フィクションのチカラ(中央大学教授・宇佐美毅のブログ)
テレビドラマ・映画・演劇など、フィクション世界への感想や、その他日々考えたことなどを掲載しています。
 



 テレビドラマへの感想を書く恒例の回の3回目です。

 前回書いたように、10数年ぶりにインフルエンザにかかりました。人にうつさないように出校停止となっていましたので特に大きな出来事はなく(なんだか停学処分をくらった学生のような気分です)、恒例のテレビドラマ批評をすることにしましょう。
 これまで2回既に書きましたが、まだ感想を書いていなかった作品について書いていきたいと思います。

『フラジャイル』 (水曜22時、フジテレビ) 9.6%→10.0%→10.0%→9.7%→9.5%

 原作は草水敏(作)恵三朗(絵)によるマンガ作品。
 主人公の岸京一郎(長瀬智也)は病理医。臨床医から病理医に転向する若手医師の宮崎 智尋(武井咲)の目から見た病理医の世界が描かれていきます。
 推理もの・警察ものほどではないにしても、病院ものはこれまでにも数多く制作されてきました。これはもう国を問わず、テレビドラマのヒットジャンルの一つ
です。ところが、そのほとんどは、臨床医を主人公にしています。当然でしょう。病院を舞台にするのは、そこにかかわる生と死のドラマを描くためであり、そのためには患者の生死とより密接にかかわる臨床医であることが求められます。
 しかし、この『フラジャイル』の特徴はあえてその臨床医ではなく病理医たちを中心人物にしていること。そして、脚本は橋部敦子です。
 橋部敦子と言えば、『僕の生きる道』シリーズをはじめ、『僕のいた時間』『遅咲きのヒマワリ』などのいわゆるヒューマン・ドラマを数多く手がけた名脚本家です。しかし、そういう作風だけに、、どちらかと言えば、続きもの(ストーリーが1話ごとに完結せず、続いていく作品)を多く書いているイメージがあります。それが病院もの、1話完結もの、というのが私には少し意外でした。
 ところが、見ているとやはり橋部の特徴はよく出ています。1話完結の病院もの、というと、もうある程度確立したジャンルで、見る前からわかってしまうところがありました。しかし、病理医だからこそ、患者と直接顔を合わせる臨床医ではないからこそ、純粋に病を見つめ、その原因を徹底して追究する姿が描かれます。その点で、数多くある病院ものの中で、他作品とは異なる個性を持っている作品になっていると言ってよいでしょう。


『家族ノカタチ』
(日曜21時、TBS系) 9.3
%→10.0%→10.3%→9.9%→8.6%

 若者の晩婚化、草食化、直接的に言えば、結婚しない化の傾向は顕著です。これは、古い世代の私にには理解できません。
 先日も中央大学文学部の「Bun Cafe」というところで昔話をしたのですが、私が高校生のころの宮城県は、県内ほぼすべての高校が男女別学。公立・私立を問わずにすべて(新設高1校を除いて)別学でした。そこで起こっていたことは、宮城県内高校生たちの野獣化! とにかくその頃の男子高校生たちは女子校生とつきあいたくてたまらなかった。同時に県内の女子高生たちは男子高生とつきあいたくてたまらなかった。その頃「合コン」という言葉はありませんでしたが、県内あちこちで、それに類する「合ハイ」だの、交歓会だのが頻発していたのでした。もう「恋の無法地帯」状態です。
 それとは隔世の感。今の若者は、なんで恋愛しないでいられるんでしょうかねえ。それがよくわかるのがこの作品。主人公・永里大介(香取慎吾)39歳は、こだわりのある自分の生活が大切で、結婚する気持ちはまったくない。そういう人物として描かれています。
 ただ、この手の作品は過去にも『結婚できない男』(尾崎将也脚本・阿部寛主演)などがありました。その『結婚できない男』でも、主人公・桑野信介はこだわりの強い、他者と折り合いのつけにくい人物でした。ところが、その主人公も最終回では結局は女性を部屋に招き入れ、男女の関係になることが示唆されて終わりました。さて、今回『家族ノカタチ』の主人公・長里大介
は、結末においてどうなるのでしょうか?
 


『スミカスミレ』 (金曜23時、テレビ朝日系) 7.8%→4.6%

 高橋みつばの原作マンガの映像化。生涯独身で、人生を楽しんでこなかった65歳の如月澄(松坂慶子)が、ある日20歳に若返り、如月すみれ(桐谷美玲)として人生をやり直す話です。
 近年、タイプスリップものや、体が入れ替わる話なども多く、今の時台設定のまま過去の自分になってしまうというのも、それらの一つのヴァリエーションと言えるでしょう。テレビ作品としての見どころは、20歳の外見のすみれ(桐谷美玲)が内面65歳の人物を演じるところ。外見と内面のギャップを見ていて笑えるかどうかが、重要なポイントです。
 ただ、私が見るところ、桐谷美玲は内面65歳を演じていても、つまりどんなにダサい服装をしていても、昔っぽいことを喋っていても、やはり若くて可愛らしく見えます。つまり、桐谷の若々しい魅力が、この作品ではかえってマイナスになっているように感じるところがあります。同じ時間枠では、『民王』という作品において、総理大臣役の遠藤憲一がおバカ息子と体が入れ替わってしまうという設定がありました。こちらは外見が強面の遠藤憲一が、内面がおバカな大学生という演技にかなり笑わせられました。それに比べると、65歳の内面の桐谷美玲で笑いをとるのは、やや難しいように感じました。桐谷美玲にはやはり年齢相応の役をやってほしい気がします。
(私が考える桐谷美玲の一番の当たり役は、映画『ツナグ』の日向キラリ役だったような…)


