***子供部屋のうさぎ***    

幸せは、幸せだなぁって思う心の中に小さく咲く。

■鉄の匂い049■

2017年07月17日 | Weblog
幼稚園で飼っていた金魚が全滅したことがあった。
しかしその事件を知っているのは先生と『僕』だけだった。
月曜の朝に水槽に浮いている金魚を発見した先生が、全部掬って園庭の隅に埋めてしまったからだ。
園児が登園してきて水槽が空な理由を先生に尋ねたが、先生は動じることなく具合が悪いので病院に行っていると答えた。
翌日火曜日には、死んだ金魚とよく似た金魚が水槽に入れられていた。
おかしとおもちゃとお母さんにしか興味がない年頃の幼稚園児は、その少しの違いに気付く者は少なく、気付いても治療を受けたから変わったのだという先生の嘘に簡単に騙された。
では何故『僕』だけが園児の中で事実を知っているのか。
それは『僕』が犯人だからだ。
土曜日の帰りの時間の少し前に、水槽に食器用洗剤を垂らしたからだ。
金魚はいつもと違う機敏な泳ぎに変わったがすぐには死ななかった。
できれば最後まで見届けたかったが、怪しまれてしまうのでその日は帰った。
『僕』が転園した先の幼稚園でも同様の事件が起きたが、ふたつの幼稚園は互いにその事実を知らないため、『僕』が疑われることはなかった。
小学校にあがってからも、『僕』の周りでは不可解な事故が多発した。
公園で足を紐で木に縛られ逃げられない子猫が血を流して死んでいたり、パチンコ玉で射貫かれた鳩が見つかったり、テグスが首にめり込んだ飼い犬が保護されたりした。
いくつかはテレビのニュースで取り上げられたし、警察が現場検証してるのを見たこともあった。
曲がり角ごとに大人が立つ登下校路を集団で行動する規則ができたり、暗くなってからの外出が禁止されたり、学校生活は不便になった。
これまでの生活との変化を面白がる生徒もいたが、大概は迷惑そうでシラケていた。
犯人は決して犯行現場には戻らないし、その手口も多彩に富み、捜査は進展せず、親の不安ばかりが募った。
学校で飼っているウサギが絞殺されたり、花壇が踏み荒らされたりには、女子生徒が泣いていて可哀そうだった。
『僕』の周りでは本当に事件が多発した。
しかしそれも7つの小学校に連携がないため、それぞれが一過性の事件として処理されて終わっていった。
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