***子供部屋のうさぎ***    

幸せは、幸せだなぁって思う心の中に小さく咲く。

■鉄の匂い023■

2017年06月21日 | Weblog
転校してきて一ケ月が過ぎていた。
これまで毎日曜日、一日座っていた河原には向かわず、『僕』はコンビニで缶ジュースを買って山を目指した。
なんとなく手ぶらだと目立つ様な気がしたので。
山には、思いのほか人が居た。
日曜日に来たのは初めてだったが、他の曜日から推察しても日曜のこの混雑は想像できなかった。
途中に見晴台のある階段側の登り口から、じりじりする夏の日差しを体の右半分に受けながら登る。
大人よりも子供が多い。
みな、手に虫かごを持っているが補虫網はもっていない。
カブトムシか。
この山はそういう山だったのか。
クヌギ・ミズナラ・カシの木のクリの木。
足元はめり込むくらいに軟らかい腐葉土。
コガネムシ科・カブトムシ亜科・真性カブトムシ族が好みそうな環境だ。
カブトムシを求めて雑木を分け入っていく子供たち。
『僕』も、虫を探す振りをしながら犯行現場に近付いていった。
見つからない様に埋めた穴は深く掘ったし、腐葉土も被せた。
犯人と繋がる証拠になり得るテープや紐は、全部ゴミ袋に纏めた。
ハサミやカッターや懐中電灯は持って帰ったし、ブルーシートも帰りの途中の工事現場に放ってきた。
隠ぺい工作は、暗闇での作業だったのにも関わらず、目印のクヌギの木を知らなければ、埋めた本人にもその場所は分からなかった。
それでも注意深く辺りを見回すと、クヌギの木の下なのに異様に銀杏の葉が多い事に気が付いた。
埋めた後に掛ける枯れ葉を、銀杏の木の下から集めてしまったのだ。
暗くて葉の種類までは分別が付かなかったが、明るくなってから見ると茶色い枯れ葉に黄色の枯れ葉は思いのほか注意を引いた。
脚で枯れ葉を蹴り散らかして周囲と馴染ませる。
と。 後ろから枯れ葉を蹴散らし駆け込んでくる足音と共に、喧(けたた)ましい叫び声が近づいてきた。
「おいっ! みんな来てみろ。 なんだこれ。 すっげーぞ」
『僕』の足元には、深く埋めたつもりがそうでもなかった為、遺棄された死体の頭の髪の毛が見えていた。
ジャンル:
小説
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