***子供部屋のうさぎ***    

幸せは、幸せだなぁって思う心の中に小さく咲く。

■鉄の匂い012■

2017年06月10日 | Weblog
右手に思い切り力を込め更に左手を上から重ねて力を込める。
女生徒の手は最初的確に『僕』の顏や腕を押しのけ掴み掛かっていたが、そのうち空振りし出して空を掻く様になり伸び切ったかと思うとパタリと落ちて動かなくなった。
死んだ。
死んだのか。
殺してしまった。
当初の予定と違う。
女の首に食い込んだ指は、力を抜いても絞めたままの形で硬直し、開く方向に力を込めてやっと外れた。
『僕』の股間に、薄いブラウス越しの体の柔らかさと温かさが伝わる。
見上げると、さっきまで葉の間から見えていた夕日は落ちて、辺りは真っ暗になっていた。
手探りで懐中電灯をゴミ袋から出し、女を照らした。
気を失っただけで、まだ生きているかも知れない。
もし死んでしまっていても蘇生できるかも知れない。
暴行して歯も折ってしまったが、殺人犯にだけはなりたくなかった。
なんとか生かす努力をしなければ。
殺す気はなかったアピールをしなければ。
仰向けにして確認すると女は生きていて、メロン大の石を掴んでいた。
懐中電灯で下から照らされた血だらけの顏は、映画に出てくるゾンビそのままだった。
しかし動きは映画のゾンビとは比べモノにならない位に素早く、掴んだ石で『僕』の顏を上へ下へと複数回に渡って殴打した。
頭の中でぐわんぐわんと大きな振動が響く。
バランスを崩して後ろの倒れた『僕』の顏を、女はスニーカーで踏み付けた。
膝で蹴りを食らわせた。
石を顔に投げ付けた。
少し間が空いて、大人の腕程もある倒木を『僕』の頭を振り下ろした。
「このクソしょんべんが。 歯ぁ取れちっただろ。 どーすんだよ。 どーしてくれんだよ。このクソしょんべん野郎が」
女は、死んだ振りをしていたのだった。
振りでなかったとしても、暫くは気絶をしていたのだった。
油断なく観察していれば、最初の襲撃地点のズレは無理としても計画自体は十分に修正が利いた筈。
騙しやがったな。
『僕』を騙して逃げたのならまだ可愛げもあるが、反撃してしかも過剰に報復までしやがった。
ここで『僕』は、遂にキレた。
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