日常

ドン・ミゲル ルイス「四つの約束」

2013-02-28 01:46:12 | 
ドン・ミゲル ルイスの「四つの約束」コスモスライブラリー (1999/04) を読みました。


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<内容(「BOOK」データベースより)>
カスタネダの流れをくむドン・ミゲル・ルイスは、古代メキシコの「トルテック」の智恵にもとづいて、われわれを覚醒させ、人生をすみやかに変え、真の自由と幸福をもたらすことができる力強い教えを『四つの約束』としてまとめた。
発売後、全米で『神との対話』を抜いてこのジャンルでベストセラーとなった本書は、
人生を暗くし、不必要な苦しみを生む元になっている様々な自縛的信念を明るみに出し、われわれを広々とした明るい世界へと誘う。
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ドン・ミゲル ルイスは、父がシャーマン、母がヒーラーという特殊な家系。
親への反発からメキシコで外科医となるも、交通事故で臨死体験を体験。
その後、古代の祖先の智慧(トルテック)を元に自己探求を始め、このような本を書くようになったとのこと。
こういう作者の人生遍歴は、興味深いです。
どんな人にもそれぞれのオリジナルな人生があるものです。臨床にいれば、それは日々感じます。



この本は、平易な言葉で人間の心理が細やかに記載されていました。
まるで自分の心の動きを丁寧にトレースするようで、とても勉強になる本でした。


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<目次>
序文:smoky mirror(煙に覆われた鏡)
第1章:飼い慣らしと地球の夢
 新しい夢の始まり
第2章:第1の約束(agreement):正しい言葉を使うこと
第3章:第2の約束(agreement):なにごとも個人的に受け取らないこと
第4章:第3の約束(agreement):思い込みをしないこと
第5章:第4の約束(agreement):常にベストを尽くすこと
第6章:トルテックの自由の道 古い合意を破ること
 変容の技術:第二の意識
 戦士の訓練:自分の行いを支配すること
 死への入門:死の天使の抱擁
第7章:新しい夢 地上の天国
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本の目次は、ほとんどがその本の要約(アブストラクト)。
目次をじっと読みながらイマジネーションを膨らませると、本を深く読み込める。
目次の言葉から自分の中で最大限に喚起されるイマジネーションやメージ。可能な限り膨らませる。
その後に、本文を読んだ後での自分のイメージとの違いを考えてみる。
そうすると、作者と自分との言葉から喚起されるイメージの差異がはっきりする。
その差異の段差こそが、自分のイメージ世界や意識世界も拡大し深めていくような気がします。
そういう意味で、自分の常識や偏見をずらしてくれる本こそ、面白く読めたりするのは不思議なところ。

この本の作者からは、妙な親近性を感じつつ、その平易な表現の絶妙さが心地よかったです。





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信念の95%は嘘以外の何ものでもない。苦しむのは嘘を信じているからなのである。
必ずしも悪夢を見つ必要はない。心地よい楽しい夢を見ることも可能なのだ。
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序文の中のこういう言葉で始まります。

ブッダは、「夢」から覚めることを繰り返し説きました。
ただ、一般的には「夢」から覚めるのは難しいものです。現実的な問題として、社会的な「夢」は社会的な規範やルールと連続している事が多いからです。
ただ、もし夢から覚めることができなくても、作者は悪夢を見るのではなく、心地よい夢を見るように選択することを示唆しています。


この本では4つの約束(agreement)が書いてあります。


●「正しい言葉を使うこと」
●「なにごとも個人的に受け取らないこと」
●「思い込みをしないこと」
●「常にベストを尽くすこと」


この4つの約束(agreement)それぞれについて細かく述べられます。
これは本のタイトルにもなっているので、それぞれが非常に大事な意味を持っています。

上の4つも表面だけ見ると簡単なことのように思えます。
大切なことはたいてい簡単なことで、幼稚園や小学校で学ぶようなことがほとんど。

ただ、僕らはそのことが心の奥深くに染みいられないと納得できないようです。行動として生き方として選択できません。
心深くに液体が染み込むように一体化しないと(血肉化しないと)、その言葉はただの音の響きとして虚空の中に消え去っていきます。人間の心はそういう不思議な性質を持っていますが、そのことを熟知しているかのように、それぞれのポイントが簡潔に述べられます。



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■第2章:第1の約束(agreement):正しい言葉を使うこと
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言葉は純粋な魔術であり、間違った言葉を使うことは黒魔術(black magic)なのだ。
正しいということは罪がないということである。罪とは、自分が自分に対してそむくような行いの全てである。

