観測にまつわる問題

沖縄で自民厳しいみたいですね。事故がおこってついてないってのはあるだろうけど。中々難しいね。

鉄鋼と保護主義を考える

2017-07-15 06:28:48 | 政策関連メモ
鉄鋼発「貿易戦争」の懸念 米、輸入制限検討(日経新聞 2017/7/14 20:24)

>米政権が検討する鉄鋼の輸入制限を巡り、トランプ大統領が関税引き上げと輸入割り当てを同時に課す考えを表明した。今回の輸入制限案は安全保障を理由とする異例の措置。世界貿易機関(WTO)ルールの抜け穴になりかねず、各国は対抗措置を検討する。米政権内にはアルミニウムや半導体の輸入制限案もあり、秩序なき「貿易戦争」の懸念が強まる。

>「各国の長年にわたる不当廉売が、我々の鉄鋼産業を破壊してきた」。トランプ氏は12日のフランスに向かう大統領専用機で批判の声を上げた。

>通商拡大法232条――。トランプ政権が輸入制限の根拠とするこの国内法は、安全保障を理由に貿易を差し止める権限を大統領に持たせる。鉄鋼であれば、中国などの不当廉売で国内供給力が落ち、武器製造や防衛技術の維持が難しくなるという理屈だ。政権内には鉄鋼に20%程度の関税を課し、さらに各国の米国内の販売量に一定の枠をはめる輸入割り当ても課す案が浮上している。

>「安全保障による貿易制限はWTOルールの抜け穴となる」。日本の通商担当者は懸念する。米国は通商拡大法232条を基に、イランやリビアからの石油輸入を制限したことがある。WTOルールは一方的な輸入制限を禁じるが、安全保障が理由であれば「例外扱い」にできる。

>ただ、今回検討される鉄鋼制限は、北朝鮮制裁のような安全保障上の差し迫った理由ではない。発動すれば各国の反発は必至だ。トランプ政権内には、鉄鋼だけでなくアルミニウムや半導体まで232条を基に輸入制限しようとする案があり、世界貿易は大混乱に陥るリスクを抱える。

>米国の鉄鋼輸入量は反ダンピング課税の影響で中国製のシェアが急減。上位はカナダやブラジル、韓国だ。6位の日本も中国よりシェアは大きく、輸入制限が発動されれば影響は大きい。欧州はトランプ政権が実行に移せば対抗措置を取ると明言。「米国第一主義」はますますトランプ政権の孤立を招く。

結構、大きなニュースと思うんですけどね。日頃、グローバリズガーと仰っている経済保守の方々はこういう問題にもっと関心を持っていい気がするのですが、筆者の知る限りではそんなこともないようです。良くも悪くもアメリカは物事をハッキリさせ自分の旗を打ちたてるところがあります。曖昧にしたままじゃ議論は進みません。WTOのルールに「最恵国(Most Favored-Nation:MFN)」待遇(ほとんどの国がWTOに加盟していますから、最恵国もクソもないじゃないかということで、アメリカでは「正常貿易関係(Normal Trade Relations:NTR)」ステータスよ呼ぶようになっています。一々論理的な人達です。参考:JETRO「関税制度」)があって、WTO1条には特定国に与えた最も有利な貿易条件は全加盟国に平等に適用することが明記されている(ウィキペディア:最恵国待遇)のですが(EPA/FTAで例外的に関税の低い地域を設けることはできる/WTOルールにはいろいろなルールがあるので、規則を使って保護貿易をすることもできる。アンチダンピングなど)、WTOガーと真っ向から批判するのはトランプに代表されるアメリカ保守派の方々しかいませんから(国連ガーをやるのもアメリカ保守派です。筆者はこちらには結構共感するところがあります)、そもそも論でWTOに文句を言いたいのであれば(口だけでなく実際に改革を目指すのであれば)、アメリカ保守派の動向は注目せざるを得ないところがあると思います。その辺なんですよね。日本のグローバリズムガーを言う人の胡散臭さは。WTOやアメリカ保守の動向を見ずにグローバリズムとやらと戦うことはできるんかなって思いますよね。かといって自分で考えて保護主義的政策を打ち出している訳でもないようですし。貿易に着目せず保護もクソもないでしょうに。

