***子供部屋のうさぎ***    

幸せは、幸せだなぁって思う心の中に小さく咲く。

■鉄の匂い047■

2017年07月15日 | Weblog
楠木くんは、『僕』と『僕』以外の友達は分けて付き合っていたので、『僕』には楠木くんの死後に楠木くんのことを話す友達が居なかった。
だから自宅に線香をあげに行ったこともないし、墓参り処か霊園の場所すらも知らないのだ。
でも『僕』は悲しくなかった。
楠木くんに会えないのは悲しいが、会えないのは皆同じだし、偲んで話す仲間が居ないのは『僕』だけが特別なのだから。
骨や写真に手を合わせるよりも、深い処で繋がっているのだから。
楠木くんの話はこれで終わりだ。
ここからは、何故『僕』が殺人を犯すまでの人になったのかを紐解こう。
『僕』は幼稚園を2回に小学校を5回も転校した。
中学校も1回転校してるし高校は定時と通信も経験した。
高校中退後に編入された定時制には結局一度も通わず、通信制に移っても長続きはしなかった。
今ならフリースクールという選択肢もあるのだろうが、当時は高校を中退した落ちこぼれには夜間部しか道はなかった。
もちろん高校は卒業できなかったので最終学歴は中卒。
幼稚園を3園に小学校を6校渡り歩くなんて、サーカス団か地方巡業興業一座に産まれた子供くらいしか経験しない学歴だ。
では何故『僕』はこんなに転園転校が多かったのか。
苛められて逃げ回ったからか。
違う。 すべては親の都合だった。
というより、父のだらしなさからの流浪だった。
『僕』の父は、だらしなかった。
外面が良く、気前が良く、評判は良かった。
しかしそれは、外でのストレスを家で当たり散らす内弁慶で、金も無いのに見栄を張って奢る浪費家で、都合よくつかわれて重宝がられる便利屋でしかなかった。
『僕』も母も、父にはよく殴られた。
言われたことをなぜやらないのかと殴られ、言われたことをやっては余計なことをするなと殴られた。
その日の気分で言うことは変わり、だから母も『僕』も感情が薄くなった。
いちいち反応していたら神経がすり減ってしまう。
気を使って叱られるなら散漫でいて怒鳴られた方が楽だから。
こう書くと、『僕』と母は共通の敵を持つ同志の様だが、母は母で継母で、父がいない所では父からされた仕打ちを『僕』にして気を晴らす、同情の余地が無い女だった。
ジャンル:
小説
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