自己拒否は死に至る大罪である。
言葉のあやまった使い方が、地獄の夢を作り出している。
ゴシップは黒魔術の中でも最悪のものである。それは全くの毒だからだ。
コンピュータウイルスはコンピュータ言語で書かれているコードだが、その意図は邪悪なものである。
このコードは気付かないうちに、あなたのコンピュータプログラムに入られる。そうすると、正常には作動しなくなるか、全く機能しなくなる。
人間のゴシップも同じような働きを持つ。
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ほんの小さい間違い情報が、人々の間のコミュニケーションを分裂させ、それにふれる人はみんな感染し、他の人に伝染していくのである。
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ウイルスを通して世界を見ると、どんな残酷な行動も許されるような気がしてくる。簡単に正当化できるのである。
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正しい言葉を使えば、感情的な毒が浄化されてくる。
正しい言葉を使っていると、どんな人からも否定的なまじないをかけられなくなる。
否定的な考えを受け取るのは、あなた自身の心がそうした考えに満ちた土壌だからである。

たった今、私はあなたの心に種を播いた。
その種が無事に育つかどうかは、あなたの心が愛に満ちた土壌であるかどうかによる。
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言葉を正しく使うこと、言葉を愛を分かち合うことに使うことは、白い魔術(white magic)を、まず自分から自分に対して使い始めることである。
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→仏教の八正道でも「正語」ということが挙げられます。
正しく言葉を使う事。
誤った言葉は、人を介して毒として世界を流転してゆく。それはまるで黒魔術のよう。

毒は、撒く人と、受け取る人がセットで成立する。
同じように、薬も、撒く人と、受け取る人がセットで成立するのです。


単なる言葉だけで、人間の感情や心のあり方、ひいては生き方まで変わってしまう。なんとも不思議なものだ、と思います。
それはまるで魔術的なものです。


作者は、言葉が持つ不可思議な魔術性をよく理解し、その上で白魔術(white magic)としての言葉を使うように推奨します。
例えば、「ありがとう」という言葉は、自分が受け取っても相手に与えてもまさに白魔術(white magic)の言葉だと思いますね。黒魔術(black magic)の言葉は、あえて挙げる必要もないほど、この現実世界もネット世界も、氾濫しています。



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■第3章:第2の約束(agreement):なにごとも個人的に受け取らないこと
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自分のこととして受け取るのは、言われたことに合意するからである。
合意した瞬間、毒はあなたに回る。

前提となっているのは、全てのことは自分に関することだ、という思い込みである。
私たちひとりひとりの住む世界は全く違うのである。
誰かがあなたを侮辱しようとも、それはあなたとは関係がない。
彼らが何を言い、どんな考えを持とうと、それは彼らが自分の心の中で結んだ合意によるのである。

その人があなたに毒を送り、あなたがそれを自分のものとして受け取ったとすれば、その毒はあなたのものになる。
いともたやすく黒魔術(black magic)の獲物になる。
地獄の中で毒に対して平然としていられること、これが第二の約束の成果である。
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あなたが物事を自分のこととして受け取ろうとすると、あなたは怒り、自分の信念を守ろうと反応して、葛藤を作り出す。ささいなことを大きくする。
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人間というのは違ったレベルで、違った程度で、苦しみに中毒している。
そして、私たちはお互いにこの中毒を支え合っているのである。
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全てを自分のことして受け取らないという強い習慣をつけいれば、人生の多くの混乱を避けることができる。
怒り、嫉妬、羨望などは消えていくだろう。
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→個人的に受け取ると、その言葉が持つ強度を一人で背負うことになるので、その重みにつぶされてしまいます。
それほど、言葉というものには歴史があり重みがあります。
言葉とはそういう普遍的(Universal)なもので、個人的(Private, individual)なものではないのでしょう。



このことは、正しい言葉を使うことにも通じます。
人のおしゃべりや噂話、悪口、文句。
そこに深い意味はありません。宇宙の真理でもありません。
発する人の毒が外にあふれただけですが、受け取る側は過剰に個人で受け止めてしまうものです。

誰かが発する毒は、その人自身のものです。こちら受け取り手のものではありません。
その人が内部の毒を浄化している無意識のプロセスのようなものだと思います。こちら側とは無関係だと思った方がよいでしょう。

自分のことは自分がよくわ分かっているし、同時に良く分からないものです。
それは、相手もそうでしょう。誰かが自分に対して発する言葉もそうでしょう。当たっている時も外れている時もあります。

