フィクションのチカラ(中央大学教授・宇佐美毅のブログ)
テレビドラマ・映画・演劇など、フィクション世界への感想や、その他日々考えたことなどを掲載しています。
 



(池田勇人内閣。『官僚たちの夏』はこの時代が舞台になっている。)

 さて、恒例のテレビドラマ批評です。通常は、テレビドラマが始まって3、4回放送されたくらいの時期に掲載するのですが、今回は7月から始まったドラマが、どれももう中盤を過ぎてしまいました。個人的な事情もありますが、どうも私が夢中になるようなドラマがなかったことも原因のひとつです。
 とは言うものの、とにかく7〜9月期のテレビドラマについて、簡単にコメントを書いてみましょう。申し訳ありませんが、今回は私好みのドラマがないので、コメントが辛口です。
 ちなみに、数字はここまでの平均視聴率です。
          
『ブザービート』 (フジ、月9)  14.2%
 「月9」と言えば、トレンディな恋愛ドラマ(『東京ラブストーリー』や『ロングバケーション』)でひとつの時代を築いたのですが、テレビドラマ全体の視聴率の低下にともない、月9も苦戦しています。そこで、この枠で『西遊記』とか『ガリレオ』のような月9らしからぬ作品も実験してきましたが、ここへ来て、王道の月9らしい作品に回帰しました。雰囲気としては、『プライド』(2004年、野島伸司脚本)の夢よもう一度、というところでしょうか。大森美香の脚本もいいし、貫地谷しほりがけっこう笑わせてくれます。ただ、北川景子のせりふはかなりたどたどしい。それと、山下智久はバスケットボールのプロ選手という設定ですが、シュートが砲丸投げみたいで、腕の使い方がまるで素人だぞ。(9月8日追記。いつも「いい子」「優等生」役の相武紗季がかなり性格の悪い子[でも気持ちわかる…]を演じているのがなかなか良い。大森美香の脚本は、こういう女性の気持ちを描かせると秀逸です。)
          
『救命病棟24時』 (フジ、火9)  19.4%
江口洋介のバイク事故のために、放送が1か月以上も遅れてしまったドラマです。今回は第4シリーズで、次々に運び込まれてくる救急患者を助けていく、という基本的な設定はこれまでと変わりません。しかし、今回はユースケ・サンタマリア扮する医局長を仇役にすることで、進藤医師の「とにかく目の前の患者の命を助ける」という価値観を相対化しています。そのため、私には進藤の独善性が目立って、主役が道化に見えてしまうように思うのですが、それも制作者の意図に入っているのでしょうか?
          
『恋して悪魔』 (フジ、火10)  6.6%
1回目は見たのですが、それきり見る気になれません。ごめんなさい。                                                                                                                                                                                                                                                                                 
          
『赤鼻のセンセイ』 (日テレ、水10)  8.3%
全然期待していなかったのですが、意外に面白いです。長期入院をしている子どもたちのための院内学級を担当することになった、新米先生・石原参太朗(大泉洋)の話です。基本的には、生徒思いの先生を中心とした学園ドラマ・青春ドラマの作りですが、大泉洋がここまですべりまくると、それがかえって面白いです。
          
『ダンディ・ダディ』 (テレ朝、木9)  6.6%
恋愛小説家・宇崎龍之介(舘ひろし)が、娘の恋愛にだけはおろおろしてしまうという話です。ダンディさが売りものの小説家(それが舘ひろしのイメージと重なる)と娘には弱いというギャップが話のミソです。昔、田村正和で成功したのと同じパターンでしょう。しかし、舘ひろしは『パパとムスメの7日間』でガッキーとその手の役を演じているので、二番煎じの感が否めません。
          
『任侠ヘルパー』 (フジ、木10)  15.6%
草なぎ剛の復帰作。たしかに「いい人」の役ばかりしていた草なぎ剛を極道にするというのはいい配役でした。また、本格的な介護体験のまだない私にとっては、テレビの中のフィクションとは言え、勉強になること、参考になることがたくさんあります。それを自分の介護に活かせるように……って、この場合は「自分の介護」というのは、する方かい?それともされる方かい?オイッ! それはともかく、極道役の俳優さんの中で、唯一女性の黒木メイサが実は一番恐くて極道に見えます。
          
『猿ロック』 (日テレ、木深夜0)  5.2%
マンガ原作もの。「エッチでおバカ」という謳い文句通り、その通りの「エッチでおバカ」なドラマです。それに徹しているので、それはそれでいいんじゃないでしょうか。
          

『オルトロスの犬』 (TBS、金10)  9.6%
これもマンガ原作。誰の怪我でも病気でも治せる手を持った男性と、手を触れただけで人を殺せる男性。この二人をめぐってさまざまな欲望や陰謀が渦巻きます。私はこの手のミステリーやオカルトめいたドラマに興味がないので、ごめんなさい。
          
『こちら亀有駅前派出所』 (TBS、土8)  10.5%
これもマンガ原作です。マンガの方は見たことがあるという程度。原作を好きな人には興味が尽きないのかもしれませんが、私は関心がありません。ドラマ単体として見た場合、ちょっと見続ける気が起きませんでした。
           
『華麗なるスパイ』 (日テレ、土9)  11.7%
実は今回一番期待していたドラマでした。長瀬智也の俳優としての力量はかなりのものだと思いますし、『タイガー&ドラゴン』や『マイボス・マイヒーロー』といった興味深い実験的な作品に出演しているのも評価しています。しかし……、この作品はコメディなのに笑えません。長瀬の責任ではなく、脚本でしょうか?前述の『マイボス・マイヒーロー』や『ムコ殿』での長瀬は面白かったのに。そう言えば、『ムコ殿2」の長瀬の相手役は今話題の酒井法子でした。酒井法子、わりに好きだったのになあ……。
          
『オトメン』 (フ
ジ、土深夜)  7.3%
これまたマンガ原作。若い人向けのようで、すみませんが、見る気になれませんでした。
          
『官僚たちの夏』 (TBS、日9)  9.9%
やっぱりおやじ族が見られるドラマというと、これなんでしょうね。視聴率が悪いのは、若い人が見ないからでしょう。『ALWAYS 三丁目の夕日』の企業版と言うか、『プロジェクトX』のドラマ版と言うか、そんな感じのドラマです。ただ、城山三郎作品は善悪が単純化されており、その点がドラマにも強く反映しています。国内産業保護派の主人公・風越(佐藤浩市)の側からばかり描かれていて、どうもその一面性が私は嫌みに感じてしまいます。ドラマだから仕方ないかもしれませんが、今から見ると「時代おくれ」の人たちのドラマに見えてしまうこととが難点です。
          
気にいった作品があると、今クールのベスト3を選んだりするのですが、今回は本当に思い入れのある作品がありません。それせいか、このところ『風の絵師』『最強ロマンス』などの韓国ドラマ・映画ばかりを楽しみに見ていました。そのうち、また韓国ドラマ・映画についても書いてみたいと思います。



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