日常

映画「Life is beautiful」

2010-04-11 17:06:26 | 映画
最近は夜中まで病院にいたので、なかなか趣味の時間がとれなかった。

今日は久々に時間が取れたので、ふと思い「 Life Is Beautiful」(La vita è bella)を観てみることにした。

「Life Is Beautiful」は1997年のイタリア映画。当時見て、すごく感動した覚えがあった。
「すごく感動した」感覚だけは覚えてても、何にどう感動したのか、内容をスッキリ忘れていたので思い出すように観た。


改めて見て素晴らしかった!!
何度も何度も号泣。
映画でも本でも、心に残った作品をもう一度見かえすことは、全体像もわかるし、ディテールまでも丁寧に味わえる気がします。


・・・・・・・・・・
今回10年ぶりくらいで見てみて、1997年当時に観た時と感動の質が変わっていたのを感じた。かなり深くドスンと来た。

あまりにも素晴らしい映画! 
自分の中でベスト5に入ると思う。
(他は、「七人の侍」とか、「dancer in the dark」とか、「カッコーの巣の上で」とか。好きです。人に誇るほどは映画を見てないのですが・・・)



強く感じたのは、ユーモアや笑いには、モヤモヤした閉塞感とか不安や出口のない絶望、そういう困難な状況を突き抜ける可能性があるということ。

戦争を辛い物語として、虐殺を辛い物語として語ることも大事かもしれない。
ただ、当事者としては、辛いことを辛い辛い・・・と語り続けることで、得ることは少ないかもしれない。


知性や理論は無力なことが多い。自分で自分の首を絞めることもある。
張りつめた糸も、適度に緩ませないとプツンと切れる。
笑いは、そんな緊張に対する緩和として働く。



深い絶望や深い挫折、生きているといづれ必ず出会うだろう。

ただ、そこでユーモアや笑いの感覚を忘れないことが大事だ。余裕がないと笑うことすらできない。

笑顔は、人だけでなく、自分へも影響を与えるのだと思う。
自分の顔は、他者に対する自分の窓。それは他者と自分とが往来する大事な通路。


自分が医学生の時、何気なく言われたことがある。
「どんなに寝てなくても辛くても、患者さんの前に行く時は笑顔で行くものだ」
普段は怖い先生が、こわばった笑顔で真剣に笑顔で言ったことを、妙に覚えている。


そこは、移植治療をしている現場だった。夜中も医者が4時間毎に採血をしていた。早朝から夜中まで手術は20時間以上に及ぶこともあった。最も過酷な現場で自分も辛かっただけに、妙に脳に深く刻印された気がした。



医療の現場は生と死が入り混じるだけに、殺伐としてくることがある。
現場が全体的に「なんとなく、不安」「よくわからないが、不安」というような漠然とした心理状態に巻き込まれていくことが多い。


「不安」というものは、「なにか」に不安を感じるというよりも、「不安」という漠然とした感情が先に存在していて、それを「なにか」と結び付けてしまうんじゃないかと思う。結びつけて安心して、「不安」から逃れようとする。


だから、「死」に「不安」を感じているのではなく、「不安」という感情が先にあり、それは「死」と結びつきやすい。だから、「死」を「不安」だと誤解する。実際は、「不安」を勝手に「死」という漠然とした概念と結びつけただけで。


だから、医療の現場では適度に笑いが必要なのだと思う。不謹慎ではない程度に笑いを混ぜる。そこには高度なプロの技が必要とされる。
だから、自分も患者さんと話すとき、言葉選びやタイミングに十分注意を払いながら、ユーモアを交える。


患者さん自身もその家族の方々も。周りの看護師さんもそれ以外のスタッフにも・・・一緒にいるみんなが不快にならない笑いを考えることは、高度なプロの技術だと思う。
思わず笑みがこぼれるものを提供できるのもプロの技。




