平成二十九年二月十二日(日)
昨日夕刻、孫が襖をノックして、顔を覗かせる。にこにこと嬉しそうで、帰宅はひと月ぶりと言う。そして指を見せて婚約指輪と目を輝かせ、恥じらう風。そうか、話はそこまで進んでいるのかと、こちらも面映ゆい。かみさんがおめでとうと手を握る。小さなダイヤがきらりとと光った。孫が去った後、あたし等の結婚当座のことが頭をよぎった。
当時、婚約指輪も結婚指輪も無かった。今だったら非常識もいいところ、たちまち破談といった騒動になっただろう。辛うじて新婚旅行は相手の叔母さんのたっての頼みで、奥伊豆に。写真機も持たず、一帳羅の背広は質屋から受けだす始末だった。汽車も、乗り込んでから三等車から大慌てで特二に乗り換える始末だった。
ふふふっと笑いがこみあげてきた。六十年も昔のことである。
やがては挙式のお便りも予測されますね。
病院通いの面倒など厭わず、末永くお元気でお過ごし頂きたいと思います。