フィクションのチカラ(中央大学教授・宇佐美毅のブログ)
テレビドラマ・映画・演劇など、フィクション世界への感想や、その他日々考えたことなどを掲載しています。
 



 10~12月気のテレビドラマについて何回か書いてきましたが、今回は23時以降に放送されている、いわゆる「深夜枠」ドラマについて感想を書きたいと思います。
 深夜枠作品は、20~22時頃に放送が始まるテレビドラマ作品に比べて、視聴率がとれないのが普通です。とはいえ、だからこそ実験的で個性の強い作品が放送されることもあり、なかなか侮れない要素があります。たとえば、TBS系列の深夜枠ドラマ『深夜食堂』やテレビ東京系列で23時台に放送されてきた『まほろ駅前便利軒』、『孤独のグルメ』などは、プライムタイム作品以上の人気シリーズになりました。今回はどうでしょうか。


警視庁 ナシゴレン課   2.6%→2.1%→2.7%→2.4%


 「ぱるる」こと島崎遥香が警視庁の課長役で主演する警察ドラマ。とは言っても、舞台はもっぱら室内。ぱるる演じるデカ長はその推理力を発揮して、警視庁の1室からまったく出ずに事件を解決します。古田新太、勝村政信、猫背椿らが、ぱるるの脇をしっかり固めています。
 途中でぱるる中心の歌の時間が入るなど、さながら島崎遥香一座の芝居興行。小劇場で大衆演劇&歌謡ショーを見に行くつもりで視聴するのがよいでしょう。

 コック警部の晩餐会  1.9%→2.3%→1.9%→1.6%

 独特の個性を持つ俳優・柄本佑が主演するドラマ。警察ものとグルメものの融合がはかられており、その意味では一つのドラマで両方見られるお得な作品といえます。謎解きがすべて料理・食べ物にかかわっているというのも興味深いものがあります。
 ただ、柄本佑はとてもいい俳優ですが、「味にこだわり、自ら料理の腕もふるいながら、謎解きをする名警部」という役柄に似合うかどうか。柄本佑は、どちらかというと陰を持った複雑な性格の人物を演じるのに優れた俳優だというのが私の意見です。、『あさが来た』の眉山惚兵衛や『遅咲きのヒマワリ』の松本弘樹のような役柄を演じたとき、その個性がいかんなく発揮されるように思います。その点で、ドラマとしては、謎解きのときの痛快感がもう少し出てくることを望みたいところです。


 黒い十人の女  3.1%→3.9%→3.8%→2.5%→3.6%→3.7%→3.4%

 『素敵な選TAXI』などのヒットをとばし、すっかり脚本家としての評価を固めたバカリズムの新作。この作品も、他の作品にはない設定で、おおいに楽しめます。
 テレビ局の中年プロデューサー風松吉(船越英一郎)には妻と9人の愛人がいる、というぶっとんだ設定。主要な女性登場人物が10人もいたら、雑になるところも出そうに思うのですが、いずれも個性を持った重要な人物として活かされています。また、コップの水を相手の顔にかける、といった、女性同士の争いには定番シーンだけではなく、愛人同士で強烈なとっくみあいの喧嘩ををするわ、心の中で他の女性に毒づくわで、女性の愛憎の恐さが鮮烈に描かれています。


勇者ヨシヒコと導かれし七人  4.0%→3.5%→3.2%→3.9%→3.7%


 2011年から始まった「勇者ヨシヒコ」シリーズの第3作。これまで同様に、「低予算」かつ「ゆるーい」雰囲気で制作されています。また、RPGゲーム「ドラゴンクエスト」のパロディ要素が各所に盛り込まれているのも、従来通りです。
 ゴールデンタイムで放送するような作品を深夜枠で追いかけても仕方ないでしょうから、深夜枠はぜひこういう深夜枠ならではの作品を制作していってほしいもの。また、監督・脚本の福田雄一の作品は、プライムタイムの作品よりも深夜枠作品の方が実験的で面白いと思います。


家政夫のミタゾノ 8.2%→6.7%→7.5%

 大ヒット作『家政婦のミタ』(日本テレビ系)のタイトルは、もちろん『家政婦は見た』(テレビ朝日系)をもじっています。もちろん、内容はぜんぜん違いますが、長年親しまれた『家政婦は見た』の知名度は一定の役割を果たしました。今度は本家のテレビ朝日系が、再度もじり返すという「報復」に出た(?)というわけです。
 内容は、松岡昌宏演じる女装の家政夫の各家庭での活躍を描くもの。家事に関しては完璧、というよりももうこれはスーパー家政婦!この点は『家政婦のミタ』に近いと言えます。しかし、毎回異なる家庭に家政婦として入っては、その家の秘密を「覗き見」してしまうところは、元祖『家政婦は見た』を踏襲しています。
 つまりは、元祖『家政婦は見た』+『家政婦のミタ』=『家政夫のミタゾノ』という図式が成り立つようです。となると、『家政婦のミタ』にあった主人公の秘密にあたる要素もあるのか?毎回の問題解決に加えて、ミタゾノの過去にも興味をひかれます。


とげ 3.6%→3.6%→2.7%→2.3%→3.1%

 主人公は市役所勤務の倉永晴之(田辺誠一)。真面目だけれど、ちょっとつまらない人物。市民相談室係長の倉永には、市民からの要望や苦情が次々に届きます。近年「モンスターなんとか」という存在が取りざたされますが、まさにモンスター市民からの無理難題の数々。市役所の若い職員も自分勝手な言動ばかり。それらに倉永がどのように対するのか。
 企画の意図はよくわかるのですが、倉永が立ち上がるまでが長くて、それまで「やられっぱなし」なのがじれったすぎます。なんでいつまでも対抗手段をとらないのか、私は少しいらいらしてしまいました。我慢する期間が長いほど行動の意味が高まるとは思いますが、視聴者は倉永のように我慢強いかどうか。


 潜入捜査アイドル・刑事ダンス  2.0%→1.6%→1.4%→1.0%→1.7%

 深夜0時台の放送ということで、視聴率は高くありませんが、私は、毎週このドラマを楽しみにしています。
 主人公は、25歳の新人刑事・辰屋すみれ(中村蒼)。ちなみに、名前は「すみれ」ですが、男性です。彼は芸能界の犯罪を捜査するために、集められた他のメンバーとともに5人組のアイドルグループ「デカダンス」を結成し、毎回、テレビ局などに潜入捜査をおこないます。
 初回は「歌番組」、第2回は「トークバラエティ番組」、第3回は「サバイバルゲーム番組」に潜入します。いわゆる楽屋落ちのような裏話が多く、テレビ局、芸能界のパロディが満載です。その徹底したバカバカしさが爽快です。
 主演の中村蒼はかつては爽やかな二枚目役を多く演じ、その後『無痛』では複雑な事情をかかえたスキンヘッドの入院患者という難しい役を、『せいせいするほど愛してる』では主人公(武井咲)に猛烈アタックする王子様のような関西弁の青年役を演じました。どんな役もこなせる若手演技はとして評価の高い中村にこの役をやらせていいのかとも思いましたが、コメディもできるなら鬼に金棒かもしれません。
 深夜枠ならではのコテコテのコメディをおおいに楽しんで見たいと思います。


 途中にも書いたように、深夜枠でプライムタイムと同じような作風を追究しても面白くありません。深夜ならではの。とがった作品を今後も見せてくれることを期待したいと思います。




※このブログはできるだけ週1回(なるべく土日)の更新を心がけています。



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