フィクションのチカラ(中央大学教授・宇佐美毅のブログ)
テレビドラマ・映画・演劇など、フィクション世界への感想や、その他日々考えたことなどを掲載しています。
 



 テレビドラマへの感想を書く恒例の回の2回目です。

 と、その前に余談ですが、インフルエンザにかかりました。毎年軽い風邪くらいはひきますが、そんなにひどいことになったことはないので楽観していたところ、みごとにやられてしまいました。出校停止となり、タミフルを飲んでしばらく休養することになりました。迷惑かけた同僚の皆さま、ごめんなさい。

 テレビドラマに話を戻します。もう何年も前からですが、テレビドラマの世界では1話完結の推理もの、警察ものが大流行。今クールは特にそういう作品がそろいました。今回はそれらの作品についての感想を書きます。

『スペシャリスト』 (木曜21時、テレビ朝日) 17.1%→12.5%→14.1%→11.8%

 これまで単発ドラマとして放送されていた設定を、今度は連続ドラマにした作品。その逆の方が多いのですが、単発放送が好評だったための連続ドラマ化でしょう。実際に、単発ドラマファンの期待もあって、初回17.1%という高視聴率で発進しました。その後、視聴率の上下はあるものの、たくさんある推理もの、警察ものの中で人気を集めているようです。
 この作品の特徴は、刑事・宅間善人(草なぎ剛)が冤罪のために10年以上刑務所にいたということです。その間に多くの犯罪者に接した宅間は、犯罪者の心理が手にとるようにわかってしまうというのです。決めセリフは「わかるん
ですよ、俺。だって、10年間入ってましたから」。たしかにこれは痛快です。テンポも速く、脚本も綿密に練られています。
 とはいえ、「わかるんですよ」で全部が済むなら、それは超能力と変わりません。さすがに犯罪者と多く接しているからこそ、犯罪をおかす人の気持ちがわかるんだなあ…。そう思える話になっていることが重要です。これからも視聴者にそう思わせられるかどうか、その点が鍵になるように思います。
 

『ヒガンバナ』
(水曜22時、日本テレビ系) 11.2
%→10.6%→11.2%→10.4%

 この作品も、単発ドラマから連続ドラマ化されました。特色は、女性犯罪被害者対策を目的とした女性刑事の集まる部署を描いていること。その部署は通称「ヒガンバナ」と呼ばれます。その中にいる女性刑事・来宮渚(堀北真希)は、事件関係者と「シンクロ(同調)」するという特殊な能力を持っています。決めセリフは「シンクロしました、私」。
 こう書くと『スペシャリスト』と共通する部分も多いようです。主人公がともに毒舌なのも似ています。違うのは主役を演じるのが堀北真希であるということ。堀北真希といえば、『梅ちゃん先生』などの当たり役がありますが、どちらかといえば「お嬢さん的」「感じのいい」「内気な」人物を演じることが多く、視聴者にもそういうイメージが定着しているように感じます。
 それが今回の役はかなりの毒舌。おお、ホマキもこういう役をやるんだ! という驚きがありました。私はまだ見慣れない感じの方が強いのですが、結婚後の第1作目でもありますし、堀北真希の女優としての幅を広げる契機になることを願っています。


『臨床犯罪学者火村英生の推理』 (日曜22時半、日本テレビ系) 11.1%→9.9%→9.5%→9.7%

 有栖川有栖の原作の映像化。特徴は、主要な人物が警官や刑事ではなく、学者と作家だということ。しかも、その学者は「その犯罪は美しいか」と問う、一種の犯罪オタクでかなり危ない人間だということです。
 配役としては、斎藤工と窪田正孝がバディを組むところに特徴があります。近頃すっかりセクシー路線の「男・壇蜜」となった斎藤工が臨床犯罪学者を、『Nのために』の成瀬慎司や『デスノート』の夜神月(ライト)など、重たい役が多かった窪田正孝がちょっと間の抜けた推理小説作家を、それぞれ演じています。
 他の推理もの、警察ものに比べて目立つのはコメディ要素が強いこと。『昼顔』などでやさしいナイーブな男性を演じた斎藤工ですが、ここでの変人ぶりはなかなかのものです。芸達者な窪田との掛け合いも面白くできています。ただ、私としては、窪田の関西弁には不自然さが残り、窪田の起用なら関西弁の設定は変更してもよかったと感じました。