だから、相手から発せられる言葉を個人的に受け取ることは避けた方がいいのでしょう。
個人的に受け取ってしまうことは、相手の毒杯を受け取り、その杯を残さず飲み干すことに通じるのでしょう。



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■第4章:第3の約束(agreement):思い込みをしないこと
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私たちはほとんど全てのことに思い込みをする癖がある。

人間の間に起こるあらゆる支配や服従という問題は、思い込みをして、物事を個人的に受け取ることから来るのである。
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相手に質問する方が、思い込みをするより良いことを覚えておいた方がよい。
なぜなら、思い込みは苦しみを招くからである。
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人間の心が働く仕組みは大変面白い。
私たちは、安心するためになんでも正当化し、なんでも説明し、なんでも理解しようとする。
大事なことは答えが正しいかどうかではない。どんな答えでも、それ自体で私たちを安心させることなのである。
だから私たちは、思い込みをするのである。
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人間の全ての問題は、私たちがはっきりとした誤解のないコミュニケーションを行えば、解決できるのである。
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あなたは、自分の言葉で自分が黒魔術師から白魔術師に変容することが分かる。
白魔術師は、作り出すため、与えるため、分かち合うため、愛するために言葉を使う。
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人間は、自分の心の平穏を求めます。心がどういう形でもいいので、何か安定するため安心するために、それに見合った言葉を欲するものです。

それはたいてい無意識のプロセスとして、生物の心の進化のプロセスとして心に組み込まれているメカニズムです。その仕組みは、個人的な思いこみや偏見の檻の中に、自分が自分を閉じ込めて不自由になる危険性も認識していなければいけないと思います。

互いが互いの考えや心の中を勝手に思いこみ、その思いこみの上に何百階にもわたって思い込みを積み上げていくので、その度に誤解は途方もないものとなります。まずそのことを認識しないといけません。
そのことを、【人間の全ての問題は、私たちがはっきりとした誤解のないコミュニケーションを行えば、解決できるのである。】と表現しているのだと思います。とても心強い言葉です。



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■第5章:第4の約束(agreement):常にベストを尽くすこと
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常にベストをつくすことはそれ以上でもそれ以下でもない。そして、あなたのベストは瞬間によって違う。
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ベストを尽くしていれば、あなたが自分自身を裁くことはなくなる。
いつもベストを尽くすことで、あなたは自分がかかっているまじないを破ることができる。
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ベストを尽くすということは行動することであり、それはあなたが行動を愛しているからであって、報復を求めているからではない。
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ベストを尽くした場合、「裁判官」が「法の書」に基づいてあなたを裁こうとしても、ベストを尽くした、と言うことができる。
そこに後悔はない。だから私たちは常にベストを尽くすのである。
これは簡単な合意ではないが、しかしこの合意こそが。あなたを自由にするのである。
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あなたは、生きることによって、自分と他人を愛することによって、自分自身の神性を表現する。
それは、「あなたを愛している」という神の表現なのだ。
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→自分も、日々ベストを尽くすようにしています。
ベストを尽くす、とは、固定化したものではありません。今日が人生最後の日だと思って悔いのないように生きることだと思います。

自分が自分に対して言い続けている言い訳は、周りからは全く見えませんが、脳内がシースルー構造になっていれば、いかにその作業に多大なこそ、他者から見て不可解なことはないだろう。
そんなことに自分の内的エネルギーを費やさないようにしたいものです。

ベストを尽くすことさえ考え続け、行動し続ければ、いろんなものから自由になれるような気がします。
あまり複雑なことを考え続けるほど、人間の脳の性能はよくないかもしれないので、なんでもシンプルに単純に考えた方が自分への負担も少なくなる気がします。



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■第6章:トルテックの自由の道 古い合意を破ること
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本当の自由とは、人間のスピリットに関わっている。
それは私たちがありのままの自分であることの自由である。
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2,3歳の子供たちは自由である。望んだことをなんでもするからである。たいがいいつも笑っていて、いつも楽しそうである。
子供は世界を探検している。不満を示すが過去に悩んだり未来を心配したりしない。いつも現在に生きているのだ。

子供たちはとても愛情に満ちているので、愛を受けるとその中に溶け込んでしまう。愛することを怖がらない。これこそお正常な人間の在り方である。
わたしたち普通の人間の性質は、人生を楽しみ、遊び、探索し、幸福であり、愛することである。
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自由への最初のステップは気付きである。
自由になる為には、自分が自由でないことに気づかなければならない。
問題を解くには、問題が何なのか気付かなければいけないのである。
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→自分が人生に於いて追及しているテーマは「自由」と「創造」です。