『ミセン』 (金曜10時、BS−JAPAN) 

 この欄では原則として日本のテレビドラマについて書いていますが、今回は特別に韓国のテレビドラマを取り上げます。
 日本のテレビドラマの特徴はこうだ、韓国のテレビドラマの特徴はこうだ、などと簡単に言うことはできません。しかし、私はテレビドラマ研究者として、その簡単に言えないことをあえて簡明にまとめて話をしたり、文章に書いたりしてきました。ところが、そのような意味では、多くの韓国テレビドラマの特徴にあてはまらない典型例がこの『ミセン』なのです。
 『ミセン』の主人公チャン・グレ(イム・シワン)は26歳の男性。囲碁棋士を目指して子どもの頃から修業を続けますが、結局はプロ棋士になることができず、その年齢になった初めて会社勤め(インターン)をします。社会経験の少ない、元プロ棋士の卵が会社ではじめからうまくいくはずもなく、そこで実社会の苦労をしていきます。
 と書くと、きわめて現実的な話であることがわかります。韓国テレビドラマによく出てくる、出生の秘密も、交通事故・記憶喪失・不治の病も、そして、大金持ちと貧しいものの貧富の差や身分違いの恋愛の苦悩も出てきません。しかも、そんな地味で現実的な作品が、韓国で大きな支持を視聴者から得たことが重要なのです。
 そのような韓国テレビドラマらしくない韓国テレビドラマの話題作が、日本で初放送。これは見逃すわけにはいきません。 



『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』 (月曜21時、フジテレビ系) 11.6%→9.6%→10.0%→8.9%

 またかと思われそうですが、今回もまたこの作品について書きます。3回目です。この作品については、あとからあとから書きたいことが出てきます。
 作品は5回放送され、そこで2011年3月まで話が進みました。重要な舞台の一つに福島県が選ばれていますし、当然ここで東日本大震災となると私は予想していました。ところが、第5回放送分の最後の予告を見ると、第6回では2016年現在まで話が飛ぶらしい。しかも、主人公の曽田練(高良健吾)がすっかり変わってしまうようです。脚本の坂元裕二に見事にしてやられました。私の予想は大きく外されましたか。
 ちなみに、私にも俳優さんの好き嫌いはありますが、練を演じる高良健吾は、私の好きな男優です。特に、演じる役によってまったく違う人に見えるところを評価しています。『おひさま』の丸山和成やこの『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』の練は、とにかくまじめで誠実な人物。一方で、映画『蛇とピアス』のスネークタン男・アマは、凶気を抱えた若者でした。『花燃ゆ』の高杉晋作は、内面に不真面目さ、ニヒルさと、同時に熱い気持ちを共有する複雑な人物でした。このように、どんな役も自分のものにしてしまう高良健吾を使って、一つの作品の中で人物像豹変させるとは。これは脚本家に見事にやられたという感じです。
 一方で、このところの坂元裕二脚本を見ていて、一つだけ不満に思うところがあります。それは方言の使い方です。
 坂元裕二脚本においては、地方出身者(それも東北地方出身者が)、ふだんは標準語を話しているものの、気持ちがたかぶり、熱く本音を語るときになるとつい郷里の東北訛りが丸出しになるという場面がよく出てきます。たとえば、『最高の離婚』の上原灯里(真木よう子)やこの『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』の市村小夏(森川葵)がそうです。しかし、そういうことってあるのでしょうか。少なくとも私にはリアリティがあるとは思えません。
 私は東京出身ですが、東北地方で育ったので、その頃は東北方言で話していました。友人もたくさんいます。大人になってもつきあいのある人もたくさんいますが、興奮すると東北方言に戻る人は見たことがありません。東北人が東北方言に戻るのは、興奮したときではなく、同じ東北人同士で安心して気をゆるした場合に限られます。
 これは推測にすぎませんが、脚本家の坂元裕二は大阪の出身。大阪人にはもしかすると、興奮して大阪弁に戻るということがあるのかもしれません。しかし、東北人が東北人以外の人に向かって、興奮したから突然東北方言に戻るというのは、私は一度も見たことがありませんし、リアリティを感じられません。この点だけは不満です。
 とはいえ『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』は今クールの中で私がもっとも気に入っている作品。これからの展開を注意深く見ていこうと思っています。



※このブログはできるだけ週1回(なるべく土日)の更新を心がけています。 



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