。あの時代の映画に出て来る日本人は大体似たような描き方をされました。端的に言えば猿なのでしょうね。
 硫黄島に釈超空の歌碑があるなんて、知りませんでした。彼の全集を持っておりましたが、読む前に金に困って友人に売ってしまった。今更後悔もない。
 
 
 
釈超空 (Bianca)
2006-12-23 23:04:17
カヌさん
いらっしゃいませ。カヌさんの周りは若い人ばかりですね。「ガンバ大阪がどうの」とか「明日のテストが」云々と言う記事を拝見しますと、普通はありえない出会いがある、この電脳界の素晴らしさを改めて感じています。

みのるさん
「猿の惑星」わたしは中東にいる2年間、それを感じていました。在日大使館にはナイショですが。
ようやく釈超空の話が出来ます!!全集を買って、お金に困ってまた売る、その突発的情熱と行き当たりばったりの行動が、まさに青春ですねー。実は、彼の本は持っていません。室生犀星の「我が愛する詩人の伝記」でグンと興味を抱き、その後、図書館で全集を借りて「口笛」も、弟子による伝記も読みました。私の興味は文学と言うよりかれの??愛にあるわけで。面目ない。

 
 
 
実在の人物? (狗山椀太郎(旧・朱雀門))
2006-12-24 03:03:33
こんばんは、コメント・TBありがとうございました。
あの、トラックバックが「中国語会話」のほうに送信されておりました。よろしければ、映画評あてに再送信頂けませんでしょうか。

確かに「パン屋の西郷さん」は、違和感のあるところですね(笑)。
また、何故に「西郷」という珍しい名字が設定されたのかも気になります(どうしても歴史上の「あの人物」を思い出してしまうのですが。もしかして、二宮氏演ずる若き兵士は実在した人だったのかしら?)。
日本人の描き方全般は、蔑視もヨイショもなく、非常にフェアなものに感じました。『猿の惑星』については初耳だったのでびっくりしましたが、以前に読んだジョン・ダワー著『容赦なき戦争』の中では、戦時中のアメリカ人がいかに日本人を蔑視していたかを詳しく書かれており、ショックを受けました。
 
 
 
Unknown (Bianca)
2006-12-24 12:37:51
狗山さま

アレッそうでしたか。再送しましたので、削除願います。こういうミスは、知り合いの高齢者によく見かけるので(認知症のはじまり?)注意しなくては。

西郷は「ラストサムライ」の影響じゃないでしょうか。主人公のモデルが、たしか西郷隆盛だそうですから、脚本家の日系二世?がよくある名前と勘違いしたのでは。実際はあまりないのにね。もしかすると鹿児島と言う、尚武の気風が尊ばれる土地の出身兵?が、このようなヘナチョコ的(いい意味で)言動を繰り返すことは、痛烈な皮肉になっていますね。

CE氏が「蔑視もヨイショもない、フェアな」描き方をしていたこと、そして、そのことがどれだけ努力のいることだったかも、感じるのです。何故なら、自然にでてくる反応(人種差別)に逆らい、理知にしたがって行動したわけですからね。
ダワーのその本読みました。ガッカリしました。しかし、そんな気持ちがあることを、表面化することが、克服への第一歩だと思いますので(アメリカ人のやり方はいつもそうですね。)そこから次に踏み出すことが肝要だと思います。日本人のように、臭いものに蓋では、全然進歩がありません。
 
 
 
おはようございます (ノラネコ)
2006-12-26 06:08:56
はじめまして。
TB&コメどうもでした。
監督としてのイーストウッド、昔からファンですが、
映画作家としてのコアな所はあまり変わっていない様な。
独特の達観したような目線目立つようになってきたのは「ペイルライダー」あたりからでしょうか。
清流が静かに流れるような、人間の感情を優しく見つめる視線は今のアメリカ映画ではとても貴重なんでしょうね。
TBさせていただきました。
 
 
 
Unknown (Bianca)
2006-12-26 11:48:25
ノラネコさま、ようこそ。

>清流が静かに流れるような、人間の感情を優しく見つめる視線
って、そ、そうなんですか。
貴台の素晴しい記事も、この監督を見続けたノラネコさんの過去の堆積から生まれたものなんですね。それとお酒でしょうか?




 
 
 
Unknown (kazukokawamoto)
2006-12-29 16:41:24
いろんな本読んでおられますね。
本を読む回数も早さも遅くて、やっと落着いたので、お正月の間読もうと思って、宇多喜代子氏の俳人{ひとたばの手紙から}硫黄島で死んだ兵士の手紙を託された物語ですが、こらから読みますので、中の内容はまだわからないです。楽しみにしています。来年もいろんな本紹介楽しみです。
 
 
 
ひとたばの手紙から (Bianca)
2006-12-29 22:04:53
川本さま
宇田喜代子の「ひとたばの手紙から」は、先日新聞紙上で紹介されて、心を惹かれていました。アメリカ人の遺族から託されたのですよね。川本さんは本を選んで、ゆっくり読んでいらっしゃいますね。その方が良く理解できて身にもついて、いいと思いますが、なかなか、育ちが悪いのか、理想どおりには行きません。
 
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