「自由」になるには、まず「不自由さ」を生みだしているものに気付かなければいけません。

「不自由さ」を生みだしている原因を外的な何かのせいにしがちですが、ほとんどは自分の中にあるものだと思います。

内部世界は目に見えないので、外部世界に投影していることが多い。それはとりあえずの解決を見ることができるので、手っ取り早くそういう風にしておくのでしょう。それを無意識に続けていると、その習慣や癖にさえ、気付けなくなります。
まずそういう心の構造やメカニズムに気付かなければいけないのでしょう。




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トルテックになるには、習熟しなければならない3つの技(アート)がある。
まず気づきのコントロールである。自分が本当は誰であるのかを、その全ての可能性とともに気がつくことである。
第二は、飼い慣らしのプロセスをいかに変え、そこから自由になるか、という変容の技術をマスターすることである。
第三の道は、「意図」をマスターすることである。意図とは、それ自体生命であり、無条件の愛である。
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誰かを許すと、その誰かに会った時感情的な反応が起こらない。
そのことで、人を許したとわかる。誰かがかつてはあなたの傷であったところに触れても、もはや傷つくことはない。そのことであなたは本当に許したと分かるのである。
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真実は鋭いナイフのようなものである。真実とは痛いものである。
なぜなら、それは嘘によって覆われている全ての傷口を開いてしまうからである。
嘘という否定のシステムを持つことは酔いことでもある。傷口を覆い隠して活動できるようにするから。
しかし、傷や毒を持っていないときには嘘を続ける必要はない。健康な心は、健康な皮膚と同じように傷つくことなく、触れることができるからである。心がきれいであれば、触れられることは心地よい。
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→「真実は劇薬、嘘は常備薬」という言葉を思い出します。
嘘も真実も「薬」には違いありませんが、僕らは無意識に自分の心を守るために使い分けているのだと思います。


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個人の自由を獲得する最後の道は、「死への入門」に備え、死それ自体を自分の師とすることである。
死の天使は、私たちに毎日を人生最後の日として生きることを教える。
私たちは毎朝こう言ってその日を始めることができる。
「さあ、目が覚めた。太陽が出ている。私は、太陽、全てのもの、全ての人に感謝を捧げよう。
私は生きているからだ。もう一日、私は生きるからだ。」
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→自分も日々、こう考えています。だからこそ驚きました。
「2013年1月10日」(2013-01-10)にも書きましたが、自分は子供のころ大病をしています。全身のヘルペス感染症で、口からものを食べることができず、1年くらいは鼻からチューブで栄養を送られて生きていました。それ以降、死を生の中に内在化するようになった気がします。仕事でもそういうことを日々感じますが。

生きていることは、それ自体で奇跡的ですし、
生きていることは、それ自体で前向きなことなのだ、と思います。

それは、死と生を一体化して考えないと分かりにくいのですが。


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■第7章:新しい夢 -地上の天国
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あなたの生きている夢は、あなたが作り出したものである。
それは、あなたがいつでも変えることのできるあなたのリアリティに対する受け取り方なのである。
リスクを負うこと、充分に生きることを恐れない人生を想像してみよう。
あなたは失うことを恐れない。あなたは世界でイキイキと生きる。そして、死ぬことを恐れない。
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何千年にもわたって人間は幸福を求めてきた。
幸福とは、失われた楽園である。それは心の進化の一部である。それは人間の未来なのだ。

こうした人生は可能である。それはすでにあなたの手の中にある。
モーセはそれを約束の地と呼んだ。ブッダは涅槃(ニルヴァーナ)と呼び、イエスは天国(へヴン)と呼んだ。トルテックは、それを新しい夢と呼ぶ。
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すべては「すでにあなたの手の中にある」のだと、自分も思いますね。

だからこそ、一番盲点になる自分の手の中を、自分の心の中をこそ正しく見つめることこそが、すべてのはじまりになるのでしょう。
はじまりは、常に今・ここにあるもので。それは禅でも繰り返し述べられます。

Nowhere=Now+Here
言葉の不可思議な世界を感じます。



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118ページで薄い本なので一気に読める本ですが、古代の智慧が詰まったとても勉強になる本でした。
さすが、山川ご夫妻の「30冊の本」PHP研究所 (2011/12/10) で薦められてある本なだけあります。とてもいい本でした。興味をもたれた方は、是非買ってお読みくださいませ。