フィクションのチカラ(中央大学教授・宇佐美毅のブログ)
テレビドラマ・映画・演劇など、フィクション世界への感想や、その他日々考えたことなどを掲載しています。
 



 4~6月期のテレビドラマもそろそろ出そろいました。私の感想を書く、恒例のテレビドラマ批評の時期です。深夜枠ドラマについては既に書いたので、今回はプライムタイムのドラマの中から感想を書きましょう。一度では書ききれないので、今回は一部になることをご了解ください。

貴族探偵 (フジテレビ系、月曜9時) 11.8%

 麻耶雄嵩(まや・ゆたか)の同名小説のテレビドラマ化作品。警察や探偵が活躍する1話完結ミステリーが全盛の昨今、主人公が変人というのも既にお約束の設定です。またまた変わった主人公があらわれましたが、ただ変わっているだけではなく、主人公は「推理しない」という推理ドラマ。なんじゃそりゃ?と思って見たところ、貴族の主人公は、「下々の者」に推理を任せるんだとか。生瀬勝久や松重豊ら芸達者な脇役ががっちり周りを固めて、態勢は万全という布陣のようです。
 ただ、疑問なのは、主人公の貴族探偵のキャスティングで、この役は相葉雅紀である必要があったのでしょうか。相葉クンと言えば、嵐の中ではどちらかといえば庶民的というか、親しみやすいキャラクターで高感度の高い人です。嵐の中で、もっとも貴族に見えない人。その彼が高貴な人物を演じているのが面白いと言えば面白いものの、似合っていないことは明らか。もしかすると、探偵なのに推理しない、主役なのに出番が少ない…というこの斬新な設定ゆえに、相葉クンを起用したのか?そんな妙な興味を持ってしまいました。この主役のキャスティングが視聴者にどう評価されるのか。局がたいへんな番組宣伝をしたので、初回はある程度の高視聴率が期待できますが、継続するかどうかはその点にかかっていると思われます。


CRISIS 公安機動捜査隊特捜班 (TBS系水24時) 13.9%→11.2%

 テレビドラマ『SP』や『BORDER』の脚本も担当した小説家・金城一紀が今回も脚本を手がけ、主役に小栗旬と西島秀俊、脇に田中哲司、野間口徹、長塚京三ら、ちゃらいイケメンとは一線を画する渋い俳優陣を起用。そして、本格的なアクションシーンの連続と、勧善懲悪の枠におさまらないストーリーの展開。これは明らかに、大人が見るにふさわしい内実を備えたテレビドラマ作品になっています。
 ただし、本格的な大人向けの作品が、実に単純な娯楽作品に対して、視聴率的には負けてしまうこともしばしばあるのがテレビドラマという世界。たとえば、同じアルファベット題名作品、同じ西島秀俊の主演で『MOZU』という作品がありましたが、テレビ視聴率だけで見れば視聴者に支持されたとは言えませんでした。この『CRISIS』の場合、特に勧善懲悪ではなく、犯人が逮捕されるとは限らないところが、リアルといえばリアルですが、視聴者の爽快感にはつながりません。その点で視聴率は内容ほどにはついてこないかもしれませんが、そ
れはもう視聴率という評価基準の限界と言うほかないでしょう。


あなたのことはそれほど  (TBS系、火
曜22時) 11.1%

 それほど好きなタイプではなかったけど、いい人と穏やかな気持ちで結婚した女性・渡辺美都(波瑠)。しかし、そんなときに、中学時代に好きだった同級生に再会してしまう…という設定。
 原作はいくえみ綾(りょう)の同名マンガ作品。いくえみ綾は、微妙で繊細の女性の気持ちを描くことに定評のあるマンガ作家。若い固定的なファンがいて、私の指導学生が卒業論文に取り上げたこともあり、そのときに集中的にこの人の作品を読みました。ただ、マンガとテレビドラマはジャンルが違います。テレビドラマはお金をとらない分、マンガよりも幅広い多くの受容者を必要とします。近年はマンガ作品のテレビドラマ化が頻繁におこなわれていますが、マンガの世界を忠実に再現しようとするだけでは成功しません。
 本作では、東出昌大の役柄がネット上で話題になっています。かっこいい役の多い東出が、今回は表面的には「いい人」なのに、どこか狂気に変貌しそうな人物を演じています。「冬彦さんの再来か」(注:冬彦とは、『ずっとあなたが好きだった』に登場するマザコン夫で、佐野史郎が演じた)という書き込みもあり、東出の怪演がマンガにはないテレビドラマの見どころ、ツッコミどころになりそうです。そこに注目して、2回目以降を見ていきたいと思います。


