在イタリア、ソムリエワインノートとイタリア映画評論、他つれづれ appunti di degustazione

ソムリエ 20年、イタリアワインのテイスティングノートと、なぜか突然のイタリア映画評論、日本酒、日本茶、突然アートも

イタリア映画の紹介 A Ciambra di Jonas Carpignano チャンブラ通り

2017-12-19 19:52:31 | 何故か突然イタリア映画
A Ciambra チャンブラ通り
監督 ジョナス(ヨナス)・カルピニャーノ



チャンブラは、通りの名前。
イタリアの南、カラブリア州のジョイア・タウロという町のはずれにある。

ジョイア・タウロというと、カラブリアのマフィア、ンドランゲタの巣窟の一つとして有名な港町。
しかし、今回は、ンドランゲタは出てこない。
ロマ(イタリア後でロムRom)の話である。

ロマは、主に、貧しい東欧、ジプシー系の人たちを指す。
ただ、単純にジプシーとは言えない。
定住生活をしているグループも多いし(ジプシーだから放浪するとは限らない)、イタリア人だし、ロマにもいろいろな系統があり、上映終了後の監督インタヴュー中、イタリアには22の系統がある、との意見も出た。(ロマについて書いた本によるそう)

ただ、映画の中の会話で、「あなたジプシー?」と聞かれ、主人公の少年が、ちょっと考えてから「そう」と答える場面があるように、一応ジプシーと言っていいかもしれない。

ロマ(ジプシー)の起源はインドで、1000年ごろヨーロッパにやってきた民族との話。(ゴールデン・グローブ委員会からの説明)
つまり、今話題の難民、移民ではなく、1000年前の移民たち、である。

そう、極端に言えば、私たちも移民、難民だったわけだ。




さて、この映画が来年(2018年)のオスカー、外国語映画賞のイタリア代表作。

監督は、33歳で若く、父親はイタリア人、母親はアフロアメリカンで、肌の色が小麦色。
おじいさんも監督をしていたらしく、小さい頃から映画の話で育ったとの話。
また、このあたりに住んだことがあるというのが、ジョイア・タウロを場面に選んだ理由の一つ。

ドキュメンタリーが得意な監督、登場人物はみんな実名で、ドキュメンタリー風の作りになっている。

少年が大人になる過程を描きたかった、との意図があるそうだが、それにしても、ロムを選ばなくても、とは思うのだが、だからこそ、異風な作品に仕上がっている。

ピオは14歳の少年。
でも、タバコもお酒も、そして車の運転までしてしまう。
まだ端くれだが、泥棒、恐喝、お金を稼ぐためならなんでもする。

ところが、兄と父親が窃盗でつかまり、ピオに一家(すごい数)を支える使命が託された。

実際に監督が、この地域で車を盗まれ、恐喝にあったことからピオとその一家と知り合ったのだそう。

いやー、盗んでも幾らかで返してくれればいいが、列車の中で、スーツケースごと盗られ、PCなどを売り飛ばされたらたまらない。

個人的に、盗難には何度もあっているので、他人事ではない。

そこで、個人的に頭にくる場面もあったわけだが、ちょっとでも興味があるのであれば必見。

オスカー候補作ということで、日本でも公開されるのではないかと思う。

オスカーを取ると思いますか?の質問に、

いやー、取ることはないと思いますよー

との回答。

昨今の難民問題がクローズアップされる中、ロマに焦点を当てたところが考えさせられる。

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