『怪盗山猫』 (土曜21時、日本テレビ系) 14.3%→13.6%→11.1%→10.0%

 推理もの、警察ものとは少し違いますが、事件を起こす側が主人公のこの作品も加えておきます。原作は神永学の『怪盗探偵山猫』。既に言われていることでしょうけど、一種の『ルパン三世』です。
 主人公は軽薄な(ちゃらい)男。しかし、彼は義賊であり、ただ盗むのではなく、それによって大きな悪を暴きだします。土曜日21時は小中学生と母親が一緒に見ることのできるほぼ唯一の時間枠。その意味では、視聴層に合った作品で、そこそこ面白くできていると思います。
 配役の点。亀梨和也はちゃらい男が似合っていてよいと思います。謎の女に大塚寧々、雑誌記者に成宮寛貴も適役でしょう。天才ハッカー役に広瀬すずには、見ていて疑問がありました。それなら広瀬すずである必要はない気がするので、せっかく広瀬を起用しているのに、この役はもったいないと思いました。ところが、似合っていない役を演じながら結局そのように見せてしまう広瀬すずの演技力が、今ネット上で評判になっています。アイドル的な女優から演技派の女優へ。この作品がその契機になるかもしれません。



「ナオミとカナコ」 (木曜22時、フジテレビ系) 7.9%→7.7%→8.7%→7.6%

 これも他の推理もの、警察ものとは異なりますが、今回に入れておきます。多くの推理もの、警察ものは、犯罪が終わった後にその事件の真相を明らかにします。この作品は、犯罪がおこなわれるまでの犯罪をおかす人間の気持ちを詳しく描き出します。
 夫(佐藤隆太)の激しいDVに苦しむ服部加奈子(内田有紀)はそのことを大学時代の親友・小田直美(広末涼子)に知られます。そして、どうやってもそのDVから逃れられないのなら、夫を殺そうと二人で計画します。
 繰り返しますが、この作品は犯罪がおこなわれるまでの、犯罪をおかす人間を詳しく描いています。今はやっている一話完結の推理もの、警察ものでは、謎解きに重点を置きすぎていて、犯罪をおかす人間の気持ちが、ともするとおろそかになってしまうことがあります。簡単に言えば、「そんなことくらいでそんなことしないだろ~」という疑問を感じることが多いということです。この作品でも、常識的に言えば、どうしても夫を殺さなければならないのかという疑問はありますが、ここまで詳しく犯罪をおかすまでを描かれると、たしかにこれまでの推理もの、警察ものに欠けていたものを補っている作品だ、という印象は持ちました。

作品の内容そのものではありませんが、高畑淳子演じる中国人は「私、〇〇するあるよ」といった喋り方をよくします。日本では古くから、中国人がそういう日本語の喋り方をするというイメージがありますが、これは思い込みに過ぎないということが、既にかなり以前から明らかになっています(私の教え子の中国人留学生でそういう喋り方をする人は一人もいません)。いまだに「~あるよ」文体で脚本を書くというのは、いくらなんでも時代遅れではないでしょうか。



今回も書けなかった作品についてはまた後日書きたいと思います。
それからもう一つ、前回も書いたこの作品について、追加のコメントをします。

『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』 (月曜21時、フジテレビ系) 11.6%→9.6%→10.0%→8.9%

 今は流行らないと言われる王道のラブ・ストーリーですが、私は大好きです。
 とはいえ、第4回で曽田練(高良健吾)が杉原音(有村架純)に、「杉原さんを好きだけどあきらめる」という告白をする場面には驚きました。良いか悪いかでいえば、こういう行動は良くありません。日向木穂子(高畑充希)を見捨てられないから、自分の音への「好き」という気持ちをあきらめるという告白。それは誰にでもいい顔をするという不誠実さと紙一重の行為ですし、ここで練に不誠実な印象を持った視聴者も少なくなかったと推測します。
 ただ、私はこの作品を好意的に見ているので、この場面も悪くは解釈していません。これは練の弱さなのだと理解しています。つまり、良いか悪いかでいえば、その行為は良くないこととわかっている。しかし、それでも音に対して冷たくしきれなくて、自分の本心を言ってしまう。そういうきわめて人間くさい場面だと考えています。
 練は、人から「練君の周りには寂しい人が集まってくる」と言われるような、誰にでも限りないやさしさを発揮します。しかしその「やさしさ」は本当の「強さ」に裏付けされたものではなく、「弱さ」と同居している危うい「やさしさ」なのだとこの場面で感じました。
 これから3人がどうなっていくのか。そして、坂元裕二の脚本がどのように描いていくのか。今後の放送から目が離せません。

 余談を一つ。
 有村架純と高畑充希。二人ともとてもよい女優さんなのですが、顔があまりにも同系統です。同じ作品の重要な役を演じる女優さん二人がこれほど似ているのは珍しいのでは。これが韓国ドラマだったら、実は二人は姉妹だった!なんてことになるのかもしれませんが(笑)。


※このブログはできるだけ週1回(なるべく土日)の更新を心がけています。 



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