緊急取調室2(テレビ朝日系、木21時) 17.9%

 警察内の取り調べ室内でおこなわれる、被疑者と警察官の攻防に焦点化して1話完結作品。  2014年に放送された作品の続編第2シリーズで、設定も配役もほぼ第1シリーズのままです。
 主演の天海祐希に加えて、周囲をかためるのは大杉蓮、小日向文世、でんでんといったおじさん(おじいさん?)たち。ここまで主要キャストの平均年齢が高いドラマも珍しいのですが、それだけに若い俳優たちにはない「いい味」をみんな出しています。
 ただし、取り調べ室内の被疑者と警察官の攻防に焦点化しているということは、決定的な証拠をつかんで逮捕して終わりというドラマとは違って、いかに被疑者に自白させるかがカギとなるということです。言い換えれば、決定的な証拠をつきつけていないにもかかわらず、被疑者に自白させる過程が作品の肝(キモ)ですから、よほど綿密に練られた脚本でないと、視聴者は納得しないでしょう。つまり、「それくらいじゃ、被疑者は自白しないよ」と視聴者に思われたら作品の負け。第1シリーズも視聴率的に好評でしたが、自白に至る必然性の点で、何回か物足りないことが私にはありました。せっかく第2シリーズは高視聴率で発進したのですから、その点のクオリティーを今後も継続してほしいと要望しておきたいと思います。



人は見た目が100パーセント (フジテレビ系、木曜22時) 9.5%→6.4%

 こちらの原作は大久保ヒロミの同名マンガ作品。女子力ゼロのリケ女3人が中心人物。「女子力ゼロのリケ女」というと、ヒットした『デート』(2015年、主演:杏・長谷川博己)を思わせます。
 化粧のしかたやスカーフの書き方など、女性のファッションに時間を多く割き、コント仕立ての小ネタを随所に入れるなど、「ドラマ」の定型を破っている場面の多い作品。なかなかの面白い仕掛けのドラマだと思います。とはいえ、ネット上では主役3人のキャスティングにコメントが集中しているようです。
 その3人とは桐谷美玲、水川あさみ、ブルゾンちえみ、の3人。ネット上では、ブルゾンちえみが高評価の一方で、桐谷美玲が一生懸命さえないリケ女を演じていても、綺麗すぎて感情移入できないと書く人が多いようです。私の印象では、桐谷美玲はそこそこ頑張っていくように見えますが、水川あさみの「やつし方」はかなり物足りません。また、桐谷美玲についても、頑張ってさえなくしてはいるものの、『デート』の杏に比べたらまだまだ。綺麗な女優さんが「そこまでやるか」というくらい「ださく」「さえなく」して、それでやっと視聴者は評価してくれます。桐谷美玲が、『デート』の杏のアヒル口やネズミのメイクくらい大胆に演じたら、視聴者に支持されるんですけどね。



小さな巨人 (TBS系、日曜21時) 13.9%

 警視庁と地域の警察署を舞台にして、エリートコースから外された警察官(長谷川博己)のそこからの不屈の闘いを描きます。「警察版・半沢直樹」などとも言われているようで、確かに共通点が多くあります。プロデューサー福澤克雄らスタッフの多くが同じですし、かたき役に香川照之を起用していることや、組織の中で理不尽な扱いを受けながらそこから逆襲していくストーリー展開も共通しています。TBSの看板でもある日曜劇場(日曜日21時)という放送枠も同じですし、『半沢直樹』依頼のヒットを狙うTBSの宣伝の力の入れようもかなりのものです。
 とはいえ、人気作と共通点が多いからと言って、同じようにヒットするとは限らないのがテレビドラマの難しいところ。何より、『半沢直樹』のときは、視聴者が半沢直樹のようなヒーロー像を待ち望んでいたという状況がありました。このことは別の機会にも書きました。
 ⇒ 「『半沢直樹』は『GTO』の再来か」
  東日本大震災から2年経ち、少し単純すぎてもいいから、困難な状況を乗り越える不屈の人物像に明るい未来を託してみたい、そんな気分が当時はあふれていたのだと思います。その願望が今のこの2017年の日本社会でも変わらないのかどうか。この『小さな巨人』という作品の今後から、そのことがわかってくるように思います。


あいかわらずの校務多忙につき、録画番組を見る時間がないこと、ブログを書く時間が十分にとれないことがあり、今回は書きききれなかった作品もあります。それはまた次の機会に書きたいと思います。


※このブログはできるだけ週1回(なるべく土日)の更新を心がけています。



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