フィクションのチカラ(中央大学教授・宇佐美毅のブログ)
テレビドラマ・映画・演劇など、フィクション世界への感想や、その他日々考えたことなどを掲載しています。
 



 映画 『セーラー服と機関銃 ―卒業―』 (角川映画40周年記念作品)をマスコミ試写会で見てきました。

 『セーラー服と機関銃』は、よく知られているように、赤川次郎の小説です。それを原作として、1981年に映画化(薬師丸ひろ子主演)、1982年にテレビドラマ化(原田知世主演)、2006年にテレビドラマ化(長澤まさみ主演)され、そして今回は橋本環奈主演で映画化されました。いずれもヒットしています。
 私はテレビドラマを含めてのフィクション研究者として、この現象を興味深く感じます。
 「この現象」とは、『セーラー服と機関銃』というよく知られた設定のフィクション作品があり、そこに、「これからおおいに期待される若手女優・タレント」が起用され、大きく飛躍する契機となるという現象のことです。

 キャスティングにはさまざまなやり方があります。たとえば、近年話題になった例に、NHK連続テレビ小説(朝ドラ)『マッサン』があります。この作品のヒロイン「エリー」を誰に演じさせるか。朝ドラは特に注目の集まる作品ですから、当然多くの外国人女優が候補になりました。その際に「キャスティング・ディレクター」という立場の人物がいて、最終的に「エリー」役に決まったシャーロット・ケイト・ランブリングのキャスティングに大きな役割を果たしました。これなどは、先に個別の役があって、その役を演じられる俳優を広く探していく例です。
 一方で、多くのテレビドラマでは先に大物俳優の起用が決まっていて、その俳優にあった企画、その俳優のイメージに基づいた脚本が書かれることがあります。また、人気のある大スターやアイドルを活かすための映画がつくられることも、昔からよくありました。これらは、演じる主役が先に決まっている例です。

 この2種類から言えば、 『セーラー服と機関銃』は明らかに前者に属するように見えます。しかし、『マッサン』などと違うのは、 『セーラー服と機関銃』は一種のリメイクがシリーズ化しているところです。この作品の主役を演じることが大物女優への登竜門になることは、NHK朝ドラと似ているところもありますが、何年かごとに同じ作品をリメイクするというところが大きく違っています。そのシリーズ化された作品に、今回橋本環奈が起用されたところが最大の注目点であり、その点がどうだったかというのが、この作品 『セーラー服と機関銃 ―卒業―』の見どころということになります。

 さて、この橋本環奈の主演についてですが、一言でいえばなかなか良かったと思いました。私は、橋本環奈については「奇跡の一枚」「天使すぎるアイドル」といった評判くらいしか知らなかったので、もっとふんわりした、カワイイばかりのアイドルと思っていましたが、目高組の組長・星泉を演じる際に必要な気の強さは意外によく出ていました。また、芯の強さともろさの二面性といった、星泉に必要な要素も、画面にはあらわれていたように感じられました。

 もちろん、本格的な演技は初めてだそうですから、演技がうまいとか何とか言える段階ではないでしょう。しかし、それはもう織り込み済みです。重要なのは、過去にこの役を演じてきた「薬師丸ひろ子」「原田知世」「長澤まさみ」といった名だたる女優に匹敵する可能性を持っているか。その一点に尽きるといっても過言ではありません。この映画を見る限り、もう1本、橋本環奈の出演する次の映画を見てみたい。それも今度はまったく異なる役を演じるところを見てみたい。そんな気になりました。少なくとも、そういう期待を持たせる初主演作品になっていました。

 ちなみに、薬師丸ひろ子も原田知世も「小柄」で「童顔」という共通点があります。その点は橋本環奈も同じ。そういう女優は「大人の女優」に成長するのが難しいという課題があります。「小柄」「童顔」という特徴のせいで、多くの子役やアイドルが消えていきました。橋本環奈が薬師丸ひろ子や原田知世のようになっていけるかどうか。この 『セーラー服と機関銃 ―卒業―』を見て、そんな今後への楽しみが増えました。

【追記】長谷川博己のヤクザ役はなかなかの見ものです。

『セーラー服と機関銃 ―卒業―』は3月5日から全国公開予定です。


※このブログはできるだけ週1回(なるべく土日)の更新を心がけています。



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