各国の不当廉売が我々の鉄鋼産業を破壊してきたと仰るトランプ大統領ですが、WTO協定で鉄は大体無税なようで(第72類 鉄鋼:財務省貿易統計)(ただし例外を利用した保護貿易的措置はとられてきているようです)、少なくとも関税の観点から不当廉売はないと言っていいと思います。今鉄鋼は明らかな生産過剰局面ですから、値段は必然下がり、それを持って不当廉売と言っているのではないかと思われます(供給過剰以前のことを指しているかもしれませんが、今が大事ですのでここでは取り上げません)。しかし、供給過剰に陥れば企業が値段を下げるのも当然で(近年鉄鋼価格はドル建てで下落傾向にありますが、円高の影響で日本は円建てでは増収になっているようです。参考:鉄鋼業の現状と課題/経済産業省、20p,21p)、直接的には個別の企業の行動を批判できないということにもなると思います。では問題が無いのかと言えば、それも違っていてやはり何故つくり過ぎた?ということにならざるを得ないでしょう。やはり大量生産→価格下げで市場を荒らしてからの価格上げコンボ(ライバルがいなくなれば企業は価格をあげるものだと思います)は不正だということになると思います。結局国民のためになっていない感じですからね。ちょっとでも安い期間があればいいと思うかもしれませんが、そんなお金があるのなら、もっと世のため人のためになることに投資しろよって感じですよね。もしくは社員の給与あげるとか株主に配当するとか何かあるでしょう。それはともかく、中国・韓国の生産過剰は深刻でこれはどうにかしないといけない問題だと思います(参考:鉄鋼業の現状と課題/経済産業省、24p-27p)。中国は圧倒的な需要増を背景に圧倒的な供給増を行っており量的な問題の根源だと言えます。韓国は国内需要減に関わらず生産能力を大幅に拡大しており、わりと悪質な(無謀な)生産拡大を行っているようです。貿易依存だからでしょう(参考:韓国経済と日韓経済関係 10p 外務省アジア大洋州局 日韓経済室)。

中国の生産過剰についてはこんなページ(鉄鋼過剰生産問題を協議するグローバル・フォーラムがスタート(USTR、EU):日本関税協会)(>米通商代表部(USTR)は、2016年12月17日付けのプレスリリースで、鉄鋼の世界的な過剰生産問題を協議するため2016年12月16日ドイツのベルリンにおいてグローバル・フォーラムの初会合が開催されたことを発表しました。このフォーラムは、G20や経済協力開発機構(OECD)の加盟国の併せて30か国を超える鉄鋼生産国が参加して開催されたもので、参加国の鉄鋼生産に占める比率は90%に達するとされています。)があります。あまりにも鉄鋼の生産過剰問題が大きくみんなで話し合っているんですね。こんなページ(【60秒解説】中国の過剰供給が、世界経済にもたらすリスク 経済産業省)もあります。中国の需要増は世界にとって良いニュースとも言えますが、インフラ需要というのもある程度までつくったら結構止まってしまうものではないかと思われ、長期的展望があったのだろうかと不思議に思っていますし、設備稼働率がガクっと落ちていますから見通しが甘かったのも否めないと思います。トランプはWTOのルールの抜け穴をつくようですが、キンペーさんの甘言にのって我々に弾を飛ばしてこないか若干心配なところがあります。その辺は安倍政権が上手くやるんでしょうが。とにかく中国(や韓国)は中国やアジアの需要増(インフラ需要)(世界的なインフラ需要の拡大 経済産業省)を取り込むために生産拡大をやっており、結果どうしようもなくつくり過ぎたというところがあります。これをどう落とすかですが、アメリカの主要輸出品目に鉄鋼はないみたいなんですよね。自国内の需要対応がメインでトランプ大統領はこれを保護しようとしているのではないかと思いますが、輸出をあまりやってないとすると報復は怖くないですから、結構やっちゃうのではないかと思います。まぁアメリカの需要を狙うなら、アメリカに投資してアメリカで生産するような方向性がいいのでしょう。また、例えば日本でしかつくれないような製品があるのであれば、それは例外にしてもらうよう働きかけるとかです。

鉄鋼には「需要家のニーズに即して開発・製造する用途に適した機能を持たせた鉄鋼製品」であるところのハイエンド製品もあるようで(参考:鉄鋼業の現状と課題/経済産業省、11p)、国内の武器製造や防衛技術の維持(安全保障)を理由とした制裁は必ずしも無根拠ではないとも考えられます。保護主義の流れが強まりすぎると(各国が何だかんだで貿易制限すると)アメリカの輸出にも影響が出てきますし、やりすぎないよう言っていかなければならないとは思いますが。

トランプ政権は保護貿易もいいんですが、輸出を増やすためには他所の国に関税を上げられたらダメな訳で、それをさせないためには自らも関税を上げすぎないようにすることが求められているのではないでしょうか?自国産業の保護を理由とした関税上げはそれほど上手い策ではないと思います。報復を招くと自らも輸出できなくなるからです。それでいいのではないかと思うかもしれませんが、同じような製品ならともかく、比較優位の原則を考えると互いの優れた製品を交換していくのが経済の基本ですから、そういう基本から外れないよう注意しないといけないと思います。

アメリカは自由の国ですから、あまりピンとこないのかもしれませんが、歴史の基本的知識のある日本人は中世に関所(ウィキペディア)を設けて関銭(ウィキペディア)(通行税)を徴収し、自由な交通を阻害し日本経済の発展を自ら抑えた(それでも地方領主にとっては重要な収入源で個別の合理性はあった)というような知識があります(織豊政権で関銭は廃止されて後の近世の経済発展が起こった)から、わりと関税は不味いなという基本的イメージがあります。保護貿易で世界恐慌はおこったとも言いますし、作り過ぎでダンピングして市場制覇みたいな戦術は勿論十分警戒・対策する必要があると思いますが、各国公正・公平な競争をして優位にあるものを互いに輸出入するという基本線は守った方がいいのではないかと思います。それがアメリカ輸出産業のためでもあるでしょう。
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