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人生を素晴らしいと思うのも自分だし、素晴らいと思えないときがあるのも自分。
最高だと思える時もあれば、最低だとしか思えない時もある。

ただ、笑いやユーモアさえあれば、「不安」も、モヤモヤしたものも解消されると思う。
逆にいえば、「不安」があるときは、笑いやユーモアを欲しているとも言える。おなかが空いたときにご飯を食べるようなもの。



心の底に不安を抱えていても、自分の心にユーモアさえ忘れなければ人生は素晴らしい!(Life Is Beautiful!)。

人生を悲劇ととるのか喜劇ととるのか。
それも僕らの自由。
だからこそ、自分は人生を大いなる喜劇と取りたいと思うのです。

4 コメント

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初めてコメントさせていただきます。 (新介)
2010-04-13 20:43:11
高校の後輩の中川新介です。

ABCサークルの四代目代表だった者です。

いつも勝手に読ませていただいております。
毎回、知的好奇心をくすぐられる内容で、楽しく読んでます。

私も、Life Is Beautiful大好きなので、コメントさせて頂きました。

いなばさんのような人が医者にいるというだけで、病院に行ってもいいかなって思うことがあります。

毎回会ってはいるんですが、人見知りな性格故に中々、自分から話しかけに行くのが難しかったです。今度は必ず話しかけに行きます。

長文失礼しました。

プロのお笑い! (いなば)
2010-04-14 13:55:52
>>>新介様
どうも。ここではお初ですね。
見た目が話しかけにくいオーラを放ってるかもしれませんが、基本的に開放系の人間なので心配せずに話しかけてください。笑

なかがわくんも、吉本でプロのお笑いやってるわけだからねぇ。
特に笑いとかユーモアとか、人一倍こだわりあるだろうし。

わしは松本人志ラブです。
映画はあまり納得できなかったけど(しんぼるとか)、それ以外のDVD(ビジュアルバムとか、一人ごっつ)とかは、ほんと名作だと思うし。


今気になるのはやはり太田光ですねぇ。
彼は毒を吐きつつ、教養を織り交ぜつつ、常にオリジナルでかつベタな笑いをつくっていて、ほんとスゴイなぁって思う。

悲劇を、喜劇に反転させる力があるのよね。
チェーホフっていうロシアの作家ってのは、けっこうそういう人です。

新潮文庫の『チェーホフ・ユモレスカ―傑作短編集』とか読むと、いかに彼が笑いとかユーモアを大切にしてたか分かる。共産主義とかスターリンとか、暗い社会をドストエフスキーのように暗く深くえぐりだす人も必要だけど、チェーホフみたいに、少しだけ笑いですかして、でも完全なニヒリズムに陥らないように暖かい感じでユーモアを出すってとことかね。


お笑いの仕事も大変でしょうけど、やっぱ笑いってすごく偉大な仕事だと思うんで、吉本でがんばってね!
M-1グランプリに出てくるのを、年末楽しみにしていまーす。
ユーモア (みみ)
2016-02-29 01:14:57
「Life Is Beautiful!」を
当時映画館で観ました。

心の底に不安を抱えていても、自分の心にユーモアさえ忘れなければ人生は素晴らしい!(Life Is Beautiful!)。
本当にそうですね。
笑いは本当に大切ですね。

「ユーモアや笑いには、モヤモヤした閉塞感とか不安や出口のない絶望、そういう困難な状況を突き抜ける可能性があるということ」
いなさんの思いと同感です。

現代は世界中がテロや内戦でおびえて
もやもやした感情、ストレスが増えています。

あたたかい雰囲気や
節度のある笑いやユーモアは
欠かすことのできないエッセンスですね。



Unknown (INA)
2016-04-22 16:27:47
ユーモアや笑い、というのは、何か閉塞した構造を打破する力があって、固くなった体や心も緩める働きがあって、心身に最初から備わっている深い叡智だと思います。この映画は本当に名作ですね・・・。